山本理顕著『権力の空間/空間の権力――個人と国家の<あいだ>を設計せよ』(読書メモ)

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未発育都市 @mihatsuikutoshi

続き)人間は、他のすべての動物種と同じく、死のない無窮の中に放り込まれるだろう」と著書『人間の条件』の中で述べている。アレントの「世界」のイメージは古代ギリシアのポリスであるが、筆者はそれは産業革命以前の中世都市にも見出だすことができると述べて、いくつか実例を挙げて検証している。

2015-11-21 00:33:15
未発育都市 @mihatsuikutoshi

いずれにせよ、19世紀後半以降の近代社会化によって「世界」は失われた、とのことです。昨日ツイートしたミュルーズの労働者都市には「世界」はないし、20世紀の建築家たちも「機能的であれ」などの「社会の要請に従う建築」をつくることで「世界」を解体した(餌食にした)とのことです。終わり。

2015-11-21 00:34:42
未発育都市 @mihatsuikutoshi

まぁ、まだ読んでいる途中なので感想を述べることは控えたほうがいいのだろうけど、僕は山本理顕さんは「リベラル」の建築家だと思っていたのに、この本の第3章まで読んだ限りではどうみても「保守」ですね。「リベラリズム」を擁護している僕としてはどんな顔をしていいのか分からないぜ。(^_^;

2015-11-21 00:37:44
未発育都市 @mihatsuikutoshi

日本のリベラルの保守化は、最近になって全般的に見られる傾向ではあるが。

2015-11-21 00:38:57
未発育都市 @mihatsuikutoshi

ともあれ、次の第4章は「標準化=官僚制的管理空間」です。20世紀の建築家たちの近代建築運動を批判しているみたいです。第3章に書いてあったけど、アレントは近代社会そのものを疑っている。また、第3章で筆者は既にミース・ファン・デル・ローエの「ユニバーサル・スペース」を批判しています。

2015-11-21 00:41:43
未発育都市 @mihatsuikutoshi

続き)少し引用すると、それは「どのような要請にも自在に答えられる自由な建築である。原広司はそうしたミース的建築空間を均質空間と呼んだ。「物の世界性」が失われた建築空間である。今の私たちの社会の建築である」とのことです。ほな、寝ますね。(バタッ

2015-11-21 00:43:56

【第4章】 標準化=官僚制的管理空間

未発育都市 @mihatsuikutoshi

山本理顕著『権力の空間/空間の権力――個人と国家の<あいだ>を設計せよ』 amazon.co.jp/dp/4062586002 の第4章「標準化=官僚制的管理空間」の前半を読んだ。ところで、ハンナ・アレントはかつてナチスのホロコーストの中心人物であったアイヒマンを悪魔のような人物(続く

2015-11-21 22:42:46
未発育都市 @mihatsuikutoshi

続き)ではなく凡庸な官僚に過ぎなかったと評して物議を醸したが、これは遠い過去の異国の特殊な話ではなく、今日の近代社会の官僚制(行政)と本質的には同じである。筆者は東京都市整備局の都営住宅の設計者が具体的にどのように選ばれているのかを例に挙げて、今日の官僚制のあり方を批判している。

2015-11-21 22:45:09
未発育都市 @mihatsuikutoshi

また、都営住宅は『標準設計図集』によって標準化がされていて、その平面計画は昨日もツイートしたミュルーズの労働者都市(1855年)などの労働者住宅と同じ特徴を持っていると筆者は述べている。この本のタイトルにある「権力の空間」や「国家」とはこの官僚制的支配による管理空間のことである。

2015-11-21 22:50:46
未発育都市 @mihatsuikutoshi

官僚制(官僚制的管理空間)の大きな特徴は「非主観性(特定の人格を持たないこと)」「合理性」「均一性」「画一性」である。実際、19世紀後半以降の労働者都市はそのようにつくられているのだが、その様は古代ギリシアの都市国家(ポリス)や18世紀までの中世都市と比べると、極めて異様である。

2015-11-21 22:57:26
未発育都市 @mihatsuikutoshi

アレントは近代社会を疑っている。アレントは官僚制的行政を「純粋な行政」「無人支配」と呼んでいる。更にアレントは「しかし、この無人支配は、その人格的要素を失っているからといって、支配を止めたのではない。統治の最も社会的な形式は官僚制である。…それはある環境のもとでは、(続く

