「アヴェンジャー・フロム・ジ・アフターライフ」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは恥ずかしげに頬を掻いた。「強面だけど、結構優しいかも？」「人は見かけによらんということだ」後ろでひそひそと話す秋津洲と、いつの間にか移動してきた瑠奈花を、リカルドは横目で睨み、大げさに咳払いをした。 24

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「まぁともあれ」瑠奈花は苦笑し、表情を引き締める。「彼女たちが本当に我々の敵となったのか。それはこれから明らかになるでしょう。ですが」「ですが？」「嫌な予感がする」瑠奈花は海を見た。「強大な闇の訪れを感じます…」 25

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「闇、ねぇ」リカルドは懐疑的に言った。彼は人間的な善悪二元論を信じていない。ハンターとは人間秩序から離れた存在であり、人間社会が棄てた自然秩序の戦士である。だが、そんな彼にすら感じられるほどの邪気が、背筋を襲った。「何だ」「リカルド提督？」リカルドは窓辺に駆け寄る。 26

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窓の向こう、目的地リランカ島が見える。リカルドがこの島に訪れたのは、これで2度。だが、リランカ島の風貌は嘗てのそれとは大きく違っていた。港湾部に見える山………否、あれは。「砲…？」リカルドは唖然と呟く。突如、“山”から雲霞の如き黒い群れが出現した。 27

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『り、リランカ島から艦載機出現！』通信機から宿毛湾の吹雪の悲鳴が聞こえる。「馬鹿な！」瑠奈花が通信に答える。「さっきまで何の反応も無かった筈だ！」『リランカ島に巨大な反応！』『何やアレ！いつからあそこに！』『落ち着いて！艦載機の迎撃急いで！』空を覆うほどの艦載機が迫る！ 28

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『対空迎撃！』艦娘達の怒声と砲音が通信機越しに響く。黒い雲霞の一部が燃え落ちるが、残った艦載機達は海上の艦娘達ではなく、フライトリバティー目掛けて殺到する！「退避！」リカルドが秋津洲に叫ぶ！「かもぉー！」秋津洲が舵を回し、同時に船尾から碇を降ろす！「秋津洲流戦闘航空術！」 29

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海底に落ちた碇を軸に、フライトリバティーが軋みを上げてドリフト軌道を描く！これぞ秋津洲流戦闘航空術！軌跡を描いた1秒後、艦載機の群れが通り過ぎ、自壊していく。「何？」海上からその光景を見上げ、吹雪が呟く。一瞬にして空を覆った黒い群れは、出現と同じく一瞬にして消えた。 30

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「何だったんだ…」艦娘達は輪形陣を維持し、リランカ島に注視する。港湾部に蹲る白い山が、ゆっくりと盛り上がる。否、折り畳んだ上半身を起こしたのだ。現れるたるは禍々しい装甲に覆われた手。白いセーターめいた衣装。白く長い髪と額の中心から聳え立つ黒い一角。ハンニャめいた表情。 31

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「あれは…」「港湾水鬼！？」動き出した巨躯を見上げ、艦娘達は驚愕した。巨躯は、先の大規模作戦において霧島と死闘を演じた陸上型深海棲艦と酷似していた。だが、その時の個体はせいぜい2メートル前後の大きさであったはずだ。そもそも、あれ程の巨躯を誇る人型深海棲艦は、一切の例無し！ 32

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「フフフフ…」ふと、艦娘達の背後から笑い声が聞こえてきた。背後？6人全員が訝しむよりも先に、各々の艤装を構え、振り向く。輪形陣の中心。そこに立つ深海棲艦がいた。白髪と黄金の瞳。瘤を両端に備えた長杖。空母ヲ級であった。ヲ級は悠々とアイサツした。「ドーモ。ソーサラーです」 33

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「ドーモ。我々は西方方面派遣艦隊です」瑠奈花は通信機越しにアイサツを返し、そして疑念を込めて呟いた。「ソーサラー…？」脳裏に過るのは、嘗て2度対峙し、そして首を切り落としたはずの空母ヲ級だ。確か戦艦棲姫が、彼の者をそう呼んだのを覚えていた。だが彼の者は己の手で葬った筈だ！ 34

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ソーサラーはフライトリバティーを、艦橋に居る瑠奈花を見据え、言った。「私を覚えているな？」『何』「ジゴクから戻ってきてやったぞ」クスクスと笑い、ソーサラーは長杖を構えた。「お前に復讐するために！」「「イヤーッ！」」ソーサラーが口上を言い終わるや否や、春雨と若葉が飛び掛かる！ 35

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敵はこちらに悟られること無く背後を取った得体の知れぬモノ。果断迅速こそが最良手！二人は己の出せる最速で以てソーサラーに肉薄する。長杖が霞む。「「ンアーッ！？」」瞬間、腹部を打ち据えられ二人が弾き飛ばされる！同時に、ソーサラーは今まさに砲撃をせんとした山城に向け、手を翳した。 36

