気象庁の放射能拡散予測を巡る騒動 - SPEEDIは気象庁ではなくて、文科省の所管だ 2011/3/16-4/5

■気象庁の放射能拡散予測を巡る騒動 4/6-4/30 http://togetter.com/li/128860 ■〈プロメテウスの罠〉第3シリーズ 観測中止令 (完) http://nanohana.me/?p=7388 ■気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/index.html ■気象庁気象研究所 http://www.mri-jma.go.jp/ ■東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の移流拡散について ※グラフ・動画をご覧になる前に ここで示す放射性物質の移流拡散は、地表面や海面への沈着(大気からの除去)を考慮しないなど様々な仮定に基くシミュレーションであることに注意してください。 続きを読む
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まとめ なぜ、SPEEDI は公表されなかったのか 『なぜ、SPEEDI は公表されなかったのか…そして政治・行政に今後求められることとは?』 : NYTimesの記事をめぐって、また個人でお調べになった@tadagonpapaさんのTwほか、…そして政治・行政にこれから求められることとは? 6405 pv 65 22 users
まとめ SPEEDIは何故公開されなかったか SPEEDIの公開が遅れたことの理由として次のような理由をよく見ます。 ・モニタリングが不十分なため不完全なものだった ・気象データに不備があり不完全なものだった ・公開すればパニックが起こるから ・公開しても避難の役には立たないから これらは信じて良いのでしょうか?少し検証してみました。 ※「当初は稼働していなかった」は明らかなデマで議論の対象にしていません。 ※ 誰が公開を妨げたかもあまり触れていません。解明が進むことを期待します。 9594 pv 126 3 users 19
まとめ いまさらながら、SPEEDIについて なぜか最近また、SPEEDIの予測が公開されていれば云々、というお話が何件か流れてきました。 私は温暖化対策のシミュレーションが専門で、同じ研究室の同僚や学生には大気汚染のシミュレーションをしている人もいます。その立場からの想像と感想です。 続編もあります。「続・いまさらながら、SPEEDIについて」 http://t.co/borKt1Pr 27028 pv 587 48 users 21
まとめ 続・ いまさらながら、SPEEDIについて 先日つくったSPEEDIについてのまとめ、 「いまさらながら、SPEEDIについて」 http://togetter.com/li/243580 について、もう少し具体的なところを、 主として文科省公表の計算結果を見ながら考えます。 10238 pv 155 5 users 5
まとめ ニュース「SPEEDIで実測も非公表」はちょっとおかしい NHKニュース「SPEEDIで実測も非公表」にはちょっとおかしい点があるのですが、そこに気づいた人は少なかったようです。 2127 pv 13 1 user
まとめ SPEEDIが初期の避難に使えなかったわけ Flying Zebraさんのつぶやき シミュレーションがどういう限界を持ったものかって事は、世間の人は余りイメージ持ってないよね。だから、いまだになんであれを使わなかったんだっていう批判がきえない。たぶん、だれか責任者を見つけ出して血祭りにしなきゃ収まらないって感じなんだろうな。 でも、実際には、放射能拡散の初期の避難に使うことは、技術的に不可能なことだった。 まあ、少し時間が経ってからの遣り様は、今から振り返るともう少し何かできたかも知れないけど、少なくとも最初のころは誰が悪いでもなくしょうがなかったとおもうんだなあ。 13490 pv 139 13 users 7
まとめ SPEEDIは本当に「仮定試算値で避難誘導すべき」と定められているのか? 森まさこさんのツイートと、SPEEDI情報に公開義務があったかどうかに絞って考えました。 「公開すべきだったか」や「避難指示が適切だったか」を考えようとすると、すべての試算図・緊急時モニタリングの実施内容・避難指示の内容・実際に避難した場合のメリットとデメリット・公開した場合のメリットとデメリットなど、をすべてつき合わせて考えないといけないので、そのあたりは他の方にお任せします。 2408 pv 9
まとめ Mr.サンデー 「SPEEDIの情報非公開の理由について」 ●2011年5月29日放送 22:00 - 23:15 フジテレビ ●避難予測“非公開”の謎 避難先で“高放射線”浴びた… 福島第一原発の事故の影響で南相馬市から飯舘村に放射線の危険を知らされるずに避難してきたが、放射線の拡散予想が公開されなかった理由を取材。 原発の安全をPRするビデオを紹介し、原発事故が起きたときに周辺環境への影響を迅速に予測するSPEEDIが今回の震災でどのように運用されていたのかを取材。 ●公表されることのなかった「SPEEDI」の拡散予想データを震災直後から解説し、高い放射線量を記録した浪江町の住民がどのように避難したかを取材。 SPEEDIの拡散予想データを事前に知っていたと見られる原子力安全・保安院のその他一般人・文部科学省のその他一般人に、なぜ公表されなかったかを聞いた。 ●.. 5536 pv 13 1
リンク PRESIDENT Online - PRESIDENT SPEEDI情報はなぜ、公開されなかったのか【1】:PRESIDENT Online - プレジデント 汚染地域を予測し、住民誘導の目安として準備されていたのが、「SPEEDI」である。 3 users 66
リンク PRESIDENT Online - PRESIDENT SPEEDI情報はなぜ、公開されなかったのか【2】:PRESIDENT Online - プレジデント 「(SPEEDIの)予測情報が提供されていれば、より適切な避難経路などを選ぶことができた」 3 users 44
  • 2012年11月27日
    班目春樹の証言 SPEEDIは文科省の"4段階の奇襲作戦" で原子力安全委員会に押し付けられた-なるほど!1日5分で毎日オドロキ!原発・核関連本凝縮レビューメルマガ!
    http://blog.livedoor.jp/genpatsumerumaga/archives/20382750.html
    『班目春樹の証言 SPEEDIは文科省の"4段階の奇襲作戦" で原子力安全委員会に押し付けられた』

