【ある冒険者の引退】

サザンクロス @Mizuho_K

【ある冒険者の引退23】あらゆる刀剣を使いこなす剣術の達人でもあった冒険者。そんな彼の人生は銃器の台頭により一変する。もはや剣は時代遅れだと悟り、引退して小さな店を開く。刀剣の売買と鑑定で生計を立てつつ、この銃が支配する世界を変革する冒険者が現れないか淡い期待を抱いている。

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【ある冒険者の引退24】様々な火器の専門家である彼女は銃の力を絶対的なものだと信じて冒険を続けていた。だが魔法の発見により銃の優位性は脅かされる。銃はおろか自身の存在意義さえも失いかねないと考えた彼女は冒険者を引退し、様々な火器の開発に心血を注ぐ。銃こそがすべての頂点と信じて。

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【ある冒険者の引退25】魔法こそ至高、技術を持たぬものは人に非ず。差別的思想を持つ彼は魔法を使えない他者を見下しながら旅を続けていた。だが彼は気付く。魔術師が排他的であり続ければ、いずれ魔法は失われる。急遽魔術師たちの意識改革と後継の育成に奔走し、やがて彼は魔術国家を築き上げる。

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【ある冒険者の引退26】そりゃそれなりの覚悟はしてたさ。だけどあんなゲテモノ毎日食い続けてたら冒険への情熱も冷めちまうってもんだ。たまらず逃げた俺を誰が責められる？ おっと、喋ってたら小腹が空いてきたな。手作りの菓子があるんだ。アオマダラドクグモの砂糖揚げ、お前も食うか？

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【ある冒険者の引退27】冒険者とは名ばかりの奴隷だった彼は、主の死を契機に自由を手にした。危険に晒されることのない平穏な生活に憧れ冒険者を引退するも、それ以外の生き方を知らなかったために再び冒険の日々に身を投じる。かつてとは異なり、今、彼は自身の意志で世界を歩んでいる。

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【ある冒険者の引退28】「親の反対を押し切ってまで冒険者になったのに、飽きたの一言で諦めたらそりゃあ勘当されたっておかしくないさ」「くそう、お前まで笑いやがって」「はは、いいだろ。これで頼るものは何もない、念願の冒険者生活が始まるんだ」「覚えてろよ、大物になって見返してやらあ」

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【ある冒険者の引退29】日記が趣味だったんだが、これって他人のことを書くのもいいかなって思ったんだ。帰りを待つ人がいない奴も、誰かが自分のことを語り継いでくれる……なんて思ってくれればな。だから俺は冒険者を引退してコレを始めたんだ。おっと失礼、客だ。「やあ、冒険を記録するかい？」

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【ある冒険者の引退30】勝ち過ぎたがために街を追われたギャンブラー。「今度は自分自身の命をチップにする」と冒険者になったものの、その才能は冒険に発揮できず重傷を負い引退。今は素性を隠して静かに暮らしているが、彼の正体を知っている一握りの人間が才能を利用しようと目論んでいる。

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【ある冒険者の引退31】過酷な冒険に耐えうるべく自身を機械化した男だったが、今では人間の体に戻る術を探している。機械の頭脳が過去の記憶――痛みや苦しみさえも―を鮮明に呼び覚まし、男の精神は耐え切れなかったのだ。

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【ある冒険者の引退32】猫好きが高じ世界中の猫に会うために旅立つも、生まれつき猫に避けられる体質だったために目的は果たせず、志半ばで引退。自作のぬいぐるみで妥協していると、その完成度が人々の目に留まり注文が殺到。猫に近づこうとするべく観察眼が養われ、デザインに活かされていたのだ。

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【ある冒険者の引退33】「冒険なんて危ないことはやめなさい！」冒険者を見つけるたびに喚き散らす彼にうんざりして引退した者は少ないながらも存在する。しかし冒険者を引退に追い込むために彼自身が冒険しているという事実を理解していないのは、彼一人だけだった。

