釜蓋山墜落機1

しゃーくさめさめ（Op.Fubo） @same_desu2

というわけで出していただいた搭乗員戦死者名簿の昭和20年8月分をコツコツ当たり始めた。 変な話なんだけど、米軍史料の基本タイプライターで書かれたものを見慣れてるせいか、日本語かつ手書き、というのがなんだか新鮮だったw #釜蓋山墜落機

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正直、あまり好きじゃないな。こういう名簿を丁寧に見ていくのは、何回やっても楽しくはない。単なる数字と名前では、やっぱり重みが違う…などとおセンチになりながら最後まで見たものの… ない、だと…？ #釜蓋山墜落機

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最上で、8月に、同時に8名、というわかっている条件に該当する戦死者はいなかった。 そもそも亡くなった8名全員が搭乗員とは限らないんだよね。ついでに乗ってた同乗者とか、それこそ本当に剣作戦に関連するなら大半は挺身隊員かもしれないわけで。#釜蓋山墜落機

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そうなるとあくまで搭乗員の名簿であるこれに載っていないのも不思議じゃない。 あーちくしょう。この手もダメかあと思いながらコツコツ二週目に入った時…ふと気になる記載を見つけたんだ。#釜蓋山墜落機

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所属欄には「K708」。日付欄は「八 三」。備考欄には「山形県東村山郡（読めない）町？附近ニテ戦死」そして氏名欄は「A（一応いまは伏せる）」#釜蓋山墜落機

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変な話なんだけど、最初はなんでこの記載が気になるのか、自分でもよくわからなかったんだ。もう直感としかいいようがない感じ。そこへ「どうです？進展はありました？」と研究官さんがわざわざ来てくれた。#釜蓋山墜落機

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(´･ω･`)「残念ながらピタリと該当するものはなかったですね」 (´･ω･`)「そうですか…」 (´･ω･`)「…ただ、このA氏の部分が気になって」 「なぜです？」 えっと…ってとりあえず喋ってみたら自分でもびっくりするくらいスラスラと直感が言葉になってたw #釜蓋山墜落機

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まず場所が山形県内で、日付が8月3日という点。次に所属の欄。K708という略号は正直詳しくないからよくわからないんだけど、航空隊で7百番台ってことは陸攻隊のことだなと推測は出来る。それなのに一人。この点が妙だった。一番少ない銀河でも三人乗りな陸攻で？ …なぜ？ #釜蓋山墜落機

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もちろん敵機に銃撃されての機上戦死かもしれないし、空中ではなく、空襲による地上での戦死等もありえない話ではない。#釜蓋山墜落機

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ただ、他の人の備考欄を見ると地上での戦死の場合は場所も含めてはっきりとそう書かれているし、そもそも山形はB-29による空襲を受けてはいないので、都市空襲に巻き込まれた等の線は消える。#釜蓋山墜落機

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また艦載機による東北に対する空襲は7月14〜15日と、8月9〜10日にかけてのもの以外はない。空襲ではなく、かといって該当するような空戦が東北で生起した様子もない。もちろんさらに調べれば小規模かつ散発的な何かが出て来る可能性もあるけど。#釜蓋山墜落機

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さらに名簿をよく見ると、通常同じ理由での戦死ならまとめて書かれているのに、このA氏の行からなぜか少し離れたところに、同じ「K708」から二人が、8月3日に戦死していることがわかった。 #釜蓋山墜落機

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もう一人、C氏の備考欄を見ると、訂正線が引かれてはいるものの、山形県東村山郡までは書かれていることがはっきりわかる。もっとも、それ以上詳しくは書いてない。ただ部隊、日付、氏名は消されていないことから、この行自体が間違い、というわけではないようだ。#釜蓋山墜落機

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同じ日、同じ部隊の三名が戦死している。正確な住所は違うしB氏は奥羽方面なので違うかも知れないものの、少なくとも東北という点は符合する。 この三名は見れば見る程疑問が湧いてくる。 一度書きかけて、なぜ消したんだろう？ 日本国内なのに、なぜ奥羽方面とやけに曖昧なんだう？#釜蓋山墜落機

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勘の域を出ないけど、何かが違う。それまでの記載と、何かパターンが違っている。この三名の死は、例えば「同一の飛行機に搭乗していた」等、なんらかの関連があるのではないか…？ #釜蓋山墜落機

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…というのがぼくの見立てだったんだけど、正直、まるで自信はなかったよ。「ぼくのちんけで乏しい知識をありったけ動員するとこうなる」って感じだけど、本当は無知ゆえの勘違いってやつで、まるでトンチキなのかも知れない。 #釜蓋山墜落機

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7百番台だからと言って必ずしも陸攻隊とは限らず、護衛戦闘機隊の可能性がないわけでもないし。そもそもまとめてではなくバラバラに書かれている時点で、同一機に乗っていた可能性がない、ってことなのかも知れない。陸攻といっても銀河かもしれないし。だとしたら完全に見当違いだ。 #釜蓋山墜落機

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そんなぼくの当て推量に、研究官さんは「こいつ面白えな」って感じでノリノリで答えてくれたw K708は確かにぼくの見立て通り一式陸攻装備の攻撃第708飛行隊のこと。 #釜蓋山墜落機

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またこの名簿は各部隊からの報告により記載されているので、身元確認が遅れる等混乱があったりすれば、住所の間違いや、記載がまとめてではなくバラバラなのはありえない話ではない。 8人と数が合わないのも他が同乗者だとすればあり得る。 ようするにかなりいい線いってるとw #釜蓋山墜落機

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ちょっと待っててね…と、研究官さんはまた奥に。 その間ぼくは開架されてる戦史叢書の本土防空作戦とかで、8月3日の東北地方での空戦ないし艦載機等の襲来がないか見てみたんだけど…やっぱり該当しそうなものは見当たらなかった。 #釜蓋山墜落機

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これに関してはむしろ地元で調べた方が充実している郷土史や国会図書館で艦載機アクションリポートとか米軍史料を閲覧したりと、すでに不忘墜落機群でノウハウがある方法でさらに調べて裏を取るつもりだけど。 #釜蓋山墜落機

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そうこうするうちに研究官さんがまた来てくれた。攻撃第708飛行隊についての詳しい史料とともに。 「攻撃第708飛行隊は、第721海軍航空隊所属の一式陸攻の部隊でした」 「721空って言うと…あの、桜花の？」 「ご存じでしたか。そうです。神雷部隊です」 #釜蓋山墜落機

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散りゆく桜は、二度と元へ戻ることはない。 そうだ。それは決してないのだ。 #釜蓋山墜落機

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特別攻撃機 桜花 母機である一式陸上攻撃機に吊るし、目標に接近、切り離される人間爆弾だ。 ロケット推進により得られる高速を利して、敵の防衛網を突破。必死の体当たり攻撃を敢行する目的で、それは生まれた。 #釜蓋山墜落機

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そして、パイロットは二度と生きて戻ることはない。 散る桜が帰らないように。 それは太平洋戦争の末期、日本の生んだ死の桜だったのだ。 松本零士原作OVA ザ・コクピット『音速雷撃隊』より #釜蓋山墜落機