「ざまあみやがれい!メールマガジン」vol.383


【まずは30秒で僕のオドロキをお伝えします】

まず、あまり期待せずに購入した新刊「証言 班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか」が予想外に興味深い内容だったということにまず驚いた。

この中で、班目春樹氏は、文部科学省と原子力安全委員会(当時)の間の確執について告白している。それも「隠蔽工作」「奇襲作戦」という言葉をつかって強く文部科学省を批判している。

事故が進行する中で、文部科学省は、SPEEDIの評価と運用、そして公表までを原子力安全委員会に一方的に押し付けた、という内容だ。

そこには、文部科学省の積極的な動きと、逆に受け身の原子力安全委員会の姿勢が見て取れる。

あくまで班目氏の視点からみたSPEEDI隠蔽の顛末だが、事故後に霞が関で何がなされていたか、という資料として、貴重性を僕は感じた。

▼証言 班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?

【お時間に余裕がある方は、もう少し続きをどうぞ! 所要時間2分程度です。】

『私の見る限り、あの非常時に実際に各省庁間で繰り広げられたのは、もっぱら責任の押し付け合いでした。そんな霞が関でわれわれ原安委(※原子力安全委員会)は、「底なしのお人好し」と思われていたようです。とりわけ、文部科学省に対しては、よくもここまで責任を押し付けてきたものだと、憤りを通り越して呆れてしまいます』

「証言 班目春樹」では、こんな出だしで、文部科学省がSPEEDIを原子力安全委員会に押し付けた内幕を説明している。

SPEEDIはアメリカのスリーマイル島事故後に、旧科学技術庁が予算を確保して運用を始めた。その後文部科学省が引き継ぎ「SPEEDIを、非常に頼りがいのある防災対策システムだと盛んに喧伝」(『証言 班目春樹』)してきたという。つぎ込まれた金額は120億円。これを班目氏は「まさに溝に捨てられたようなもの」と言っている。

2011年3月15日、そんなSPEEDIの計算結果についてマスコミからの質問が相次いだ。これをうけて文科省事務方の幹部は、初めて「公表を検討する」と前向きに答えざるを得なかった。

事故直後から計算を開始してきたSPEEDIの計算結果は、この時点まで隠されていたのだ。

その後、「証言 班目春樹」によると、文科省は「SPEEDIの運用に加え、計算結果の評価と公表などを原子力安全委員会に丸ごと押し付ける”奇襲作戦”を開始」してきたという。