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【ある冒険者の引退34】己の意志とは無関係に他者の心の声が聞こえてしまいうんざりした彼は、声が聞こえない安住の地を求め旅立つも、何処へ行こうと声は聞こえてくる。読心が続くうちに、今や彼は非生物の声すらも聞こえていた。追い詰められた彼は、やがて声が聞こえなくなる方法を思いつく。

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【ある冒険者の引退35】しつこい求婚者から逃げ続け流されるままに冒険者となった彼女だったが、実家からの使者に発見され連れ戻される。しかし外の世界で感じた自由と身につけたサバイバル知識は彼女を籠の中の鳥として飼われ続けることを許さず、度々脱走しては連れ戻される日々を繰り返している。

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【ある冒険者の引退36】志半ばで力尽きた冒険者の慰霊のために旅立った男は、あまりにも無謀な冒険で命を落とす者の多さにいつしか呆れ果て引退を決意する。慰霊の旅で得た技術を磨き上げ、今では故郷の村で除霊師として活躍している。「呪われたアイテムを装備してしまったら私のもとに来るといい」

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【ある冒険者の引退37】文字の読み書きができず言葉もわからない彼が生きるには冒険者となるしかなかったが、選んだ道は険しかった。命からがら生き延びた経験をせめて絵に残そうと描いたところ、それが人々の目に留まり一躍有名になる。彼自身は気付いていないが、人は彼の絵を創作だと思っている。

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【ある冒険者の引退38】「海底遺跡の探検を専門とする冒険家がいた。素潜りの技術に長け彼の右に出るものはいなかった。難易度の高さゆえ同業者も少なく海底冒険者の名をほしいままにしていたが、彼は引退せざるを得なくなった」「そりゃどうして」「海が干上がって海底を冒険できなくなったからさ」

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【ある冒険者の引退39】怪物の生贄として白羽の矢が立った幼馴染を連れ、彼は村を飛び出した。旅を続ける中で身につけた技術により、見事怪物を退治することに成功した彼は意気揚々と村へ帰る。英雄として讃えられることを期待する彼が村の守り神を退治してしまったことを知るのはもう少し先の話。

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【ある冒険者の引退40】冒険の合間に料理を提供することを生業とする男。彼の料理を食べた者が食中毒で死んだ――ある日そんな噂が急激に広まり彼は引退を余儀なくされた。世間を逆恨みした男は調理技術――特に解体技術――を遺憾なく発揮する。なお噂の出所が彼の商売敵であることは誰も知らない。

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【ある冒険者の引退41】竜がいないんじゃ竜使いなんて言えないでしょう？ 「死んじゃったの？」ううん、いなくなったんだよ。「どこに行っちゃったの？」わからないなあ。今も探してるんだ。「そっか……見つかるといいね、竜使いのお兄さん」はは、もう僕は竜使いじゃない。とっくに引退したんだ。

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【ある冒険者の引退42】「だから俺はただの冒険者だって！」「いいや魔王を倒した貴方こそ勇者です！」なし崩しに勇者へ仕立て上げられて、まあちやほやされるのもいいかって思ってたら勇者はかくあるべきだなんだとうるさいのなんの。もうやめだやめだ！ 冒険者も勇者もダメなら魔王になってやる！

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【ある冒険者の引退43】とんでもないモンを拾っちまったな……。『……』お前みたいな奴が野良……なわけないよな。『……』連れは？ はぐれたのか？ 『……』ああわかった、そんな目で見るな。人生最後の依頼だ。見つけてやるよ、お前さんの連れを。『……（赤竜は嬉しそうに目を細めた）』

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【ある冒険者の引退44】俺がこの世界を引退するのは俺が死ぬ時だ！ と豪語していた男に起きた突然の心境の変化。冒険者を引退して妻とのんびり暮らす姿を見たかつての仲間たちは彼の心変わりの原因を好き勝手に想像していたが、ある者は言う。彼は心変わりなどしていない、と。

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【ある冒険者の引退45】経営難により解体された冒険者ギルド。そこへ所属していた冒険者は、一人として例外なく冒険者ではなくなってしまった。「冒険者って、そういうものなの？ 自分でなろうと思ってなるものじゃ、ないの？」「本当はそうなんだけどね。あの人たちは、違ったんだよ」