ケンペイ天狗「ヒア・マイ・ネーム、フレンド。ワレアオバ」
『月月月月月月火~』ニュースが終わったラジオはナカチャンカワイイの流行曲を流し始めた。空虚な労働賛美歌だ。青葉は懐からMOとIDカードを取り出すと菊月に渡す。「そこの右奥がオフィスです。このIDでログインしてMOの内容をネットに放流して下さい」「あ、ああ。任せろ」菊月が頷く。46
2016-07-02 23:40:58「……その後は伊8=サンと一緒に逃げて下さい。二人の体格ならダストシュートが使えるはず」青葉の言葉に菊月が目を剥く。「あ、青葉=サンはどうするんだ!」青葉は主砲を再装填した。「青葉は時間を稼ぎます」47
2016-07-02 23:43:20「ね、伊8=サン、分かったでしょう?」青葉は最後に伊8へと振り返り、笑った。「秘密や嘘って、いつも最後には強い人の味方なんですよ。その点真実は辛くても裏切らないから」「青葉=サン……」――そして、エレベータが最上階を示す。48
2016-07-02 23:45:38『最上階ドス「「「「「「ザッッケンナイキュー!」」」」」」」エレベータの扉が開くと同時に、ダムが決壊するかの如くクローンイ級が溢れだした!「二人共奥へ!」青葉が叫ぶ!KBAM!KBAM!BRATATATAT!一瞬にしてフロアは無数の砲火に覆われるキリング・フィールドと化した!49
2016-07-02 23:47:59「青葉=サン!青葉=サン!」「ダメ!行かないと!」叫ぶ菊月の手を伊8が引く。弾雨が降ろうとしている。青葉は二人への道を塞ぐように仁王立ちになると叫んだ。「私は重巡洋艦!ソロモンの狼!そして戦場報道記者青葉!」そして針山のような5インチ砲の群れに向かい地を蹴る!「ワレアオバ!」50
2016-07-02 23:50:22(前回のあらすじ:難民船轟沈事件の裏にブラック提督マギノ少将の陰謀あり。真実を暴き刺客の伊8も退けた青葉であったが、これに対しマギノはクローンイ級の飽和投入による制圧を図る。青葉は菊月と伊8を逃し、独り絶望的戦力差に立ち向かう!) togetter.com/li/988724
2016-07-10 21:03:48「「「イキューッ!」」」」KBAM!KBAM!KBAMKBAMKBAMKBAM!クローンイ級の弾雨の中を青葉は身を低くして駆ける!右腿に5インチ砲が突き刺さった。だが重巡洋艦の装甲には浅い。痛みを噛み潰し20.3センチ砲を連射する!「イヤーッ!」「「「イキュアバーッ!」」」 1
2016-07-10 21:09:32「イヤーッ!イヤーッ!」青葉の砲撃が次々とイ級の頭を砕いていく。ここまで数が多いと狙う必要すら無い。だが同時にキリが無い!「ザッケンナイキューッ!」砲撃が青葉の脇腹を掠めた。「ンアッ……!」青葉はよろめくのを堪え砲撃を続ける。「「「イキュアバーッ!」」」三体のイ級が爆散! 2
2016-07-10 21:13:19青葉は砲撃を続けながらクローンイ級の群れを見た。およそ残り半分。「いけますかね……?」しかしその時エレベータのドアが開く!「「「「「「「ザッケンナイキュー!」」」」」」ナムサン!20体近いクローンイ級が追加! 3
2016-07-10 21:16:00KBAMKBAMKBAM!三方向からの砲撃が青葉を襲う!「チッ……!」青葉は一瞬の状況判断の後一方向に狙いを定め、あえて身に受けるように突進する。砲弾が青葉の左肩を灼く。だが三発を同時に受けるよりは遥かにマシだ!青葉は前転しながら主砲を放つ! 4
2016-07-10 21:19:05「イキュアバーッ!」イ級の顔が砲撃を受け吹き飛ぶ。「イキューッ!」だが背後からの砲撃。青葉は手近なイ級の腕を掴み、重巡腕力で迫り来る砲弾に向け放り投げた。KABOOM!「イキュグワーッ!!」空中で爆散!ワザマエ!しかし青葉は顔をしかめた。流れ弾が左腿を浅く抉っている。 5