皮肉なことに、その押し付けの動きはSPEEDYだったようだ。

翌日、わずか1日で、文科省は、原子力安全委員会に相談すること無く、SPEEDIの運用と評価と公表を押し付け、それまでSPEEDI計算結果を隠してきたことの罪を免れたように、「証言班目春樹」では綴られている。

では、16日の文部科学省の「奇襲作戦」について書いていく。

”奇襲作戦”第一段階(16日朝の官邸での会合)

この会合で、文科省はモニタリングデータ取得及び結果のとりまとめと公表を行い、原子力安全委員会はモニタリング結果についての「評価」を行うという指示が、枝野官房長官(当時)から出た。

だが、「SPEEDIについては全く言及されなかった」という。前日に「公表を検討する」と答えたにも関わらずだ。

ここでのポイントは、「モニタリング結果についての『評価』」を原子力安全委員会が行うことになったことだ。原子力安全委員会は助言する組織だ。つまり、アドバイザーの役割でしか無い。だが、緊急時とはいえ、評価という実務を原子力安全委員会が行うことが決まった。

そして、これを踏み台にして、なし崩し的に、打ち合わせもなく、あくまで助言機関でしかない原子力安全委がSPEEDIの実務を担うことになっていく。

”奇襲作戦”第二段階(16日午前11時頃、文科省内の政務三役協議)

文部科学省内部で以下のことが決められた。

『「当省は放射線による影響の評価は行わないことになったのだから、評価が伴わないSPEEDIなどの生データだけの公表だけでは意味が無いので、今後は原子力安全委員会において運用・公表する」』

これについて、班目氏は「文科省内で全く内部的に決められた」「実に強引で、乱暴な拡大解釈だとしか言いようがありません」と批判している。

第一段階において、原子力安全委員会がモニタリング結果の評価を行うことが決まったことで、それをうけた文科省が、なし崩し的に、SPEEDについても「評価」と、それに必要な運用・公表を原子力安全委員会が行うというふうに押しつけたという形だった。

なかでも班目氏が問題としているのは「文科省とは別の組織である原子力安全委員会の所掌業務の変更を勝手に決めている。原子力安全委員会や文科省のそれぞれの設置法と言った関係法令さえないがしろにするもの」ということだ。「証言 班目春樹」を読む限り、文科省の一存で、原子力安全委員会の業務が決められたということになっている。

だが、原子力安全委員会は、内閣府に属している。文科省に業務を決められるという云われは無いというわけだ。

実にここまで、原子力安全委員会は、SPEEDIがよもや押し付けられようとは、予想だにしていなかった。

そして、奇襲作戦第三段階から、文科省は一挙に、SPEEDIを安全委員会に押し付けることに成功したとされている。

それは、文科省から安全委員会への、一方的な1本の電話で行われたと、班目氏は証言している。

(※ブログでの公開部分はここまでです)

リンク inoreading.meblog.biz 研究室の書棚から…: 岡本孝司「証言 斑目春樹−原子力安全委員会は何を間違えたのか」新潮社、2012年 このブログでは、私(福井県立大学地域経済研究所 井上武史)の研究室で増殖し続ける書籍から、特に印象に残ったものを紹介します。 ジャンルは研究分野である地方財政や地域経済が中心ですが、自己啓発本や趣味の本などもあわせて、その時たまたま読んだ本を取り上げます。
まとめ 国会事故調 班目春樹氏 証言について @hirougaya さんによる 2月 17日 班目春樹氏 証言の 検証 tweets。 JBpress に 掲載された 烏賀屋さんの 記事は こちら、 「福島第一原発事故を 予見していた 電力会社技術者 -- 無視され 死蔵された "原子力防災" の 知見」 (5月 31日) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35339 1228 pv 4

-SPEEDI関連国会質疑収集メモ - 懐疑論者の祈り
http://www.skept.org/memo/speedi_kokkai.html

リンク キノコの光合成 『質疑応答 柿沢未途議員(みんなの党)Vs班目&寺坂』 キノコの光合成-Ameba キノコさんのブログです。人生は長生きすればするほど美しくなる。 1 user

★阿修羅♪ > 原発・フッ素28 > 900.html  
「仏壇」と同じだった原発事故対策システム 専門家不在の調査委員会が覆い隠していること
http://www.asyura2.com/12/genpatu28/msg/900.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 29 日 00:18:48: cT5Wxjlo3Xe3.