2015-11-21 23:07:19
未発育都市 @mihatsuikutoshi

続き)最も無慈悲で、最も暴君的な支配の一つとなる場合さえある」と述べている。アイヒマンのことを念頭に置いているのかも知れないが、アレントの批判の矛先は20世紀の建築家たちの近代建築運動にも向かう。近代建築運動の目標が(前々ツイートの)官僚制の特徴と同じなのはもちろん偶然ではない。

2015-11-21 23:09:19
未発育都市 @mihatsuikutoshi

というわけで、今日は終わり。この先は未読。ぼちぼち読む。(ぼちぼち

2015-11-21 23:11:12
未発育都市 @mihatsuikutoshi

@NagaiYuki55 まさにそれですね。そんな映画を昔、観た記憶がある。(^^)

2015-11-21 23:12:30
未発育都市 @mihatsuikutoshi

@makoto_bass ですよね。昔の建築家は建築の “外面の現われ”をいかに美しくするかを考えていたのだけど、近代建築運動によってそれがなくなってしまったのです…。

2015-11-21 23:20:55
未発育都市 @mihatsuikutoshi

山本理顕著『権力の空間/空間の権力――個人と国家の<あいだ>を設計せよ』 amazon.co.jp/dp/4062586002 の第4章の後半を読んだ。20世紀初頭の近代建築運動について。1907年に「ドイツ工作連盟」が設立された。ここにワルター・グロピウス、ペーター・ベーレンス(続く

2015-11-23 00:35:29
未発育都市 @mihatsuikutoshi

続き)ブルーノ・タウトなどの近代建築運動の担い手たちもいた。美学の中心は「規格化」と「ザッハリヒカイト」(即物主義)。個人的で前衛的な個別の芸術活動を追い出して、大量生産によって達成される製品の価値を求めた。アレントはこれを「手段=目的カテゴリーの完全な転倒」である、と批判した。

2015-11-23 00:36:36
未発育都市 @mihatsuikutoshi

1919年に「バウハウス」が設立された。近代建築運動の大きな拠点の一つで、前述の「ドイツ工作連盟」の美学をそのまま受け継いだ。建築家やデザイナーの主体性をできる限り消し去って、社会の要請に忠実に従うことが「バウハウス」の美術理論であった。アレントは「バウハウス」も批判した。(続く

2015-11-23 00:39:56
未発育都市 @mihatsuikutoshi

続き)アレントは「バウハウス」の建築家やデザイナーたちのこうした態度が社会への迎合に繋がっていった、と著書『全体主義の起原』で指摘している。更に同著でアレントは、実際にこうした芸術的エリートのうちの全体主義運動の信奉者たちは「われわれを暗然とさせるほどに多かった」とも述べている。

2015-11-23 00:41:03
未発育都市 @mihatsuikutoshi

(バウハウスはナチスによって閉鎖されたが、それはナチスが近代建築を理解できなかったからである。バウハウスは一度もナチスを批判していないし、ましてや闘ってもいない。バウハウスはむしろ全体主義を支持していた。だが、ナチスが求めたのは近代建築ではなく誇大妄想的な新古典主義建築だった。)

2015-11-23 00:45:26
未発育都市 @mihatsuikutoshi

あと、筆者は第4章の【図4】(P.175)に近代建築運動の重要な建築家のルートヴィヒ・ヒルベルザイマーが1924年に提案した「高層都市計画」のパースを載せている。一応、これな → twitter.com/mihatsuikutosh…

2015-11-23 00:54:11
未発育都市 @mihatsuikutoshi

ルートヴィヒ・ヒルベルザイマーの高層都市計画(1924年)。 pic.twitter.com/hREXdvxa4K

2014-02-25 23:02:12
未発育都市 @mihatsuikutoshi

続き)この図に描かれている風景は、古代ギリシアの都市国家(ポリス)や18世紀までの中世都市とは全く異なっている。また、19世紀後半に建設された「ミュルーズの労働者都市」は極めて小規模であったのだが、その均質な管理空間をそのまま大都市の規模に拡大した場合のケーススタディにも見える。

2015-11-23 00:55:50
未発育都市 @mihatsuikutoshi

続き)そして、その「ミュルーズの労働者都市」の均質な管理空間をそのまま更に国家の規模にまで拡大したのが「全体主義国家」(官僚制的行政による国家)なのであると筆者は述べている。終わり。

2015-11-23 00:57:20
未発育都市 @mihatsuikutoshi

というわけで、次の第5章は「「選挙専制主義」に対する「地域ごとの権力」」です。この本の最後の章です。ぼちぼち読む。(ぼちぼち

2015-11-23 01:02:58