2016-07-10 21:22:14「「「「「「ザッケンナイキュー!」」」」」エレベータの扉が開き20体近いクローンイ級が追加。主砲で迎え撃つ。KBAM!KBAM!ガキン!ナムサン、弾切れだ。「イキューッ!」好機と見たイ級達が殺到する!「チッ、イヤーッ!」青葉はカラテに切り替え、手近なイ級の顔面を掌底で粉砕!6
2016-07-10 21:25:25「イキューッ!」「イヤーッ!」あらゆる方向から飛び来る砲弾を躱し、掌打を打ち込む!横から来る敵の首を後ろ回し蹴りで圧し折る!砲弾が腕を掠め血飛沫が舞う! 「イヤーッ!」「イキュグワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」 7
2016-07-10 21:29:44「イヤーッ!」「グワーッ!」「イキューッ!」「ンアーッ!」おお、おお、なんたる絶対包囲か!読者の方には青葉を囲むイ級の輪が徐々に小さくなっていくのが分かるだろう。海を駆ける狼めいて敵を葬っていく青葉、しかしその体には絶え間なく砲弾が突き刺さり続ける。艤装が弾け、肉が抉れる。 8
2016-07-10 21:31:14だが、青葉の意志は消えぬ。そこにあるのは記者としての意地!「まだです……まだまだですよ!」ハイキックでイ級の頭部を切断!「イキューッ!」だがその瞬間、砲撃が右脛へと突き刺さった!「ンアーッ!」ナムサン!伊8とのイクサでの負傷箇所だ! 9
2016-07-10 21:33:45「「「イキューッ!」」」膝をついた青葉へイ級達の砲撃が殺到する!「ンアーッ!」「ンアーッ!」「ンアーッ!」おおナムサン!最早重巡装甲も限界である!「「「「「ザッケンナイキュー!」」」」更にエレベータの扉が開き、20体のクローンイ級が追加!フロアに入りきらぬ程のイ級だ! 10
2016-07-10 21:36:04ヨロヨロと下がった青葉の背中がオフィスルームの扉に触れた。もうこれ以上は下がれぬ。青葉は千切れた左耳から血を流しながら思いを巡らした。弾薬切れ、右腕骨折。手詰まりだ。目の前には大量のイ級。菊月と伊8は上手く逃げおおせただろうか?ソーマト・リコールめいて時間感覚が圧縮される。 11
2016-07-10 21:38:25泥めいてゆっくりと流れる時間の中で、青葉はカイシャクの砲撃を向けるイ級達を見る。『クリスマスまであと10分!』天井のスピーカーから耳障りなラジオが聞こえる。そういえば今日はイヴだったか。古鷹は元気にしているだろうか?昔は欠かさずクリスマスを共に過ごしていた親友を思い出す。 12
2016-07-10 21:40:58「古鷹=サン」青葉が真実にこだわるきっかけとなった彼女。『ワレアオバ』勘違いの嘘で失ってしまった彼女。身を灼くような後悔の果てに、この世界で再び出会えた彼女。記者になると決意した時も最も応援してくれた彼女。「……古鷹=サン。青葉は記者として後悔ない人生を送れましたよ!」 13
2016-07-10 21:43:12「「「「イキューッ!」」」」無数の砲弾が青葉に向けて放たれる。「青葉は昔と同じように最後まで戦いきったから!だから!」敵に届かぬ弾と、友に届かぬ言葉。後悔は無いはずだ。だが、悔しさで涙があふれた。「ワレアオバ!だからまたいつか会いましょう!この世界で再会できたように!」 14
2016-07-10 21:45:27『真っ赤なお鼻の―――』ラジオから流れていたクリスマスソングが途切れる。天井のスピーカーに裂け目が入り、砕けた。天井ごと。……天井ごと? 15
2016-07-10 21:47:46その時である!堅牢な鉄骨ビルの天井を砕き、赤黒い影が濁流の如くフロアへ突入してきたのは!天狗オメーンで顔を覆ったその狂人は、青葉の前にベンケめいて仁王立ちになり全ての砲弾を身に受けた!ゴウランガ! 17
2016-07-10 21:52:25