JBpress>イノベーション>ウオッチング・メディア [ウオッチング・メディア]
「仏壇」と同じだった原発事故対策システム 専門家不在の調査委員会が覆い隠していること
2012年11月29日(Thu) 烏賀陽 弘道
11月23日、永嶋國男さん(71)に追加のインタビューをした。永嶋さんは、原発事故対策の専門家である。経済産業省の外郭団体「原子力発電技術機構」(現在「原子力安全基盤機構」)でERSS/SPEEDIの開発に中心的な役割を果たした。つまり、福島第一原発事故で使われるはずだった防災システムを隅々まで知り尽くしている。 
政府がERSS/SPEEDI本来の機能を使っていれば、福島第一原発事故であれほど多数の住民が被曝する事態は避けられたのではないか。どうしてそれができなかったのか。誰のミスなのか。それがフクシマの南相馬市や飯舘村といった現場から取材をスタートさせた私の、一貫した問題提起である。 

これまで3回に分けて永嶋さんの話を掲載したところ、非常に大きな反響があった。政府や東京電力の福島第一原発事故対策の失敗はもちろん、その後の事故調査委員会の調査内容も不完全であることを、永嶋さんが詳細に語ったからである。 

一方その間、私は核・原子力技術開発の歴史を取材するため、アメリカを1カ月半取材して回った。アメリカでの取材中も永嶋さんとメールで連絡を取り合った。その証言内容をアメリカ側から裏付けすることができた。前回の取材後にそうした重要な内容が出てきたため、今回のインタビューを追加で重ねることにした。 

日本でも飛行機の落下事故を想定して対策を立てていた
──アメリカの核・原子力研究施設を回って分かったのですが、アメリカは国土がだだっ広いので、広大な人の住んでいない空き地がある。そこで「原子炉を暴走させ破壊する実験」まで積み重ねています。アイダホ州のアイダホ国立研究所では「原子炉を暴走させるとどうなるか」と実際に原子炉が爆発する実験までやっていた。地平線まで溶岩の荒地にある、月世界みたいな場所にある実験所でした。研究所の人に「一番近い集落までどれくらいの距離があるのか」と聞いたら「30マイル(約50キロ)」と事もなげに言っていた。なるほど、こういう広い土地の国で原子力発電は生まれたのだな、原子炉が壊れる実験まですれば「事故など起こり得ない」などいう馬鹿げた発想は出てこないのだ、と実感しました。
そうした場所をあちこち訪ねて、永嶋さんがお作りになった「PBS」(Plant Behavior Data System:原子炉事故の進展を予測するシミュレーションシステム。ERSSの一部に組み込まれている)はアメリカに「コード」(コンピューターの演算プログラム)を発注された、というお話を思い出しました。 

日本政府や班目春樹・原子力安全委員長は「ERSSが壊れて原発からリアルタイムのデータが取れなくなったので、SPEEDIも使えなくなった」という説明をまだ変えません。しかし「原発事故に備えたシステムが原発事故で壊れた」なんて説明は幼稚すぎて信用できませんでした。驚いたことに、 国会事故調査委員会の報告も、その説明を鵜呑みにしてPBSの存在すら言及していない。しかし、PBSが実際に原子炉を暴走させる実験データを基に作ったプログラムであれば「シミュレーション」であっても「現実にやった実験の記録」なのですから正確なのだと思い当たったのですが、いかがでしょう。

その通りです。アメリカは実寸の3分の1の大きさの格納容器を造って圧力をかけ、どれくらいの圧力になったら破裂するかという実験もやっています。そうした実験は日本ではできません。ですのでアメリカに発注しました。 永嶋

──発注先はどこですか。
正確を期するため、2カ所に発注して比較検討しました。1つはニューメキシコ州のアルバカーキ近郊にある「サンディア国立研究所」。アメリカ連邦政府の研究所です。もう1つはイリノイ州のシカゴにある民間企業「Fauske 永嶋 & Associates」(FAI)です。当時、私が在籍した「原子力発電技術機構」として1995年ごろ発注しました。

