Age of Wonders III -Chronicle of Valmsun Runekeeper- その3
- manbo_khazad
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加えて魔女のエンチャントによりその攻撃は強化されていた。さらに銛や魔女の射撃も飛ぶ。 「これ以上やらせるわけには!」 仕方なくヴァルムスンは自ら猪を駆って前線へと飛び出した。多少の被弾なら自分が代わりに受けられる。 #AoW3CoV pic.twitter.com/jFu5E2j3kT
2016-08-17 01:23:06それが誤りだった。 「グワーッ!?」 何が起きたのか、とっさにヴァルムスンはわからなかった。ただ猛烈な冷気に包まれ、意識が失われた。 巨大なつららが、猪の背の上でぐったりとうなだれたドワーフの胸を深々と貫いていた。 #AoW3CoV pic.twitter.com/LDP5BTeA4L
2016-08-17 01:30:57残されたドワーフ軍はかろうじて戦いを続け、フロストリングを殲滅することに成功した。結果的にはヴァルムスンが盾となったおかげで、生き延びた前衛部隊が攻撃を続行することができたのだ。しかし彼らに勝利の喜びはなかった。 #AoW3CoV pic.twitter.com/nWwXnaqJjM
2016-08-17 01:35:01オランティウスへすぐさま報せが届けられた。 「ヴァルムスンが…!」タイロバーは目を見開く。このようなことも有り得るとは思っていた。しかしまさかこんな、まったくの予想外の状況で… #AoW3CoV pic.twitter.com/VEYv95iKw7
2016-08-21 05:39:24いや、これまでと何も変わらない。大抵のことは予期しない状況で起こり得るものなのだ。彼らはすでにそれを学んでいた。 「遺体をロガーン・ドゥルへ。我らが主は戻ってくる。」 タイロバーは使者にそう簡潔に伝えた。 #AoW3CoV
2016-08-21 05:40:00氏族長の座を継いだ時、ヴァルムスンはロガーン・ドゥルにて"玉座の秘儀"の儀式を行っていたのだ。 志半ばにしてその身に最大の危険が及んだ時、儀式が発動し、肉体を離れかけた魂を虚無界(ボイド)につなぎとめるのである。 #AoW3CoV pic.twitter.com/gB4XDZAgI7
2016-08-21 05:42:16ボイドに入ったヴァルムスンの魂はある程度の時間をかけて力を取り戻した後に、物質界の肉体へ帰還することができる。 「よもや実際に、この儀式の効力が発揮されることがあろうとは。」 タイロバーはため息をつかずにはおれなかった。 #AoW3CoV
2016-08-21 05:43:30こうなっては、彼が不在の間、なんとかやりくりして時をしのぐしかない。ヴァルムスンの召喚した霊体兵士の維持や、新しい魔術の研究にも滞りが出ることは目に見えていた。せいぜいこれ以上問題が増えないことを祈るのみである。 #AoW3CoV pic.twitter.com/yZE8IlW5zp
2016-08-21 05:44:35ヴァルムスンの虚無界入りとそれが重なったことが実際偶然の産物だったのか、それとも何らかの運命的な巡り会わせだったのかは、誰にもわからない。 しかしその翌月から数ヶ月の間、とつぜん夜空の月が真っ赤に染まった。 #AoW3CoV pic.twitter.com/Tfudq7sD9J
2016-08-21 22:34:06『ロガーン・ドゥルの主が不在の間、何も起こらなければ良いのだが…』 不吉な赤い空とは裏腹に、人々のその祈るような思いに応えるかのように、領内は驚くほど静かであった。 …翼の生えたひときわ大きな影が、オランティウスの先、東の方角より姿を表すまでは。 #AoW3CoV
2016-08-21 22:55:38東の平野に不浄な者どもの住み着く廃墟が存在していることは、以前に光精(ウィスプ)の偵察によって把握されていた。 そこいらの独立拠点に比べれば幾分か力のある亡者どもではあったが、そこまでの脅威ではなかったはずである。 #AoW3CoV pic.twitter.com/shGB7u7h9c
2016-08-21 23:14:59しかしこの時、廃墟より進み出で来たのは、一匹の巨大な骨の竜であった。 周辺警戒のために配備してあった光精によっていちはやくその動きは察知されたものの、光精は時間稼ぎにもならずに一瞬でその吐息により融解された。 #AoW3CoV pic.twitter.com/QF9rhActdh
2016-08-21 23:16:18亡者の竜とその眷属どもは悠々とオランティウスの領内へと入り込む。 「ヴァルムスンはいないが…」やるしかない。 ここでオランティウスを放棄するという選択肢はない。タイロバーは覚悟を決めると、兵を率いて打って出た! #AoW3CoV pic.twitter.com/KlhzKSLAgN
2016-08-21 23:45:31兵数はこちらが勝っているが、何しろ相手はアンデッドとはいえ竜。加えて"骨集め(ボーンコレクター)"と呼ばれる巨体の戦車めいた生き物に、すっかりおなじみの幽鬼が2部隊。実際のところ両軍の勢力は拮抗している。 #AoW3CoV pic.twitter.com/O0jgcGX08p
2016-08-22 00:24:03領内の農村部で行われたこの戦いの被害は大きかった。タイロバー指揮下のオランティウス弓兵隊、ドワーフ斧兵隊、弩兵隊の三部隊が傷つき倒れた。 だが彼が亡者相手に有利な戦祭祀(テオクラット)であったことが決め手だった。 #AoW3CoV pic.twitter.com/XuMzj803KG
2016-08-22 00:44:32幻影戦士たちが竜のオーラに恐怖して行動不能になり、残った斧兵隊が神官と共に踏みとどまる側面より、タイロバーの手から光の帯が幾本も撃ち込まれ… #AoW3CoV pic.twitter.com/I8ifLfsYYN
2016-08-22 01:01:26――ついに骨の竜は地響きと共に地面に崩れ落ちた。 言葉はなかった。タイロバーは、ただ生き残った斧兵たちと神官に、うなずいてみせた。それで十分だった。 #AoW3CoV pic.twitter.com/5vbZrUtVId
2016-08-22 01:11:45もはや亡者ども相手にこれまで以上にいっさいの容赦はせぬ。経験を基に、タイロバーは亡者祓いの能力をより高めることにした。 実際この先もこうした連中はウユルタのあちこちにいることだろう。修めておいて損はないわざだ。 #AoW3CoV pic.twitter.com/fayqUCU9YA
2016-08-22 01:33:25そして翌月。ロガーン・ドゥルの玉座の裏の祭壇に、石のようになって寝かされていたヴァルムスンの意識が戻った。 「みんな、すまない。心配をかけた。」 虚無界にいる間に起きた出来事は、夢を見るように全て知覚されていた。 #AoW3CoV pic.twitter.com/JSp800XRX0
2016-08-22 01:38:27虚無界から彼が帰還する時期はおおよそわかっていたため、タイロバーはヴァルムスンが目を覚ますとすぐに駆けつけた。 「いつか竜を倒すのも夢のひとつだったんだけど。きみに先を越されてしまったな。」 友の顔を見ると、開口一番にヴァルムスンはいたずらっぽくそう言った。 #AoW3CoV
2016-08-22 01:39:29タイロバーは一瞬目を丸くするが、 「次は寝過ごさないようにするんだな。あんた抜きでやるのはもうたくさんだ。」 とびきり不機嫌そうにそう返事をした。 玉座の間の外では、未だ赤々とした血のような月が空に輝いていた。 #AoW3CoV pic.twitter.com/B1cr0ibKrZ
2016-08-22 01:42:21第3章 赤く染まった月の下で 了