「塩酸塩」と「塩化物」ってどう違うの?(あるいは「そもそも『塩(えん)』って何?」)

実はだいぶ前からギモンだったんですが、質問し忘れてたネタ。ほら、水酸化ナトリウムと塩酸で「塩化ナトリウム」、「ナトリウム塩酸塩」とは言わない。けど、医薬品の仲間にはナンチャラ塩酸塩が徒党を組んで。これ、どういうこと?というお話。
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薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

この物質は、セチルピリジニウムという物質にCl-がくっついたものですが、このセチルピリジニウムという物質は、H+を拾ってこなくとも、もともとNに+がついてるんです ですから、この物質は塩酸塩とは呼ばず、セチルピリジニウム塩化物と呼ぶわけなんですね

2015-12-11 00:07:13

じゃあこれは? (喘息の治療薬、エフェドリン)

エ レ キ た ん @空間絶縁 @ElekiTan

@gensogaku @chemica_tan @Yakugakutan とりあえず、エフェドリン塩酸塩。この「・HCl」だってのはわかるんだけど、これと「塩」っていう言葉との間にギャップというか、ちょっとモヤモヤ感が… pic.twitter.com/fXhEwwufEE

2015-12-10 23:56:24
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元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

@ElekiTan @chemica_tan @Yakugakutan 分子の形をより正確に描くなら、エフェドリン中のNHの部分、これがNH_2 ^+になっていて、エフェドリン分子全体は陽イオンになっている。エフェドリン陽イオンに塩素イオンが電気的に結合していて、塩になってる。

2015-12-11 00:00:10
元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

@ElekiTan @chemica_tan @Yakugakutan これならどうかな。Na+とCl-の電気的な結合による結晶を「塩」と言っているのとそう違わないと思うけれど。

2015-12-11 00:01:28

NaClを例示して「塩」は我ながらややこしいことをしました。もちろん「しお」ではなく「えん」ですからね!(加筆:元素学たん)

元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

エフェドリンとHCl よりも 「エフェドリンとH+」とCl- と考えるといいかもね。

2015-12-11 00:07:12
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

元素学たんの言葉を借りれば、 「薬物と塩酸のH+」のセットに塩酸のCl-がくっついてるものは塩酸塩 「もともと+がついてる薬物」にCl-がくっついてるものが塩化物 ですね 「薬物と塩酸のH+」のセットを、「もともと+がついてる薬物」と見なせば、塩酸塩を塩化物の一種であるともいえる

2015-12-11 00:10:49
エ レ キ た ん @空間絶縁 @ElekiTan

塩酸と反応させて、水素を追い出して後釜に直ると「塩化物」、水素を引きずり込んで電荷のプラマイ帳尻を合わせると「塩酸塩」(つか、コアビタシオンな?)。ざっくり整理ついてきたみたい。

2015-12-11 00:15:54
元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

...... これ、例えばエフェドリン塩酸塩だったら、エフェドリン陽イオンと塩素イオンで結晶を作るわけで、これ何結晶っていうの?ナフタレンとかと同じで分子性結晶でいいの?

2015-12-11 00:03:33

じゃあ、そもそも「塩」って何さ?

ここから少し薬学たんが中学理科までしかやってない人向けに、塩(えん)って何だろう?
という話をします

薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

まず塩(えん)の定義、そして酸、塩基の定義を見直す必要がありそうです 中学生の理科までであれば、アレーニウスの定義で身についてるかもです

2015-12-10 23:22:46
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

ところで、中学校の頃なんかはもしかしたら 塩(えん)というのは酸とアルカリを中和させた時にできる水でない物質 という風に教えられ、これで覚えてる方は多いかもしれませんね?

2015-12-11 00:37:52
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

そして、中学理科までの方の中には 酸は「H+のイオンを出すもの」のこと アルカリは「OH-のイオンを出すもの」のこと だと教えられた方も多いと思います

2015-12-11 00:39:28
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

実は酸やアルカリの定義には、別の種類もあるんです その定義では 酸は「H+を放出するもの」のこと アルカリは「H+を受け取るもの」のこと とされます 高校化学ではやると思いますが、そうでない方には馴染みがないかもしれません?

2015-12-11 00:45:46
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

ちなみに、アルカリ性っていうのは"水溶液の"性質について指します "物質そのもの"が「H+を受け取る」性質を持つ場合は、塩基性(えんきせい)であると言います そしてそのような物質のことを、塩基と呼びます

2015-12-11 00:51:24
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

例えば、アンモニア(NH3)って塩基性(水溶液ならアルカリ性ともいえる)じゃないですか でも、アンモニアって見た感じOH-出せなさそうですよね? 塩基は「OH-をだすもの」と考えるとなんか変じゃないですか?

2015-12-11 00:55:10
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

しかし、アンモニア(NH3)はH+を受け取ってアンモニウムイオン(NH4+)になることができます 塩基は「H+を受け取るもの」と考えれば、アンモニアが塩基であるというのにも納得できますよね!

2015-12-11 00:56:58
元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

次の疑問は「なぜ電気的中性である薬分子と電気的陽性であるH+がくっつくのか(それも電気的陰性であるCl-を振ってまで)」というのだと思うけど、これを理解するには孤立電子対という存在を理解しないといけないから説明は難しいね。

2015-12-10 23:26:00
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

なんで、NはそんなにH+を貰いたがるの? という質問に答えるためには、やや細かい話をする必要があるので今回は省きますが、なんとなく言えば 「Nは電子をいっぱい持ってて、H+は電子を持ってないので、H+が電子を借りに来る」と言った感じです ニュアンスが分かればオーケーです!

2015-12-11 01:08:37
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

さて、こうなってくると塩(えん)の方も少し考えなくてはいけません 塩(えん)というのは「酸とアルカリを中和させた時にできる水でない物質」 この定義、やや怪しいですよね

2015-12-11 01:11:09
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

例えば先ほどのアンモニア(NH3)と塩酸(HCl)の反応を見てみます アンモニアが塩酸からH+をもらって…… NH4+ そこに塩酸のCl-がくっつきます NH4Cl ……水出てきませんね……

2015-12-11 01:17:05
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

というわけで、塩にも別の定義があるのです 塩は、「塩基由来の陽イオンと、酸由来の陰イオンが結合した化合物」である という定義があります 先ほどの「酸とアルカリを中和させた時にできる水でない方の化合物」という定義は、狭義といった感じですね

2015-12-11 01:20:55
薬たんでした@卒業済 @Yakugakutan

今回の例でいくと 塩基(アンモニア)由来の陽イオン(+のついた物質のこと、今回はNH4+) と、 酸(塩酸)由来の陰イオン(-のついた物質のこと、今回はCl-) が結合しているので…… NH4Clは、新しい定義では塩と呼べますね!

2015-12-11 01:22:44