サトセレリレー小説 第2弾【完結】

今回は千草さん(@t3uw)にリーダーをやっていただくことになりました♪ ありがとうございますー(*^^*) それと、新しく趣味男さん(@shumi_man)さんが加わって下さったので、6人で回したいと思います! 順番は、 続きを読む
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千草 @t3uw

「サトシ」 目の前で行われている戦闘から、切り離されたように固まったままのサトシに、セレナは動かない腕で必死にもがく。 「セレナ…」 彼が茫然自失になっているなんて初めて見た。 けれども今はそんな場合じゃないのだ。 自分のせいで彼が我を失うなんてそんなことあってはいけない。

2015-11-19 14:29:37
千草 @t3uw

「今は抜け出すのが先だわ、サトシ!」 「セレナ、」 強い意志を込めて、サトシの瞳を覗き込む。 セレナの瞳を見つめたサトシの逡巡は一瞬だった。 「ピカチュウ!アイアンテール!」 サトシの声を聞き終わる前から駆け出したピカチュウが口元を上げ、アームの繋ぎ目に正確に鉄の尻尾を叩き込む。

2015-11-19 14:30:39
千草 @t3uw

がきりと鈍い音と共に、アームは折れ、操縦を失って緩んだところにサトシは力いっぱい肘をぶつけて拘束を逃れる。同じタイミングで両手でセレナを抱き寄せ、空中で横抱きにするとそのまま軽く着地したサトシは、ぎりっとロケット団をにらみつけ声を張り上げた。 「10万ボルト!」

2015-11-19 14:31:12
千草 @t3uw

まるで御伽話のような二人の脱出劇を思わずぽかんと眺めてしまった三人は、最大級の10万ボルトに、あわれ空の彼方に飛ばされることになった。いつものようにドップラー効果を付属して響いた「やーな感じーーー!!」に、ムサシの苛立ちがいつも以上にこもっていたのは仕方なかったのかもしれない。

2015-11-19 14:32:27
千草 @t3uw

「二人とも大丈夫ですかっ」 「シトロン、セレナが!」 お空の星となったそれを見送ってから、シトロンは慌てて二人に近づく。サトシはまだセレナを抱き締めたまま固い表情をしていて、何かあったのかとユリーカが不安そうにシトロンの手を握った。 「あのね、…足、本当にちょっとだけなのよ?」

2015-11-19 14:33:11
千草 @t3uw

珍しく大人しく抱えられたままのセレナは、困ったように眉を下げた。 見ればスカートとニーハイの隙間、露出した素足の部分に3センチほどの裂傷があった。血は滲んでいるが流れ出るほどでもなく、捕まれた時に掠ったのだろう。サトシの青いジャケットの裾にも、セレナの赤い血がついてしまっている。

2015-11-19 14:33:51
千草 @t3uw

「痛いか?」 サトシの痛ましそうな顔に、セレナは首を振った。 本当はこの体勢は恥ずかしくて下ろしてほしい。でも、サトシの中の不安が手に取るようにわかってしまって、セレナはただそのまま大丈夫よ、と笑ってみせる。 「骨が折れてるわけで捻挫してるわけでもないし、擦り傷よ?」 「でも」

2015-11-19 14:34:18
千草 @t3uw

「大丈夫、踊れる」 気にしているだろうことを予測して口にし笑って見せれば、その言葉にサトシはほっとしたようにゆっくりとセレナを下ろした。彼女がふらつくことなく自分の足で立っているのを見て、十分に納得安心できたのか、やっと強張っていた表情を緩めた。

2015-11-19 14:35:56
千草 @t3uw

「上着…あとで洗濯させてね?」 「え、いいよそんなの」 「サトシが庇ってくれたから、この程度で済んだのよ。あの時とっさに前に出てくれたでしょ?だから、そのお礼に」 そのくらいしか出来ないもの、それだけはさせてね?

2015-11-19 14:36:55
千草 @t3uw

いつもと同じウインク付きのチャーミングな笑みを載せるセレナに、サトシは眉を下げたままぎこちなく笑い、「サンキュ」 と照れくさそうに頬をかいた。 そんな二人にミアレ兄妹は顔を見合わせ、シトロンは 「とりあえずセレナの治療ですね」 と、重たいリュックをその場に下ろしたのだった。

2015-11-19 14:37:08
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

「え、シトロン、いいわよ。これくらい、ツバつけておけば治るわ。」 治療、という単語に仰々しさを感じたセレナが慌てて両手を振って断る。 でも念のため…と、リュックから救急セットを取り出しながら食い下がるシトロンを、サトシが制した。 「セレナ、ちょっとスカート押さえててくれないか?」

