副田賢二『〈獄中〉の文学史』読書メモ集

副田賢二『〈獄中〉の文学史――夢想する近代日本文学』(笠間書院、2016)の読書メモをまとめました。
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荒木優太 @arishima_takeo

副田賢二『〈獄中〉の文学史』買った。これは名著な予感。 pic.twitter.com/tUEdAvu5g0

2016-05-22 14:49:17
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荒木優太 @arishima_takeo

副田賢二本(104p)。1912年に本間久雄訳でオスカー・ワイルド『獄中記』が出版。これはドストエフスキー『死の家の記録』に並ぶ、近代日本の翻訳獄中言説。20年には神近市子が、25年には平田禿木が、35年には阿部知二、40年には田部重治が翻訳している。メモ。

2016-05-23 19:47:52
荒木優太 @arishima_takeo

『〈獄中〉の文学史』。184頁の「闘争の同士たち」は「同志」の変換ミスじゃないだろうか。もし副田さんのお知り合いがいたら教えてあげて下さい…って、いや、出版社が把握しときゃいいのか。

2016-05-24 20:18:30
荒木優太 @arishima_takeo

半分くらい読み終えましたけど、いい本ですよ。私の感覚だとアクロバットが足らない気もするけど、でも特に社会主義・プロ文関係の研究者は目を通しておいていいんじゃないだろうか。

2016-05-24 20:26:40
荒木優太 @arishima_takeo

まだ全部読めてないので暫定的な書き方になるが、副田『獄中の文学史』は身体性の問題を比較的軽視してるんじゃないだろうか。当然だとしても正当な理由があって、つまりは、メディア(的欲望)の問題構制のなかで獄中言説を検討しているから。

2016-05-24 20:35:56
荒木優太 @arishima_takeo

で、それはそれで大事だとは思うのだが、他方、獄中の大きな特徴って身体の自由が奪われるってところにあるのではないか、と。大杉栄の自己鍛錬や埴谷雄高(は出てくるかな?)の観念の自己増殖、あとユートピアみたいな、思考の自律運動は、その反動で成立しているように思う。

2016-05-24 20:39:24
荒木優太 @arishima_takeo

個人的にはだから、身体への権力と「書くこと」の自意識の相関関係を詳しく知りたい。獄中文学論は獄中的身体(または獄中的身体イメージ)とは何かを問う仕事になるべきでは。(或いは、こういうのは余りにもフーコーっぽいんだろうか? もういいよ的な)。

2016-05-24 20:44:49
荒木優太 @arishima_takeo

メディアの話だと、獄中イメージの消費にしか向かわないのでは、という疑問。

2016-05-24 20:46:41
荒木優太 @arishima_takeo

「『中央公論』に代表される当時の雑誌メディアの言説空間は、「女性」「犯罪者」「革命」「アナーキズム」など、実体的な記号も非実体的な記号もすべて混融した、いわば記号のメルティング・ポットであったといえるだろう」(副田賢二『〈獄中〉の文学史』)。メルティング・ポット…いつかどこかで。

2016-05-25 19:10:13
荒木優太 @arishima_takeo

芥川の「侏儒の言葉」には「Blanquiの夢」(『文藝春秋』1924・10)という章があったらしい。へぇー、すっかり忘れてた。ブランキ好きー。

2016-05-27 11:28:57
荒木優太 @arishima_takeo

副田賢二『〈獄中〉の文学史』読了。前田愛「獄舎のユートピア」を批判的に継承しつつ、ひとつの近代文学史にまで高めている。圧巻の良書。獄中言説を音信的・回想的・小説的に分ける方法もうまくいったのでは。個人的には林房雄の「独房文学論」や「獄中の筆」がとても魅力的に写った。

2016-05-29 07:47:41
荒木優太 @arishima_takeo

『〈獄中〉の文学史』は獄中文学を論じるさいの新しいスタンダードになることは確実だろうが、ただ通史の宿命か、テクスト読解への踏み込みがいささか足らないような気もする。その点では、後続する論者が参与しやすいはずなので展望が明るくていいのではないか。

2016-05-29 07:50:42
荒木優太 @arishima_takeo

前にも書いたように『〈獄中〉の文学史』は一種のメディア論、つまり獄中イメージ消費論であって、それ以上のことは(もう書かれてる? これから書かれる?)各論を読むしかないだろう。今のままだと「あんまり入る機会のない場所ってみんな興味シンシン」という極めて常識的な結論にも見えかねない。

2016-05-29 07:54:24
荒木優太 @arishima_takeo

メディア論であることと関係しているだろうが、頻出する「記号性」という言葉の使い方は少し気になった。ここまで記号記号出てくると、「お前にとって記号じゃないものってなんなの?」とか言いたくなる。あと「他者性」の語も、言いたいことは分かるけど、ちょっとヘンかなと思う。

2016-05-29 07:59:37
荒木優太 @arishima_takeo

@arishima_takeo 獄中の他者性、とか言われてもな。

2016-05-29 08:00:23