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「すべからく」誤用論について。

「~べし」を付けない使い方は誤用、および、「すべて」の意を含むと誤用、ていう誤解が広まりすぎるとよろしくないと思ってまとめました。
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@takanoryu

そこで口語に関する検討はいったん諦めて「須く」という文字自体について読んでみる。原語が違うのでこちらは「すべて」の意味を包含する可能性もある。

2015-11-27 09:39:53
@takanoryu

いま広漢和からそのまま書き写すと、 【須】1.ひげ。ア:あごひげ。=鬚・髯。〔説文〕須ハ、頤下の毛也。頁彡ニ从フ。凡ソ須之屬、皆須ニ从フ。 となってこれが一番古い。彡とページの上のところが人体で、貝の部分がアゴヒゲだと解字の方にある。

2015-11-27 10:00:58
あの @anomomo

@takanoryu 直感的にスサノオを連想しました。

2015-11-27 10:03:24
@takanoryu

.@anomomo ああ、須サノオの八束のアゴヒゲね…!なるほど。スサそのものは「すさむ」だと思いますけど字は当て込んだかも知れないですね。

2015-11-27 10:16:22
@takanoryu

解字。で、これは右向きの横顔だが、これが正面になると「需」となり、需の本意は「雨がやむのを待つ」だそうです。そこから須にも何かしら必要を満たす意味が付帯したと、広漢和(の編者)は解説する。出典は示されない。 pic.twitter.com/lUdFxhQDg8

2015-11-27 10:11:16
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白川静 @sizukashirakawa

神話は自然的な世界、神々の世界、それから人間の世界の全体を、一つの体系として語るのでなくては、神話とはいえないのです。

2015-11-27 10:12:03
@takanoryu

そして広漢和の用例2.は易経になってしまう。意味は「待つ」。「須つ」で「まつ」と読ませる。易経は森羅をたった64卦に分類解説してしまう著なのでイマイチ信頼してないのだがw用例は「帰妹ハ以テ須ツ」(=がっついて嫁に行くな、待ってこそ吉)で、わきまえて待つ、くらいの意味。

2015-11-27 10:27:49
@takanoryu

以後用例3.ねがう(広韻)、4.もちいる(正字通)と来て、5.でようやく「すべからく…べし」が出てくる。文選に「適々事務有ラバ、須ク自ラ経営ス須シ」とあるのが、再読文字として使われた初出らしい。6.以降は「ゆるくする」「とどまる」「やすむ」などと意味が拡散しすぎてワケ分からん。

2015-11-27 10:35:07
@takanoryu

つまり2.-5.の語義がひとまとまりになってると考えていいのだろうが、第1に広漢和の解説が信頼に足るのか、第2に易経は信頼に足るのか(笑)という問題があるな。「あごひげ」から「待つ」への語義変化はずいぶんと飛躍があるんじゃないかぁ?

2015-11-27 10:39:42
@takanoryu

あ、間違えた。易経の方が先に成立してるんじゃん。易経の十翼が周代末、説文が後漢ですよね、失礼(漢和辞典なもんだからとりあえず説文を先に置くんだこれ)。ということはすでに「まつ」の意味で使われた文字の語源を追いかけるという作業をしてるわけか許慎先生は。大変だな…。

2015-11-27 10:51:52
@takanoryu

「需」から「須」への意味の伝播については「三輔決録」という著の注(虞注)に「須ハ、需(マ)ツ也」とあるそうだが、これは西晋なので説文より後になる。

2015-11-27 11:02:35
@takanoryu

日本人が漢字の原義に生来の直感を持てないのはもうこれ仕方ないと思うんだけど、ことこの件に関しては周漢もかなり誤読誤用を繰り返してるんじゃないかというのが正直なところだな。

2015-11-27 11:05:18
@takanoryu

「ねがう」に関しては「須ハ、意ノ欲スル所也」(広韻)、「居静ノ言其レ何ヲカ須ハン」(晋書)。「もちいる」に関しては「須ハ、資(ヨ)ル也。用ヰル也」(正字通)、「復タ大将ヲ煩ハスヲ用ヰズ」(漢書)とあり、「すべからく」と同じく、原義からは遠い。(広漢和)

2015-11-27 11:13:43
@takanoryu

ここまでで一旦まとめますが、許慎を信じるという漢和辞典の公理を尊重する前提で言うならば、「須」という漢字には元来「あごひげ」という意味しかなく、「すべて」どころか「すべし」の意味もなかった、という衝撃の結果が出ましたよww

2015-11-27 11:22:29
古狂生 @kokyose

まあ助字なんて仮借字ばっかでしょ よう知らんが そして 須鬚、然燃、原源、蔵臓 かういふのを古今字といふ twitter.com/takanoryu/stat…

2015-11-27 12:12:39
ニジムら【弱肺者】 @mushi_pann

@takanoryu 須長さんってアゴヒゲなげぇのか、と納得しました。ありがとうございます!

2015-11-27 11:24:50
@takanoryu

説文解字の成立が2世紀初め、文選で「すべからく」が採られるのが6世紀半ば。そのかん400年、易経まで遡ると800年という時間が経っており、元来の語義が保存されたとは言いがたい状況であるように見えますね。とりあえず字典で追えるのはこのくらいまで。

2015-11-27 11:28:58
@takanoryu

なんでアゴヒゲからこんな広範な意味が派生するのか…。需の聖化に伴ってという論拠がいまいちなんだよなあ。それがアリなら「あごひげ一気に掴んで引っ張ったから『すべて』の意味もある」とか論じてもいいことにならないか…?

2015-11-27 11:32:36
@takanoryu

まあ冗談は措きまして、今度は日本にどう導入されたかをちょっとだけ。「三宝絵」と謂いまして、平安期に日本霊異記などを下敷きに平易に書き改めた仏教説話集で、子ども向け(即位前の内親王向け)のため漢文でなく和文化してある著ですが、当該ヶ所が発見できずまだ読み途中です。オモロイけど大変。

2015-11-27 11:38:22
@takanoryu

こんな感じ。まぁ貴族向けの修身の教科書みたいなもんですね。 pic.twitter.com/dLLxjHXNSj

2015-11-27 11:41:06
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@takanoryu

広辞苑第4版の用例によりますと「抑説き給ふ経の文についてすこぶる疑ひあり。須くあながちおぼつかなさをあきらめむ」となっておりまして今のところこれが和書の初出(984)。そして初出でいきなり「~べし」が欠落してる。おいおい。すこぶる疑わしくてあながちおぼつかないのはキミや(笑)。

2015-11-27 11:51:59
@takanoryu

あ、嘘やん。ちょいまち。

2015-11-27 12:00:29
@takanoryu

失礼。律宗の戒律を和訳した「四分一律行事鈔」ていう本の注釈本(850)が最初のようです。運んできたの鑑真だからこれより古いのはあるまい。曰く「若し犯過の比丘尼、須治す応き者あらば」とあります。ここでは「~応き」が生きてる。

2015-11-27 12:06:07
@takanoryu

和訳って言うと変か。訓み点を付ける、という言い方が正しいみたい。

2015-11-27 12:08:04
@takanoryu

そして三宝絵より下りますと随代の「法華義疏」という著の訳釈本(1002)に「故に須くは両の義双べて弁すべし」と見えます。以上2例、国語大辞典(小学館)による。で、この3例が読み下し文で、そのあとは方丈記とかの軟文学(14世紀以降)になるようですね。

2015-11-27 12:13:15
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