「ブレイク・ザ・ケージ・オブ・ゴッドスピード」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

瞬く間に、連装砲達はヘルメット、ハンマー、背部スラスターへ、そして魚雷発射管は巨大な籠手として左腕に装着された！「ふぇ！？え！ちょ、ちょっと何これ！？」島風は慌てふためいたが、やがて気付いた。ヘルメットに備え付けられたバイザーには「海軍技術研究本部」の文字とロゴマーク。 11

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そしてもう一つ。「島風型専用艤装合体式重金属追加装甲システム」と電子文字で記されている。「合体…重金属？」島風は電子文字を読み上げる。「これって」『ハロー、島風ちゃん。聞こえてる？』通信が入る。島風はこの声を知っていた。「えっ、貴方…メロンちゃん？」『懐かしいわ、その渾名』 12

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

通信越しに彼女は笑った。『今の私は海技研の兵装実験軽巡・夕張よ。それ以上でもそれ以下でもないわ』「…そっか、艦娘になったんだ」『ええ、そうね…貴方だけに、無茶はさせたくなかったから』「…そっか」島風は目を閉じ、懐かしんだ。メロンちゃん。海技研に居た頃の最初の友達。 13

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

彼女は島風に色々なものを与えてくれた。戦う為の艤装を。速く走るための足を。走り続けるための二つ目の心臓を。『今回の新システムは、貴方を守る力になるわ』「島風を？」『ええ、そうよ。貴方がどれだけ速く走っても、今度こそ貴方を守る力になる』「メロンちゃん…」『私には後悔があるわ』 14

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『あの時、あの最大船速実験…あんな結果になると知っていたら、私は絶対にあんなことさせなかった』「……」島風は夕張の言葉を聞く。『私は確かに貴方の命を救えたのかもしれない。けど、それで私は戦争が終わった後の貴方の人生を奪ってしまった』 15

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

夕張は一呼吸置き、言った。『ごめんなさい。私は…貴方から多くの物を奪ってしまった』「そんなこと、無いよ」島風は目を見開き、優しく笑った。「確かに、私の体は、もう人間のそれじゃないのかもしれない。けど、それでも。私の魂は、人間のまま」島風は胸の前で拳を握った。 16

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『島風ちゃん』「メロンちゃん、私ね。友達が一杯できたんだ」島風は天津風を見た。天津風は心地よく寝息を立てて、眠っていた。「私の体は、友達を守るための力になってくれた…だから、だからね」島風は構えた。走るために。この時間を作ってくれた吹雪を、助けに行くために。「ありがとう」 17

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『！』「助けてくれてありがとう。力をくれてありがとう…私は、島風は自分の体の事であなたを恨んだりしてないから！」『…島風ちゃん！』「後でいっぱい、お話しようね！」背部すらスターが火を吹く。島風は駆け出した！「島風型1番艦・島風！いっきまーす！」 18

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

――――― 19

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」吹雪とスピードデーモンは高速機動し、カラテラリーの応酬を繰り広げる！「イヤーッ！」「イヤーッ！」大振りの攻撃をタオキン加速で強引に速めるスピードデーモンに対し、吹雪は必要最小限のミニマルな動きで捌く！ 20

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

速度ではスピードデーモン、技巧では吹雪が上回るこのイクサだが、徐々に吹雪が追い詰められていく。無理もない！カラテ行使速度差は如何ともし難いからだ！「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」徐々に捌き切れぬカラテが吹雪に直撃する！ 21

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ハハハハハハハハ！得体ノ知レヌマシーンニ頼ッタトコロデ鈍亀ハ鈍亀ダ！イヤーッ！」スピードデーモンは『焔矢』へカラテを振るわんとする！アブナイ！機関部を破壊されれば吹雪諸共『焔矢』が爆発してしまう！「イヤーッ！」吹雪は咄嗟にハンドルを持って跳び、蹴りを叩きこんだ！ 22

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「グワーッ！」蹴りはスピードデーモンの腹部に直撃し、二者の距離は離れる。吹雪は直ぐ様運転席に戻り、ブレーキを踏んで反転した。スピードデーモンも一端足を止める。「オノレ…ダガ貴様ノ敗北ハ必定ダ」「まぁ、そうでしょうね」吹雪は肩を竦めた。「今のままでは、確かにそうです」「何？」 23

