ケンペイ天狗「ヒア・マイ・ネーム、フレンド。ワレアオバ」

アナ・イゴール @KNPITNG

そして次の瞬間！３人分の乱暴な足音が立て付けの悪い扉を蹴り壊してエントリーした！「「「ザッケンナイキュー！」」」闖入者は全員がスーツ姿に深海棲艦めいた滑らかな頭部、挙動に一糸の乱れも無い。クローンイ級だ！「子供を出せ！」５インチ砲を威嚇射撃！屋根に風穴が空く！２５　#ケンペイ天狗

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「アイエエエ！」悲鳴が店内を満たす。平静を保っていたマスターもここに至り腰を抜かしカウンターの影に隠れた。人工深海棲艦を運用できる団体など、大ヤクザか暗黒メガコーポ、あるいは帝国海軍しかいない、要はアンタッチャブル存在なのだ！２６　　#ケンペイ天狗

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「スッゾイキューッ！」イ級が手当たり次第机や椅子を投げる！「アイエエエ！」客が悲鳴を上げ逃げ惑う！「ザッケンナイキュー！」イ級が手当たり次第机や椅子を投げる！「アイエエ！」客が悲鳴を上げ逃げ惑う！「MO出せイキュー！」イ級が手当たり次第机や椅子を放り投げる！２７　#ケンペイ天狗

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「ちょっと」青葉は顔をしかめ、イ級達を制止しようと手を伸ばす。「ザッケンナイキューッ！」しかしイ級達は目もくれず店を荒らし続ける！「う、く」プラチナブロンドの少女は左手で血が流れる肩を抑えながらテーブルの影で身を縮める。右腕には抱え込むようにMOディスク。２８　　#ケンペイ天狗

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「グワーッ！」不幸なヨタモノがイ級が投擲した椅子にぶつかり気絶した。「ちょっと、恐縮ですが」青葉は酔いでふらつく足取りでイ級に近づく。「やめませんか？皆迷惑してますし」「ア？ダッテメイキュー…」イ級が威圧的に青葉を睨め回す。「サケクセッゾテメイキュグワーッ！」２９　#ケンペイ天狗

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その瞬間。青葉の右腕が残像でぶれ、同時に断末魔が上がった。青葉を威圧していたクローンイ級は美しい放物線を描き店内の宙空を飛んでいた。高く、屋根近くまで飛び、落下、そしてテーブルを巻き込んで床へと叩きつけられる！「イキュアバーッ！？」首があらぬ方向に曲がり死亡！30　#ケンペイ天狗

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「イキュ……？」状況を把握できぬ別のクローンイ級が青葉の方へ向き直り、「ダッテメ…」「イヤーッ！」「アバーッ！？」その瞬間イ級の５インチ砲とは比べ物にならぬ砲撃で深海頭部が吹き飛んだ！言うまでもなく即死！３１　#ケンペイ天狗

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砲撃の主は言うまでもない。「じっとしてられないんですよねぇ、こういう時……。『ブッダの顔を触れ』ヤマモトゴジュロクもコトワザで言ってますし」店内の注目が青葉に集まる。それを気にも留めず青葉はゴキゴキと首を回した。「しかも青葉は今日ですね……すっごく……」３２　#ケンペイ天狗

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青葉の背負っていた革製リュックサックがはじけ飛び、鈍色の艤装が姿を現す。その巨大さ、無骨さは重巡洋艦級。15.5センチ副砲が細く煙を吐き出す。「イキュ…」最後の一人となったクローンイ級達がたじろぎ、後退りした。青葉の口元が怒りに歪む。「すっごく……」３３　　#ケンペイ天狗

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「すっごく！イライラしてるんですよ！」青葉が牙を剥いた！「ザッケンナイキューッ！」KBAM！クローンイ級が砲撃を放つ！だが青葉は既に消えている！一跳びでイ級の夜戦距離に踏み込み右ストレートを一閃した！「イヤーッ！」「イキュグワーッ！」SMAASH！顔面粉砕！３４　　#ケンペイ天狗

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「グワーッ！グワーッ！」顔面を破砕されクローンイ級が苦悶！だが青葉のカラテは終わらぬ！マウントをとり、「イヤーッ！」左拳が飛ぶ！「グワーッ！」「イヤーッ！」右拳！「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」３５　#ケンペイ天狗