──そうしたシステムを日本が発注して作ったとは意外ですね。
当時アメリカでは、スリーマイル島原発事故(1979年)のあと新規の原発開業もなく、原子力発電産業そのものが斜陽でした。が、日本は反対に原発を推進していた。なので予算があったのです。いいお客さんということで、サンディアとFAIにはとても喜ばれました(笑)。 永嶋

──「原子力発電技術機構」は経済産業省の外郭団体です。原発を推進する経産省が、そうした事故に備えたシステムに予算を投入していたのは意外な感じがします。しかも1995年といえば東海村のJCO臨界事故で死者が出た1999年より前です。
チェルノブイリ原発事故があったからです。日本もシビアアクシデント対策をしなくてはならん、ということになったのです。(烏賀陽注:こうした政府・経産省の意図はより詳しく後述する) 永嶋

──例えばどのような事故を想定していたのでしょうか。
六ヶ所村(核燃料再処理施設)に飛行機が落ちたらどうなるか、という「落下事故」を想定しました。 永嶋
そんな想定を経産省がしていたのですか? ──えっ!
青森県の六ヶ所村施設と東通原発は米軍・自衛隊の三沢基地の近くにあります。軍用機が離発着する。じゃあ、原発や再処理施設に戦闘機が落ちたらどうなるか、シミュレーションする。旅客機はずっと重くて、エンジンもでかい。そこまでは想定できないので、戦闘機までは対処しようということになりました。 永嶋

──データは実際に使われたのですか?
六ヶ所村施設の防護設計に生かされていますよ。 永嶋
──格納容器の破壊実験では、どんな結果が得られたのですか。
スティール製の格納容器では、設計圧力の3倍まで圧力をかけても壊れなかった。しかし、壊れるときは一気に全体が破裂する。一方、コンクリート製格納容器(烏賀陽注:関西電力・敦賀原発2号機など日本にもある。圧力を想定していない「コンクリート建屋」とは別)は圧力を上げると、あちこちにクラックが入って、そこから中のガスがしゅーっと出る。 永嶋

原発の運転技術が高いアメリカの海軍出身者
──原発事故対策を担当する人材には、日米でどんな違いがありますか。
アメリカは研究者出身が多いのです。(PBSのような)シミュレーションコードを組み立てていくのはアメリカの方がうまかった。日本はもっと原発の現場出身者が多い。アメリカは基礎理論、日本は工学出身の違いでしょうか。例えば、烏賀陽さんが取材された松野元さん
(『 永嶋原子力防災』著者。永嶋氏とは原子力発電技術機構での同僚)は、四国電力の伊方原発で実際に原発を運転していた現場経験者です。「原子炉主任技術者」の資格も持っている。工学部の原子力工学科を出ていても5人に1人くらいしか受からない難しい資格です。私は筆記試験は通ったんですが(笑)原発の運転はやっていないから。実技はやってないんです。

──アメリカの原発を取材してみると、アメリカの原発にいる運転者は、海軍出身者が多い。原子力潜水艦や原子力空母に乗り組むために、原子炉の運転の訓練を海軍で受けた人材が多かった。そうした軍人が軍を辞めたあとの再就職先が原発でした。

そうです。だから彼らは運転技術が高いのです。戦闘を想定しつつ原子炉を運転するんですから(笑)。魚雷が当たって原子炉が水浸するなんて当たり前の想定で訓練を受けている。原発に津波が来ても、彼らなら「想定内」でしょう。戦争を想定しているから、度胸があるというか、冷静なんです。日本の原発運転員は津波が来てびっくりしてしまった。シビアアクシデントを想定していなかったからです。アメリカの原発運転員にとってはシビアアクシデントは訓練の想定内です。「通常兵器なら当たっても大丈夫。核魚雷だったら原子炉が壊れてしまうなあ」と、そういう感覚なんです。 永嶋

──スリーマイル島原発事故があったときのカーター大統領は、海軍で原子力潜水艦の士官だった。カナダの実験原子炉の解体で防護服を着て作業をした経験もある。だから原発事故が起きたときも事態の重大さが分かった。そういう核技術に関わった人材の層の厚さが違いすぎる。
カーターはスリーマイル島原発事故のあと、原発の新規開業をスローダウンさせました。原発をよく知っているからこそ、慎重だったのでしょう。 永嶋

