【ミリマスSS】まつりと朋花のガールズハント・プライド・アウト

冒頭には#1って書いてありますけど続かないです。プロットもなんもなしに書き始めたせいでどこまで続くか分からなかったのでとりあえず#1って置いておいただけなのです。 あ、あと、オリ設定てんこ盛りなのですよ。 拙作『灰かぶりの姫』が少し関連性ありかもしれない。http://togetter.com/li/889715
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創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

まつりのニューロンがスパークし、体感時間が鈍化する。「まつりは……」朋花がまつりを呼んでいる。「まつりは……」脳の奥底に埋もれていた古びたフィルムが網膜に投影される。「まつりは……」逃げ惑う人々を遥か見下ろしながら、まつりは笑っていた。「私……は……」記憶がまつりを拘束する 50

2016-09-21 23:19:48
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

男が瓦礫につまずいて転び、天網が頭上を掠め礼拝堂入口に衝突し雷を散らした。朋花が再び手を天井へ振り上げる。天網が飛び上がり天井を覆う。「へっ……」鼻血を拭いながら男は笑う。鼻血が鉄サックに付着する。「どうやらその能力は小回りが利かないみてぇだな」朋花は沈黙している。 51

2016-09-21 23:27:13
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「お前の弱点も分かった」「詭弁を」朋花は手を振り下ろす。天網が再び螺旋回転し男へ襲いかかる!男は一目散に駆け出した……まつりに向かって!まつりは身をすくめ動かない。「しまった」朋花は手を男から逸らす!同時に、男はまつりの首に腕を回す。天網は男の背後を突き抜け壁に衝突した! 52

2016-09-21 23:38:39
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

まつりは男のされるがままになっている。「……まつりさんから離れてください」朋花は穏やかな口調で男を諭す。男は怒りを露わにした。「『お願いします』が足りねぇだろうが!オラッ!」「ンンッ!ゴホッ!」男はまつりの腹を拳で殴った。まつりが呻き声を上げる。「やめてください!」 53

2016-09-21 23:48:45
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「聞こえねぇな!」「ンンッ!」男は再びまつりの腹を殴る!悪虐非道!「やめて……ください…………お願いします」朋花は手を下ろした。天網が散り散りになって消滅する。「それが人にものを頼む姿勢か。土下座しろ」男は下卑た笑みを浮かべる。「朋花ちゃん」まつりは朋花を目で静止する。 54

2016-09-21 23:59:09
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

朋花は奥歯を噛んだ。朋花は片膝を地面につけ、頭を下げる。それは欧式の、忠誠を誓う姿勢だ。「……何やってんだ、俺は土下座しろって言ったんだ」「これ以上は……騎士団への、子豚ちゃんたちへの、Pへの……裏切りになってしまいます」朋花はまつりを見た。「知るか」男は唾を吐き捨てた。 55

2016-09-22 00:42:21
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「まつりさん。なぜこの人に攻撃しないんですか」朋花はまつりを見据えたまま喋る。「人間には攻撃できないんですか?」「まつりは……以前、誓いを立てたのです。ヒトにはもう攻撃しない、と。傷つけない、と」「おい黙ってろ」男は鉄サックをまつりの頬に押し付けた。 56

2016-09-22 00:50:01
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「なるほどそれでは、これは裏切りですかまつりさん」朋花はやにわに腕を振り抜いた。まるで腰から剣を抜き敵を切り捨てるかのようなムーブだ。「何の真似だ」「袈裟斬りです」男の服の上に小さな光が走った。「ぐ……」朋花の手には、細長い鞭のようなエネルギー体が握られていた。「『天鞭』」 57

2016-09-22 01:08:34
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

男の肩口から服にかけて斜めに青白い雷が走る!「ぐ……あああああああっ!」男がよろめき、机に手をついた。解放されたまつりはその場にへたりと座り込む。男は鬼の形相だ。「こ……殺すッ」「こちらとしてもあまり暴力沙汰は好きじゃないんですよ?」朋花は男に手を向けた。天鞭が変形する。 58

2016-09-22 01:30:28
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「『天蓋』」天鞭は男の周りを飛びながら変形していく。六角形の籠状になったエネルギー体は、男を包むように閉じていく。「殺すッ」「あなたは天の星を見上げたことがありますか」朋花は手を捻りながら言う。「星は無数に存在しますが星にも命があります。生まれますし、死にます」「殺すッ」 59

2016-09-22 01:47:29
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「しかし星の生き死には人間の手でどうこうできるものではありません」「殺すッ」朋花は男を睨んだ。「あなたに私達は殺せない。『怒髪天』!」完全に男を囲った天蓋の至るところから内側に向かって槍状のエネルギー体が飛び出し、男を貫いた!男は悲鳴をあげることもできず痙攣して失神する。 60

