
再論・2013年8月8日夜の報道ステーションの特集でとりあげられた広島大・鎌田七男名誉教授の研究とその続報
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parasite2006
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巻頭言

毎年6月の初めに開催される原子爆弾後障害研究会、どこの新聞も何も言わないのはどういうことだろうかと思っていたら、6月5日(日)に長崎県原爆資料館で開催されていたのか。www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/abdi/index_j.h… しかしプログラムも非公表とは。
2016-06-18 01:07:15その1

2013年8月8日夜、テレビ朝日の報道ステーションは広島大・鎌田七男名誉教授の研究(2012年6月3日、第53回原爆後障害研究会で発表)を取り上げ、「広島の被曝二世のうち原爆投下後10年以内に生まれた人では、白血病の発生が片親のみ被曝より両親被曝で多い」と伝えました。(続く)
2016-05-30 16:06:24
(続き)この研究を報告した和文論文(長崎医学会雑誌 87 (特集号), 247-250)の全文を入手し読んでみたところ、両親被爆で片親被爆に比べて白血病発生率が跳ね上がるのは1946-55年生まれだけ(写真左上の図5)pic.twitter.com/vgK7MAjhzf
2016-05-30 16:26:20

【訂正】両親被爆と片親被爆の白血病発生率の差は1956-1965年生まれではぐっと縮まり、1966-1973年生まれに至っては両親被爆の方が父親被爆より発生率が低下しているのに、報道は1946-1955年の結果だけをつまみ食いで伝えたtwitter.com/parasite2006/s…
2016-06-02 00:07:40
研究対象となった1946年6月1日-1973年12月31日生まれの広島で被爆した親を持つ被爆二世の出生年別の人数(長崎医学会雑誌 85 (特集号), 300-303)。1947年をピークに減少 pic.twitter.com/hbPUY0SHnR
2016-05-30 16:55:41
上のグラフで昭和41年=1966年だけ出生数が減っているのは、この年が「丙午(ひのえうま)」にあたっており、「丙午年の生まれの女性は気性が激しく夫の命を縮める」という江戸時代の迷信の影響で全国的に出生数が減ったためだろうと、鎌田名誉教授自身が2012年3月7日の「第2回被爆2世医師の会」の席での講演で述べています。
(広島県医師会速報第2151号
http://www.hiroshima.med.or.jp/ippnw/sokuho/docs/2151_006.pdf
p.13)

1946-1955年生まれの人達は原爆投下時成人だった親から被爆後10年以内に生まれたと考えられるのに対し、1966-1973年生まれの人達は原爆投下時こどもだったと思われる親から被爆20-28年後に生まれたと考えられますpic.twitter.com/hbPUY0SHnR
2016-05-30 17:08:35

父母それぞれの被爆状況別の被爆二世の人数(長崎医学会雑誌 85 (特集号), 300-303) pic.twitter.com/O3suvTuoOj
2016-05-30 17:31:52
その2:続報論文の結果をご紹介します

2013年8月8日夜の報ステが伝えた広島大・鎌田七男名誉教授の研究の続報は、2014年6月の第55回原子爆弾後障害研究会(長崎大)で発表され中国新聞その他で報道もされましたが(この時点の情報はこのまとめでご覧いただけますtogetter.com/li/549170?page… )(続く)
2016-05-30 19:10:01

(続き)詳細が報告された和文論文(長崎医学会雑誌 89(特別号)272-275, 2014)を最近ようやく入手することができましたので、発表当時の報道と内容を照合しながら読んでみました。
2016-05-30 19:17:31
1946年6月1日-1973年12月31日生まれの広島で被爆した親を持つ被爆二世119,311例のうち、1995年末までに広島大学原爆放射線医科学研究所とその関連病院で白血病と診断され治療を受けたのは94例。(続く)
2016-05-30 19:28:57
(続き)この94例のうち1946年6月1日以降に生まれた兄弟姉妹がいる78例(除外された16例はいずれも1955年末までの生まれ)を症例とし、白血病でない兄弟姉妹151例=対照との比較(症例対照研究)により白血病発症リスクに及ぼす親の被爆状況と出生時期の影響を検討しました。
2016-05-30 19:47:29
広島大・鎌田七男名誉教授の研究の続報(長崎医学会雑誌 89(特別号)272-275, 2014)の研究デザイン図です pic.twitter.com/wbdzx5Krti
2016-05-30 19:59:21

親の被爆状況は「あり」と「なし」の2通りに分類しましたが、元のデータベースに登録されている0-9の区分のうち「あり」に分類したのはこの表で黄色く塗った1-4です。 pic.twitter.com/J6jYLLF0ml
2016-05-30 21:00:21
(↑要は「爆心地から2 km以内で直接被曝した人」と「爆心地から2 km以遠で直接被曝後3日以内に入市被曝した人」。原爆投下時に直接被曝していない入市被爆者は入市時期に関わりなく除外です。また2 km以遠の直接被爆者で入市時期が4日以降の人や全く入市していない人は除外です)

症例と同じ両親から生まれた兄弟姉妹は、遺伝的素因や生活環境が症例と似ているのでマッチングを行った対照として扱うことができます。マッチング済み対照を使った症例対照研究に使われる条件付きロジスティック回帰分析により、子供の性別、両親の被爆状況、出生時期の影響を検討しました。
2016-05-30 21:21:29
結果がこちら。1946年6月1日から1973年12月31日までを前期(表1)と後期(表2)に分けて解析。境目になる原爆投下後14.8年は、前期に見られる両親の被爆状況の影響の統計的有意性が最高になる時点として選ばれたものです pic.twitter.com/0jBxRCkbuy
2016-05-30 21:36:31

どちらの表でも3つの変数は上から順に子供の性別、父親の被爆状況と被爆からの経過時間、母親の被爆状況と被爆からの経過時間。父親の被爆の影響は前期に限って統計上有意となるのに対し、母親の被爆の影響は全期間を通じて有意ではありませんでしたpic.twitter.com/0jBxRCkbuy
2016-05-30 21:47:17

pic.twitter.com/0jBxRCkbuy 2つの表の下のnは症例数と対照例数の合計、number of casesが症例数で差が対照例数。発表当時の毎日新聞記事の「原爆投下後1-15年に生まれた被爆2世の白血病患者54人ときょうだい95人の計149人」は表1と数字が合わない
2016-05-30 22:03:53

さらに奇妙なことに、表1と表2のnを合計しても227にしかならずpic.twitter.com/0jBxRCkbuy 論文の「方法」の項に書かれた症例78、対照151の合計229に足りません(研究デザイン図pic.twitter.com/wbdzx5Krti の対照例の内訳の?の理由はこれ)
2016-05-30 22:11:03