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「ファイア！」KABOOOM！「ンアーッ！」セツナ、今まさに砲弾を吐き出さんとした主砲の一門が業火に包まれ爆発！下級魔法だ！山城は反射的に引火した艤装をパージさせ、誘爆により無慈悲に肉片と化す難は免れた。「良く避ける」ソーサラーは山城を称賛し、再び手を翳そうとした。 37

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「イヤーッ！」だが、大井がライトセイバーを起動しインタラプト！ソーサラーは長杖で灼熱の光刃を受け止める。KKKRAKA！実体を持たぬライトセイバーの刃と鋼鉄の長杖が火花を上げて鍔迫り合う。「斬れない？」大井は訝しんだ。只の鉄ならば容易く溶断できるはずだ。それなのに何故！ 38

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「ライトセイバーか」ソーサラーは黙想的に大井に語りかける。「珍しい。元はウィッチレイドとか言う何某が水中で確実に敵を断てる剣を作る過程で生み出したものだ。柄しか重みが無いせいで己を斬る未熟者が多く、直ぐに廃れたがな」ソーサラーは長杖に手を当て、光刃を支柱に杖を回転させる！ 39

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「イヤーッ！」大井は一旦光刃を消し、しゃがみ回避！頭上を杖の瘤が空しく薙ぎ払う。そして再び光刃を展開し、斬りかかる！「イヤーッ！」「イヤーッ！」再び長杖が光刃を阻む！鍔迫りは一瞬。両者跳び下がり距離を取った。「因みにこの杖はフリク合金製でな。それでは断てぬ物だ」 40

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ソーサラーは体を軽く捩り、長杖を片手で頭上で水平に構える。対する大井は左手の人差し指と中指を立てて前に突き出し、ライトセイバーを大きく後ろに引いた、まるで弓を引き絞るかのような構えであった。「ソレスか」ソーサラーは嗤う。「私はジュヨーだ」一瞬の静寂、そして「「イヤーッ！」」 41

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交錯は一瞬。大井の側面を取ったソーサラーの長杖の一閃を、大井は跳躍で飛び越え、横薙ぎにライトセイバーを振るった。光刃は寸分違わず首を、捉える！「イヤーッ！」「グワーッ！」ソーサラーの首が飛ぶ！だが同時に、素早い長杖の攻撃が大井を打ち据える！SMAAASH！「ンアーッ！？」 42

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大井は尻餅をつくように倒れた。首の無いソーサラーの体は、頭部の喪失を意に介さぬように油断なく構える。何たる不気味極まりない光景か！コワイ！そして大井の懐に、ソーサラーの頭が落ちてきた。黄金の瞳が狂気を帯びて大井を睨む。「甘い甘い」頭部が語り掛ける。「それでは、死ねんなぁ」 43

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「ひっ」大井は短く悲鳴を上げた。黄金の瞳の奥深くから、言い知れぬ恐怖を感じ取ったからだ。深淵を覗き込む恐怖を。大井は金縛りにあったかのように身動きが取れない！「ハハハ！ハハハハ！アハーハハハ！」ソーサラーは喚くように笑う！コワイ！「ハハハハ！イヤーッ！」「イヤーッ！」 44

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それまで静観していた龍驤が、咄嗟に大井の襟を掴み背後に投げ飛ばす。同時に、浮かび上がったソーサラーの頭部が歯を鳴らす。もし龍驤の判断が間に合わなければ、大井は喉笛を噛み切られ死んでいただろう。「酷いことを」ソーサラーは帽子をかぶるように頭部を首に付け直す。「殺せたのに」 45

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「阿呆。誰がそんなこと許すと思ってんねん」龍驤は巻物型飛行甲板を展開し、ソーサラーを睨んだ。その近くに吹雪がテアーズ・カジを構え立つ。「前衛、頼むで」龍驤が吹雪に前を譲る。「了解です！」吹雪は果敢にソーサラーに躍り掛かる！「イヤーッ！」「イヤーッ！」跳び蹴りと杖が交錯！ 46

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「瑠奈花の女か！」ソーサラーは歓喜する。「貴様を縊り殺せば、奴に如何程の傷を与えられるか楽しみだ！」「貴方はここで倒します！」「出来ないことは言うものではない！イヤーッ！」「イヤーッ！」二度目の蹴りを、長杖は難なく受け止める。吹雪は距離を取った。そしてソーサラーへ手を翳す。 47

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ソーサラーは意図を察し、吹雪へ手を翳す。「ブリザガ！」「ファイア！」KABOOOM！魔導の冷気と灼熱が衝突し、水蒸気を作り出す！「温い温い！」ソーサラーが吼える。「格が違う！私は真実を見た！お前達では到達できないほどの真実！」水蒸気の中で影が蠢く。「そこだ！ファイラ！」 48