PBSのベースは米国製プログラム「MAAP」(マープ)
──日本の「PBS」の原型になったアメリカ製の原発事故シミュレーションプログラムについて詳しく教えてください。やはりスパコンで計算したりするのでしょうか。
1995年当時は、まだパソコンは今のように性能が高くなかった。「ワークステーション」でないと作れなかったし動かせなかった。ヒューレット・パッカード社のワークステーションを使いました。とはいえ、当時のワークステーシ 永嶋ョンはメモリは1GBもなかったしプロセッサのクロック数は100MHzくらいでしたが(笑)。

──なるほど。どういった作業をして作るのですか。
核燃料から冷却材の水への熱伝導の方程式を例にしましょうか。それが正しいかどうか実験で確かめる。それをプログラムに組む。また実験で確かめる。その繰り返しです。ある程度出来上がったら、向こうの担当者が東京に来たり、私たちがニューメキシコに行ったりして打ち合わせるわけです。 永嶋

──本当に原発のような原子炉を壊す実験をしながら作るのですか?
いやいや、100万キロワットなんてでかい原子炉を使った破壊実験なんてできません(笑)。「熱伝導」「格納容器内のメルトダウン」「水素爆発」など起こり得る「現象」を想定して、部分部分を分けて実験するのです。そして細かく枝分かれさせいくのです。 永嶋

──どれくらいの「現象」を想定するのでしょうか。
1000くらいかなあ。1000は超えますね。例えば、冷却水が沸騰して気泡が発生すると、核分裂の反応速度が遅くなる、という現象があります。そういう「現象」を織り込んでいくのです。プログラムでいえば20万~30万ステップです。10人のチームが作って10年かかるくらいの規模と考えてください。 永嶋

──出来上がったプログラムに名前はあるのですか。
サンディア国立研究所が作ったものが「MELCORE」(メルコア)、民間企業のFAIが作ったものが「MAAP」(マープ)です。 永嶋
──2つは何が違うのでしょうか。
方程式は共通でした。モデルに入れる物性値=実際のデータが違うんです。 永嶋
──どちらをPBSに採用したのですか。
MAAPです。実時間の100分の1くらい計算スピードが速いのです。PBSにはMAAPを採用して、正確かどうかをMELCOREで確かめました。 永嶋
──PBSにどのように組み入れたのですか?
計算式、プログラムがMAAPです。そこに日本の原子炉54基のデータが代入されていて、それぞれで甚大事故が起きたときの事態の進展が時系列で予測できるようになっています。 永嶋
──PBSはパソコンで動くのですか?
十分動きます。 永嶋
──1995年製というと、やや古いような気がするのですが。
PBSはいまバージョン3くらいにアップデートされているはずです。97年から98年ごろに出来上がった初代をバージョン1とすると、2000年ごろ、東海村臨界事故のあとに予測数値を更改したのがバージョン2。現在はバージョン3になっている。 永嶋

日本とアメリカしか使っていないのですか? ──MAAPやMELCOREは特殊なプログラムなのですか?
そんなことはありません。MAAPにもMELCOREにも世界各国が参加している「ユーザーズグループ」があって、フランス、ドイツ、スウェーデンなども使っている。年に1~2回かユーザーズグループの国際会議もあります。私はMAAPの不確定幅を検討するワーキンググループのチェアマンでした。論文も書いています。 永嶋

ウソや隠し事を見破れない調査委員会
──それだけの歳月と予算をかけて組み立てられたPBSやERSS/SPEEDIが、福島第一原発事故になぜ生かされなかったのか、という問題に話を移します。10月から11月にかけて『班目春樹 証言』(新潮社)、『海江田ノート』(講談社)、『総理大臣として考えたこと 東電福島原発事故』(幻冬舎)と、政府中枢にいた当事者の回顧録が続けて出版されました。私が驚いたのは、班目春樹・原子力安全委員長が「ERSSが壊れ、通信回線も途絶したので、SPEEDIは使えなかった」と本の中でまだこれまでと同じ説明を言い続けていることです。PBSは名前すら出てきません。「この期に及んで、まだなお班目委員長は理解されていないのだ」と愕然としました。