2015-11-20 00:15:07
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

そう言いながら、サトシはセレナの目の前に跪く。 え?と戸惑いの声を返したセレナは、サトシの位置に気づいてほぼ反射的に両手でスカートを押さえた。 それを確認したサトシは、そっとセレナの足に手を添える。

2015-11-20 00:17:21
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

その手つきは、まるで壊れ物を扱うかのような、優しくしたい大事にしたいという意識が明確に表れたものだった。 ちゅっ 小さく鳴ったリップ音。 サトシがセレナの太ももの傷口に触れた音。 彼のその唇で。 その様子を真上から見ていたセレナは、今日一番に顔を真っ赤にしたまま硬直してしまった。

2015-11-20 00:18:32
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

待って、とか、ダメ、とか、制止の声をかけたいのに、うまく動かない口をぱくぱくさせるだけで言葉が出ない。 「……」 サトシは口内に、わずかに血特有の鉄っぽい味を感じ、思わず眉を顰めた。 すでに血はほとんど止まっていたし、セレナは踊れる、と言ってくれた。

2015-11-20 00:19:29
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

しかし、傷は割と大きめであり、この服ではしばらくの間結構目立ってしまうだろう。 どうか早く治りますように、痕が残りませんように、と願いながら、唇を離す。 名残惜しそうに最後にもう一度だけペロリと傷口を舐めると、セレナが全身をびくりを震えさせたのが分かった。

2015-11-20 00:20:34
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

ひりついた痛みと、それとは別の、ぞくぞくする謎の感覚。 セレナは反応してしまったことでもっと恥ずかしくなって、顔をあげようとしたサトシの帽子を上から押さえつけてしまった。 「うわっ!な、なんだよセレナ。」 「い、いま上見ないで!!!」

2015-11-20 00:21:45
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

やっと出た声には、あまりにも必死さが滲み出ていた。その声をきいて、サトシは疑問符を浮かべながらも、黙って言われたとおりに俯いている。

2015-11-20 00:22:16
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

「お兄ちゃん、なんで手でかくすの…。」 「え、いや、はは…。なんででしょう…。」 「…。まあ、指のあいだから全部見えてたけどね。」 「ええええええ!?見ちゃいけませんっ!!!」 シトロンが慌てて指を閉じても時すでに遅し。

2015-11-20 00:23:13
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

ユリーカがにやにや笑いを浮かべているのを見て、シトロンはまた妹の将来が不安になった。 「なあ、シトロン。いるんだろ?消毒液と絆創膏くれよ。」 サトシが帽子を目深に被ったまま、顔だけこちらに向けてシトロンを呼ぶ。

2015-11-20 00:25:46
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

もう大丈夫か、と判断したシトロンはユリーカを解放してサトシの傍まで歩み寄った。 「はい、これです。…というか、結局消毒するんですね。」 「え、当たり前じゃん。」 ちょいっと帽子を少し上げて、再びセレナの傷口と向かい合いながら手当てを始めたサトシに、ユリーカも傍に寄って問いかける。

2015-11-20 00:27:33
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

「じゃあどうしてキズをなめたの?」 「そりゃあ、セレナがツバつければ治るって言ったから……。…ん、これでよし!」 だからって普通直接舐めないでしょ、という兄妹のツッコミは心の中に仕舞われたまま、サトシが勢いよく立ち上がった。

2015-11-20 00:28:52
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

その時ふわっとセレナの服が揺れて、何かに気づいたかのようにサトシが動きを止める。 「あ、あの…サトシ、ありがとう…。」 消え入りそうなセレナの感謝の言葉も耳に入っていないかのように、サトシは一点をぼんやりと見つめたままぼそりと言った。

2015-11-20 00:30:28
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

「さっき抱きかかえた時も思ったけど…。セレナって服からもいい匂いがするな。」 にこっとセレナに笑みを向けたサトシは、すでに赤かったセレナの頬がさらに真っ赤になるのを見て、可笑しそうにくすりと笑い声を漏らした。

2015-11-20 00:31:24
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

いつまでもたじろいでばかりはいられない、と少し勇気を出してセレナが大きめの声で言う。 「サトシのジャケット、これと同じ洗剤と柔軟剤使って洗うから!」 両手で握りこぶしまでつくってそう宣言すれば、サトシは一瞬驚いたように目を見開きながらも、再び表情を崩して、本当に嬉しそうに笑った。

2015-11-20 00:32:34
千 晶@ギョエー🦈 @cK_lightweight

「おう!楽しみにしてるな!」 二人の会話を横目に眺めつつポケモンたちの回復を済ませたシトロンは、それじゃあ行きますか、と再び重いリュックを背負い直す。 セレナが心配そうに寄ってきたテールナーを宥めて礼を言ってからボールに戻すと、ピカチュウがタイミングよくサトシに肩に飛び乗った。

2015-11-20 00:34:11
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