【夜のまなざし】福間健二 #k2fact144

「わたしを殺して」がどこから来たのか。うまく思い出せないが、いつもこの言葉と一緒に歩いてきた気がする。いろんなふうに、人が、殺されている。人を殺すものが、さまざまにある。そのさまざまに対して、まず、この自分を殺してくれ、とはじまる詩があるべきだ。それが第一段階。その詩が、誘惑的な姿で、自分の前にあらわれたら、どうするのか、というのが第二段階。こんなふうに「虚」に「虚」を重ねていく思考の前に、ゼロ段階としての「実」が欲しい。タッチパネル、ジャケット、ロータリー、カリフラワー、セルロイド……。飛び込んできたカタカナの「実」に感謝している。 音楽は、Antony改めAnohni の「Drone Bomb Me」。これこそ正真正銘の美しい「わたしを殺して」だ。 https://www.youtube.com/watch?v=8Pei4SnavUk
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福間健二 @acasaazul

一緒にいる男たちがはっきりしない。ぼくも男だが、男ってだめだと思う。反応しないタッチパネル。触り方がどうとか細かいことを言うな。外に出て夜空を見る。月についていったのは大昔。ぼくこそ考えていることに自信がない。シンセサイザーの音が止まった。(夜のまなざし1)#k2fact144

2016-05-11 14:28:00
福間健二 @acasaazul

わかばを入れていたジャケットをおいてきた。そうか、青いあらしに抱かれたかったのか。密度とともに、この風、この電流が、読めない事実の椅子に生意気な脚をなげだす「わたしを殺して」が次々に登場する五月を楽しんでいる。飛ぶ壜で殺して。わかったよ。(夜のまなざし2)#k2fact144

2016-05-12 09:10:00
福間健二 @acasaazul

一斉にピクッとしたね。国立駅南口ロータリー付近、バスを待つ人々。ちがう。最後のバスは行ってしまったし、みんなナイキを履いている。走り抜けたかった夜の本、その破れかけた構想からのゆるいカーブ。来てすぐに去ろうとする未来との衝突点で何が溶ける?(夜のまなざし3)#k2fact144

2016-05-13 08:07:39
福間健二 @acasaazul

みんな、自分の手に持ったものを見ている。そこに忍び込もうとする陰鬱な父や母。そんなものこそ溶けるのだが、溶けたあとの収縮と一緒になにか吐きだされる列島の掃除は大変だ。気がつくとここにも簡単には死なない「わたしを殺して」が誘惑的に並んでいる。(夜のまなざし4)#k2fact144

2016-05-14 11:35:00
福間健二 @acasaazul

言われたこと、なんでもするよ。それが最新型の存在理由。そんなことってあるのかなと、ひとつの孤独を追う。袋小路。見失い、引き返すと赤いドアと緑のドア。どっちにしよう。植物の場合なら、赤と緑の種類があるものは緑のほうに毒がある。So what? (夜のまなざし5)#k2fact144

2016-05-16 08:42:19
福間健二 @acasaazul

なにか吐きだすのも、なにかしてくれるのも、最新型の親切。そのやわらかい唇が欲望をかきたてる。二つのドア、どちらも何センチか開いたままにして、好きだけどどうしていいかわからない素材への感染力、通じさせたつもりで、回転しにくいものを回転させて。(夜のまなざし6)#k2fact144

2016-05-17 09:30:10
福間健二 @acasaazul

むりな回転は、再生する途中の皮膚にキズをつくる。それを絵に。コートの裾と二本の足で描く絵に。閉じ込めるのもそこから追いだすのも、すると同じ見つめる力の効果。いやなんですか。いやならそんな椅子に座ることはないのに座っている。その始末、どうする。(夜のまなざし7)#k2fact144

2016-05-18 07:36:30
福間健二 @acasaazul

緑に足を出して、柵で仕切られた一画に。希望どおりにならないとわかっていて希望を言うようなことだ。見えてくる。おとぎ話の、おとなしく眠るきみを天にも地にもわからない罪に躓かせて、つまり自分で自分を裁くしかない茹ですぎカリフラワー食べて苦しむよ。(夜のまなざし8)#k2fact144

2016-05-19 09:39:56
福間健二 @acasaazul

突風によろめき、大きなカラスの群れにも慌てて写真を撮りそこなう。わかっていて。純情二重奏、もうやれないと本性を現したいきみの声を出なくして舞い戻ったセルロイド通り。会う人、だれもが濃いまなざし。旧式の、物語の見失い方の、痛い焼きなおしだ。(夜のまなざし9)#k2fact144

2016-05-20 10:03:55
福間健二 @acasaazul

こんな夜もある。問題はいろんなふうにある。そんな歌。あちこちの夜に飛ぶ物体への指令だとしても、それでダメなわけじゃなく、おたがいの捨てた身に突き入れた植物の管をとおって立ち去る。いまは手段にも主題にもならない愛と死。遠くから見つめられて。(夜のまなざし10)#k2fact144

2016-05-21 08:29:58