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「人がヤケ酒してる時くらい、イヤーッ！」「アババーッ！」「ゆっくり飲ませろってんですよ！イヤーッ！」「アババババーッ！」「あとはえーっと…、うん、イヤーッ！」「アババババババーッ！」ナムアミダブツ！酔いに任せたオーバーキルだ！気圧された他の客も総失禁！３６　#ケンペイ天狗

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……５分後。客のいなくなった店内でしかめ面のマスターが動かなくなったイ級達を片付けている。「フウウウウ……」酒気を帯びた溜息が青葉の唇から盛大に吐き出された。「ねえ、恐縮なんですがぁ」青葉は足元がふらつくのを堪え床に座り込んだままの少女の隣にしゃがみこむ。３７ #ケンペイ天狗

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「お、おう……」少女が青葉を見る。少女の赤い瞳は未知の相手に対する不安で揺れていた。だが青葉の目線はルビーのような少女の瞳には注がれていない。青葉の目線の先は少女の右手にあるMOディスク。先ほどのクローンイ級がこれを探していたことを青葉は忘れていなかった。３８　　#ケンペイ天狗

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「た、助けてくれて感謝する。私は菊月、もし貴方が艦娘なら聞いてくれ。私の司令、イワミ司令官は無実で…」「イワミ提督？あの『タイヘン・ヤサシイ』撃沈の……。なら！」酔っぱらいは菊月と名乗った少女の言葉を手の平で遮った。そして菊月の鼻先ワンインチまで顔を近づける。３９　#ケンペイ天狗

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「な、なんなのさ……？」猛烈なアルコール臭に菊月が後ずさった。そしてそれを気にも留めず青葉は空色の瞳を輝かせる。「隠された真実の臭いがします！そのMOディスクの中身を見せて下さい！今すぐ記事にしますから！恐縮です！」４０　#ケンペイ天狗

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（【ヒア・マイ・ネーム、フレンド。ワレアオバ＃１】おわり。＃２につづく） #ケンペイ天狗

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（前回のあらすじ：イブというのに戦闘報道記者をクビになった青葉。バーで呑んだくれる彼女の元にクローンイ級に追われる艦娘、菊月が現れる。その手には難民船轟沈の裏にある陰謀を記したMO。こいつはタフな事件の臭いがするぜ！）#ケンペイ天狗 togetter.com/li/988724

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同時刻。暗い部屋でネオン金魚の水槽だけが仄かな光を放つ。BEEP……BEEP……BEEP……着信。『ドーモ、マギノ＝少将。大変お世話になっております』「ドーモ、カワガサキ社さん。大変お世話になっております」ネオヨコスカの上流階級にのみ許された秘匿電子空間回線だ。1　#ケンペイ天狗

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「ニュースを見ましたか？難民の件は文字通り沈めておきましたよ」『はい』「して、ご用件は？」『ハイ……先日の工場ですが実は建築が再開されることになりました。ハイ、原油価格の影響で』「ナント」『つきましては改めて300人ほど奴隷、オット！難民労働者を送って頂きたく』2 #ケンペイ天狗

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「おや、それではタイヘン・ヤサシイを沈める必要はありませんでしたな。ケジメショーをさせられてイワミも災難だ」『オッシャルトオリ、まことにご迷惑を……』キャバァーン！電子音が響く。マギノの机上に置かれた口座残高カウンターが大きく跳ね上がる。300人分の命の値段だ。3 #ケンペイ天狗

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「フーム」『オット、数字を間違えました！』キャバァーン！「ウム、まあいいでしょう。再度難民船を手配します。難民と違って工場には替えが効かない経済効果がありますからね」『はい、皆が儲かる。難民も職場が見つかる。ウィンウィンです』「フフ、ユウジョウ」『ユウジョウ！』4　#ケンペイ天狗

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SLAM！電話を置いたマギノの口角が醜く釣り上がった。思ったより大きなビズとなった。それもグッドビズだ。BEEP……BEEP……再度着信。先ほどとは別の男。『ドーモ、マギノ少将！』脂ぎった声が電子空間に響く。「ご苦労クロマロ＝サン。イワミの子鼠は捕まえたのか？」5　#ケンペイ天狗

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『申し訳ございません、追跡に向かわせたクローンイ級３体が全滅しました。只今第二次追跡部隊を派遣したところです』「なに？あの菊月は艤装解除済ではなかったのか？」『わかりません、第三者による介入かと……』「まさかケンペイ天狗か？」『調査中です』「ザッケンナコラー！」6　#ケンペイ天狗