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「速さでは私は貴方に勝てないでしょう…そんなことは最初から分かり切っていた事でした」「……」スピードデーモンは吹雪に対しカラテ警戒。「なら、何故私が出て来たか？そんなこと、簡単ですよ」スピードデーモンは吹雪へ跳びかかろうとし「只の時間稼ぎです」「イヤーッ！」「ナ！？」 24

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「グワーッ！」スピードデーモンは気が付けば吹き飛ばされていた。空中でウケミを取り、着水したスピードデーモンは見た。全身に重金属の追加装甲を纏い、ハンマーを振るった島風の姿を！「貴様！」「さぁ、第二ラウンドだよ！」島風はハンマーをスピードデーモンへと突き出した。 25

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「私には誰も追いつけないよ！」「ホザクカ小娘ェ！」島風とスピードデーモンは再び加速勝負に挑む！((奴ラメ！何ヲ企ンデイルカ知ランガ！))スピードデーモンは紫色の粒子を体に纏わせる。タオキン・ジツだ！((私ハ神ニ選ラバレシ神速ノ戦士！貴様如キニ私ハ捉エラレヌ！)) 27

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

タオキン加速で、スピードデーモンの速さは一気に600ノットまで加速する。音速一歩手前の速度だ。スピードデーモンは必殺のチョップ突きを繰り出す。((最早檻ニ捕ラエルナド慈悲ハ与エヌ！醜ク屍ヲ晒セ！))スピードデーモンはこの一撃が必中であると確信していた。その時、島風は笑った。 28

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((何？))その笑顔の意味を知るよりも速く、島風の姿は消えた。((エッ))チョップ突きが空を切る。スピードデーモンのニューロンが加速し、主観時間が鈍化する。そして見た。鈍化した時間の中で、己の横に回り込んだ島風の姿を。そして島風のバイザーに映る「661ノット」の文字を！ 29

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((馬鹿ナ！))661ノット。時速換算すれば1224キロ。即ち、マッハ1！島風は音と同じ速さで動いているのだ！ハンマーが振るわれ、スピードデーモンの右脇腹を抉った。主観時間が元に戻る。「グワーッ！」スピードデーモンが音の速さで空中へ吹き飛ばされた！ 30

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((馬鹿ナ！馬鹿ナ！コンナ！))スピードデーモンは空中で悶えた。((トモアレ体勢ヲ！))スピードデーモンは空中でウケミを取った。そして感じた。背後に気配を！「イヤーッ！」「グワーッ！」防御を取る時間すら与えられず、スピードデーモンの胸から腕が跳び出した。 31

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その腕は緑の炎光を纏っていた。「ガ、貴様！」「もう一度言おう」チョップ突きを突き立てた吹雪は死神めいた声で言った。スピードデーモンは気付いた。島風は吹雪へ向けて、自分を吹き飛ばしたことに！「ハイクを詠め！」「貴様！」「イヤーッ！」吹雪は腕を引き抜き、敵を蹴り落とす！ 32

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((何ヲ))スピードデーモンは吹雪の行動の意図を読めなかった。スピードデーモンは下を見た。島風と目が合った。島風の左腕に装着された魚雷発射管籠手が握り拳を形造った。((何カガ、拙イ！))スピードデーモンは咄嗟に防御姿勢を取った。島風は構わず拳を振るった！「イヤーッ！」 33

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

KABOOOM！「グワーッ！」巨大な鉄塊拳が直撃したと同時に爆風がスピードデーモンを砕いた！これぞ島風が備えた魚雷の爆発を打撃転用した新機構・トーピードグローブである！「アバーッ！」「スピードの果てには貴方一人で逝って」島風は決然と言った。「私はここでまだやることがある！」 34

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

スピードデーモンはバラバラに粉砕され、海中へと堕ちて行った。最後に、頭部が落ちると同時に「サヨナラ！」爆発四散した！ナムアミダブツ！ 35

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ブレイク・ザ・ケージ・オブ・ゴッドスピード」＃３ おわり　エピローグへ続く