2016-09-22 02:35:43
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

男は地面に倒れ込んだ。朋花はゴム手袋を取り外す。「……お怪我はありませんでしたか、まつりさん?」朋花はまつりに近寄り、座りこんでいるまつりに手を差し出す。「……ごめんなさい」「謝る必要なんてないんですよ」「でも、朋花ちゃんに膝まで付かせてしまったのです」まつりは俯いている。 61

2016-09-22 03:11:17
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「あれは膝に矢を受けてしまっただけです」まつりは顔を上げる。朋花は慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。「冗談です」「……ぜんっぜん面白くないのです」まつりは苦笑しながら朋花の手を取って立ち上がった。まつりは横目で男を見る。「この人はどう片付けるのです?」「運び屋を呼びます」 62

2016-09-22 03:19:48
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

朋花はスマホを取り出す。「そうですね~、この人は類人猿のような顔つきなので、ジャングルの奥地にでも行ってもらいましょう。ちょっとした旅行ですね。旅行費はこちら持ちなのでこの人にも喜んでいただけるはずです」言葉の端々に静かな怒りの火のゆらめきを感じる。 63

2016-09-22 03:31:49
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「……そういえば、礼拝の途中だったね、朋花ちゃん」まつりは思い出したように言う。「どうする?続ける?」「そうですね~……」朋花はまつりの唇に人差し指を添えた。「今日はもう帰りましょう」「でも……むうっ!?」朋花は人差し指を強く押し付ける。「帰りましょう」まつりは気圧される。 64

2016-09-22 05:43:55
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「まつりさんもお疲れのようですし」表から車が止まる音が聞こえた。この場所には滅多に人は来ない。運び屋《ウルフ》が到着したのだ。朋花は指を外す。まつりの唇から息が漏れる。「そうだね……なのです」まつりは自分の口調が乱れていたことに気づく。「どうやら疲れてるみたいなのです」 65

2016-09-22 05:56:48
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

礼拝堂の扉が開かれ、紳士然とした男が入ってきた。年齢は四十ほど、白シャツ黒スーツ黒ネクタイに白の手袋、額には皺が刻まれ貫禄を感じさせる。あごひげを含む髪全てが白髪と黒髪の中間のような色だ。「この人です」朋花が倒れている男を指差すと、ウルフは素早く男を担ぎ上げ扉から退出した。 66

2016-09-22 06:06:10
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「どうせならウルフさんの車に乗せてってもらうのもアリかもしれないのです。ここから家まで遠いし」「……その必要はないです」朋花はウルフに小さく手を振った。「一緒に歩いて帰りましょう、まつりさん」まつりは朋花の頬が少し赤くなっていることに気づかない。「なのです」まつりは笑った。 67

2016-09-22 06:12:31
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「朋花ちゃん、それともう一つ、訊きたいことがあるのです」まつりは、礼拝堂から出ようと歩き始めた朋花の背中に声をかける。朋花は歩きながら答える。「なんですか~?」まつりも朋花に付いて歩き出す。「もしかして、この場所で何かやらなきゃいけないことがあったんじゃないのですか?」 68

2016-09-22 06:21:06
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「私はまつりさんと一緒に神に祈りを捧げたかっただけですよ~?」「でも」まつりは、石碑の前で感じたことを思い出す。朋花の微笑みの裏に、黒い感情の蠕動を感じたことを。「……まつりさんはやっぱり鋭いですね」朋花は立ち止まった。「確かに私には第二の目的がありました」まつりも止まる。 69

2016-09-22 06:26:47
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「でもそれは……その目的は半分くらい達成されてるので、もういいんです」「ほ、いつの間に?」「とにかくいいんです」「その目的ってなんだったのです?」まつりは朋花の前に回り込む。「まつりさんには教えません」「気になるのですよ」「帰りましょう」「教えてほしいのです」「イヤです」 70

2016-09-22 06:37:54
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

朋花はまた歩きだした。「行きますよ、まつりさん」「ごまかそうとしても無駄なのですよ」まつりは朋花を追いかける。朋花の心の中には、先ほどの情景が蘇っていた。『天鞭』であの男を倒したときの情景……片膝をついて天鞭を振り抜いたとき、まつりは男に人質に取られていた。 71

2016-09-22 06:49:38
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「……私が膝を向けていたのは……」朋花は、言いかけて、やめた。自分の感情にまだ自信を持てないでいた。この感情は黒い感情だ、持ってはいけない感情だ、と、朋花は自分に言い聞かせた。「まつりさん」朋花は満面の笑みを浮かべる。「…………ずっと、私の『ライバル』でいてくださいね~?」 72

2016-10-18 03:16:56
創務丹/蝶乃雨冠(チョウノ ウカンムリ) @chou_tan_

「ありがたいお言葉なのです」まつりは少し茶化すように答えた。朋花は複雑な心境だった。礼拝堂を出る。まだ草は露に濡れていた。「それと、まつりさん。今日助けてあげたお礼に、どこかご飯へ行きませんか?もちろんおごっていただけますよね~?」「ほっ!?」二人は礼拝堂を後にする。 73

2016-10-18 03:21:49