実は、班目さんは私の5年後に東芝に入社された後輩にあたります。3年で東芝の研究所を辞められて東大に戻り、若くして助教授になられました。(永嶋さんがフジテレビの取材を受けた映像を再生しながら)福島第一原発事故当時、班目さんの提案された対策には、はっきり間違いと分かる箇所がある。東大教授が文献を読みながら知識をつけるだけでは、原発事故にとても対応できません。 永嶋

──(烏賀陽が本を見せながら)班目委員長は「SPEEDIは文科省の管轄だ」「私は文科省に責任を押し付けられた」と主張されています。

委員長が実は一番分かっていない(笑)。原発事故の時は、ERSS/SPEEDIは経済産業省の中に設けられた「緊急時対応センター」(ERC)で統括・連携して、原子力安全・保安院が首相官邸に情報を出すことになっている。ERSSを担当する「プラント班」とSPEEDIを担当する「放射線班」は隣同士です。そんなことは毎年「原子力防災訓練」でやってみんな知っていることです。班目さんは自分が何をなすべきか、分かっていない。 永嶋

──国会事故調査委員会の報告にも「PBS」は名前すら出てきません。
国会事故調に限らず、どの調査委員会にも私や松野さんのような原子力防災の専門家が入っていないのです。だから、相手の言うことを鵜呑みにしてウソや隠し事を見破れない。班目委員長や安全保安院長が「ERSSが壊れました。通信が途絶しました。だからSPEEDIは使えませんでした」と言えば「ああ、そうですか」で終わってしまって「いや、PBSがあったはずだ。なぜ使わなかったのか」と質問を重ねることができないのです。 永嶋

経産省は20年も緊急事故対策をやってきたのです。その歴史、経緯や結果の検証がまったくなされていない。これは極めて不愉快です。PBSの名前すら出てこないのです。 

あまりにもちぐはぐなPBSの使い方
──PBSを本来どおり使っていれば、何ができたのでしょうか。
PBSは事故の進展を予測するシミュレーションを示します。ということは、現実の事故の進行と照らし合わせれば「おかしい」と気付くことができたことがたくさんある。 永嶋
──例えば?
1号機はIC(非常用復水器)が作動していないのに、作動していると長い時間誤解していた。あれはPBSを走らせていれば、矛盾に気付いたはずだ。「おかしい。ICは作動してないんじゃないか」と早く気付いたはずだ。また「燃料棒は水の下にある」と計測値が出ているのに、放射線量が上がった、という矛盾する数値が出てきたら「水位計が狂っている」ともっと早く気付けたはずだ。 永嶋

2011年9月に政府が発表した資料に含まれていたPBSの画面(その1)。下に「SPEEDIで出力する」というボタンが見える。
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──なるほど。現実の破壊実験から作ったシミュレーションだから「事故の進行予定表」としても使えるわけですね。それと現実を照らし合わせることができた。
これを押せば、原子炉の実際のデータが入らなくても、PBSがそれぞれの原子炉ごとの数値を計算して、天候と組み合わせて、放射性物質が流れる方向を地図の上に示してくれるのです。「原子炉のデータが取れなかったから、SPEEDIは使えなかった」なんて、ありえない。そんなことが起きないよう設計してあります。 しかも、画面を見てください。下に「SPEEDI様式出力」というボタンがあるでしょう? 永嶋

PBSの画面(その2)
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──PBSの使い方が本当にちぐはぐなんです。福山哲郎官房副長官(当時)の『官邸からの証言 原発危機』(ちくま新書)には「11日午後10時44分、保安院が『福島第一原発2号機の今後の進展について』と題するペーパーを官邸の危機管理センターに報告した。それはプラント解析システムによって今後、2号機がどうなっていくのかを予測していた」と書いてある。この「プラント解析システム」こそPBSのことにほかなりません。
保安院が9月2日付で公表した資料にもその記述があります(コピーを見せる)。 永嶋

PBSの画面(その3)
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──これには2号機だけでなく、1号機3号機もPBSを使ったシミュレーションをやったとはっきり記載している。1号機は「SPEEDIにデータ入力して計算結果を出力した」とさえある。ちゃんとPBSを使っているのです。しかし「官邸には届けなかった」などとしゃあしゃあと書いている。9月2日なんて「騒ぎが収まってからこっそり公開した」という感じがします。
動かしたはいいが、使い方が分からなかったのでしょう。よく分からないが、動かしてみた。そんな感じです。 永嶋

