彼とドライブ(きみ君)

うさぎ🐰ときどき妄想してました @eitars_h

1 「ん？」 誰？ 会社を定時に出るとちょっと離れた所に黒いプリウス。 よく見ると片手をポケットに突っ込み、もう片方で車のキーを回している人が。 あのシルエットはもしかして… 「きみ君⁉︎」 慌てて駆け寄ると、 『よ！』 呑気に声をかける。 #彼とドライブ[きみ君]

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2 よっ！…じゃないわよ！ 「何考えてるのー⁉︎」 『え？あかんかった？』 「あ…あかんかったじゃないでしょ‼︎ちょ、いいからとりあえず乗って！」 きみ君を車に押し込める。 車が動きだすとちょっと落ち着いてきて、改めて彼に向き直る。 #彼とドライブ[きみ君]

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3 「あのさぁきみ君、あなた自分が誰かって自覚してる？」 『はあ？何言うてるん？』 小馬鹿にしたように笑うけど、 「あんなとこに立ってたら目立つじゃない。わかっててやってたの？だとしたらあなた馬鹿なの⁉︎」 『…なんやねん、さっきから』 #彼とドライブ[きみ君]

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4 『迎えに来て言うたんはそっちやろ』 それはっ、 「…お兄ちゃんに頼んだはずなんだけど」 『おん。やから、あいつに頼まれて迎えにきてん』 あーいーつー！！きみ君に何てこと押し付けるのよー！! 携帯を取り出してスワイプする。 #彼とドライブ[きみ君]

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5 それをきみ君が笑って取り上げる。 『まあええやん。たまたま俺もお前に用あったし』 「携帯返して。用ってなに？私この後約束があるんだけど」 ふっ…て笑って携帯を戻される。 『どこ向かえばええの？』 渋々行き先を伝える。 『…デート？』 #彼とドライブ[きみ君]

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6 「………」 『なんやねん』 「結婚式の衣装合わせよ」 あ、マズイ。説明はしょりすぎた？ 従姉妹の結婚式で介添人をすることになってその衣装合わせと打ち合わせ… って、お兄ちゃん言ってないのかな？ 『何時？』 「え？」 #彼とドライブ[きみ君]

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7 『せやから何時までに送り届ければええん？』 なんでちょっとイライラしてるの？ 「…18時半だけど」 今17時を少し回ったところだからあと1時間ちょっとある。 電車をつかっても行けないことはないけど、郊外の教会だからお兄ちゃんに頼んだのに。 #彼とドライブ[きみ君]

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8 ………… 「ねえ？なんか怒ってる？」 『なんで？』 「なんかそう感じたから」 こっち、見もしないし。 そっと携帯に打ち込む。 "お兄ちゃんのばか！" よりによってなんできみ君よこすの？私が彼を好きなの知ってるからって余計なことを！ #彼とドライブ[きみ君]

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9 窓に目を向けると、そこにきみ君の横顔が映る。 それを見つめていると、 『…そいつの事愛してるん？』 ん…？ 信号で止まったきみ君の左頬…ちょっと赤く見えるのは赤信号のせい？ 「あ…愛してるんじゃないかな？」 だから結婚するんだと思うし。 #彼とドライブ[きみ君]

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10 『じゃないかなって…え？そんなんで結婚するん？』 「え？そうだよ。どういうこと？笑」 『そんな軽い気持ちやったらあかんやん』 えー、そんなの私に言われても…。そもそも結婚するんだから軽い気持ちじゃないと思うし… ってなんかおかしくない？ #彼とドライブ[きみ君]

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11 信号が変わり車が動きだす。長い指がハンドルを操る仕草に見とれてて、 キキーっと甲高いブレーキ音に気付いた時、きみ君の左手が私がフロントガラスに頭を打たないように咄嗟に差し出された。 「なに？どうしたの？」 #彼とドライブ[きみ君]

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12 『ん、歩行者がよく見もせんと車道に飛び出してきよってん。ケガないか？』 見れば外には既にその歩行者はなく、どうやら事故にならずにすんだようで。 「よかったあ…。私は大丈夫。きみ君が守ってくれたから。それよりきみ君は？」 #彼とドライブ[きみ君]

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13 「きみ君？」 え？どこか怪我したの？ 「ね、きみ君？」 答えずに車を発進させて、ボソッと、 『大丈夫や。……なあ？』 「うん？」 『ほんまに結婚するん？』 またその話？ 「なんで、きみ君が気にするの？」 #彼とドライブ[きみ君]

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14 『せんでや』 「え、なに？」 『…せやから結婚、せんで？』 「誰が？」 誰と…？ いつのまにか車は式場の駐車場へ滑り込み停まった。 『嫌やねん。お前が他の奴と結婚するん…』 え…ええー！！！！！！？ #彼とドライブ[きみ君]

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15 『お前が好きやねん』 は…、え？何？ ちょ…まっ… 『俺じゃあかんのか？』 う… わっ///！！！ 突然抱きしめられて、 『なんかゆうてや…』 不安気な声で首筋に鼻を埋める。 あの… 「きみ君？…ごめんっ」 声が震える。 #彼とドライブ[きみ君]

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16 「結婚するの、従姉妹なんだけど…」 『えっ⁉︎』 ガバッと体を引き離すと顔を真っ赤に染めたきみ君。 「そう聞いてない？」 『聞いてへん…って、え？ほんまに？』 「はい」 頷くと、 『はあぁぁ、よかったあ』 ふ… で、さっきのは？ #彼とドライブ[きみ君]

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17 「きみ君私が好きなの？」 『っ！///』 腕で顔を隠すと小さく頷く。 「いつから？」 『…ずっと』 小さい声。 「え？ずっとって？」 『やから！お前の兄貴にお前紹介された時から！』 そうなの？ #彼とドライブ[きみ君]

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18 ふわふわした感覚から突然現実に戻されて、勝手に涙腺が緩んで涙を流す。 『っなんで泣くん！嫌やった？』 「ちが…」 『あーもう、泣かんでや…』 指先で涙を拭ってそのまま頬を挟まれる。 『可愛い顔が台無しやで///』 #彼とドライブ[きみ君]

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19 言いながら照れるきみ君がおかしくて、 「ばかぁ…」 『おまっ、バカって、「好き！」』 『は⁉︎』 「私もきみ君が好き！」 『っ///』 思い切り照れてる彼にキスをした。 『っ‼︎』 「えへへ//」 『えへへやあらへん///』 #彼とドライブ[きみ君]

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20 「きみ君私が結婚するって思って焦ったの？笑」 『違うし///』 「さっきのきみ君の顔 笑」 『っ///うるさいっ』 「ふっ！…むぅう…ん、」 唇を塞がれて言葉は封じ込められる… 「はっ…きみくっ…」 想像以上に柔らかい唇… 顔とドライブ[きみ君]

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21 そこから差し込まれたたっぷり唾液を含んだ舌にクラクラする。 「っきみ君…」 『ん…はぁ…あかんな』 おデコをつけて息を整えて、もう一度軽くキス… 『何時に終わるん？」 「…20時くらいまでには？」 『待っててもええ？時間つぶしてる』 #彼とドライブ[きみ君]

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22 「……うん」 ちょっとだけ、後ろ髪引かれるおもいで打ち合わせに向かう。 振り返るときみ君が軽く手を挙げた。 ──きみ君…帰りはどこまで送ってくれるつもりなのかな？ /// END #彼とドライブ[きみ君]