──予測結果のあまりの深刻さに、伏せようとしたのではないですか。あるいは、PBSの存在を明らかにすれば、過去20年シビアアクシデントが起きうると知っていたことを認めざるを得ない。それが発覚するのを恐れた。
それもあるかもしれませんね。 永嶋
ERSSは「カネをかけて立派なものに見せることに意義がある」

──1995年からずっとPBSやERSSを開発して予算を投入してきた経産省~安全保安院なのに、なぜいざ本番という時にまったく使えなかったのでしょうか。
福島第一原発事故対応でも名前が出てくる原子力安全・保安院のXさん(烏賀陽注:永嶋さんは実名を挙げているが、相手の言い分をまだ取材していないので名前を伏せる)は、経産省でERSSの開発当初から担当だったんです。 永嶋

じゃあ、Xさんは経産省の中でもERSSに一番詳しいはずじゃないんですか? ──えっ!
経産省の官僚はカネを出すだけで中身の技術を勉強しようとしません。90年代の終わり、JCO臨界事故の前でしたが、Xさんが「ERSSは仏壇と同じだ」と言ったことを覚えています。 永嶋

──「仏壇」とは、どういう意味でしょうか。
「ERSSは役に立たなくていい。そんなシビアアクシデントは起きないんだから。しかし、一般公衆に向けて、原発事故対策はしなければならない。だからカネはかけなくてはいけない。だから仏壇と同じなんだ」。仏壇は実用上何の役にも立ちません。カネをかけて立派なものに見せることに意義がある。そんな意味でした。 永嶋

──趣味の悪いジョークのようです。あまりにうまい例えで呆れてしまいました(笑)。
私は臨界事故を契機にできた「原子力災害対策特別措置法」(原災法)の起案にも関わっていました。原子力安全委員会の「防災部会」で「緊急時対応ワーキンググループ」の委員をしていたのです。 永嶋

法を作るとき、原発事故のデータを通産省に渡しました。それを通産省は成文化した。法は概念にすぎないので、「3キロ以内避難・10キロ以内屋内退避」という具体的な数字を決めたのが「防災指針」です。その時、原災法3条に「原発事故が起きても10キロ圏外にまで影響が及ばないよう電力会社は事故を抑え込む責務を負う」という趣旨を盛り込みました。東京電力は当時「10キロに及ぶ事故なんか起きない」「大げさすぎる」と主張していた。それが今は「津波のせいだ」と逃げている。 

──なるほど。PBSが予測した原発事故の予測は「原子力災害対策特別措置法」という法律に明文化されたんだ。単なるプログラムじゃない。
それは「侵してはならない個人の権利を侵している」と思う。原災法どころか憲法にすら違反しているんじゃないでしょうか。 どうして検察庁が東電を原災法違反で起訴しないのか、私は不思議です。16万人もの大勢の人が家に帰れなくなり「難民」のような生活を強いられているのでしょう? 

──捜査当局が何を考えているのか、私も不可思議です。
私は反原発でも脱原発でもありません。原発に疑問を持っている人でも大半は「本当に原発をやめてしまっていいのか」と考えているはずだ。しかし「誰がどんな罪を犯したのか」「罪を繰り返さないためにはどうすればいいのか」を真剣に考えて、しっかり実行しないと、普通の人がすべて「反原発」「脱原発」に行ってしまう。そして改善をしないまま地震や津波が起きたら、また同じような原発事故が起きる。もう1つ同じ事故を繰り返したら、もう日本経済は耐えられないでしょう。私はそれを真剣に案じているのです。 永嶋

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36651

リンク JBpress(日本ビジネスプレス) 巨額の予算が水泡に帰した事故対策システム 松野さんに取材した時に「もう1人、同じように原発事故に備えた防災システムの設計に関わった人で、危険を警告していた人がいるので、探して取材するといい」と勧められた。それが永嶋國雄さん(71)だった。『原子力防災』の共著者になるはずだったとも教えられた。 28 users 644
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