古来日本における女性の地位について

勉強用セルフまとめ ※引き続きお勉強は続けるつもりですが、このまとめはここでいったん完結します。 その後読んだ本はこちら。 https://togetter.com/li/1144604
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⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

ところが9世紀初頭に嵯峨天皇が弘仁格式を制定した頃(820年)から、血の穢れ(血穢)を赤不浄と呼んで、死の穢れと同じように忌み嫌うようになった。そして927年に制定された『延喜式』では生理中、出産後、流産後などの女性が祭場に近づくことを禁じた。

2016-10-23 21:51:53
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

もっともこれはあくまで出血を嫌ったのであり、女性の人格までも浮上としたわけではない。ちなみに当時の女流歌人和泉式部は月経を不浄視することに反発していたという。 「世の中のちりにまじわる神なれば月のさわりはなにかくるしき」

2016-10-23 21:53:23

×:人格までも浮上とした
〇:人格までも不浄とした

⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

鎌倉新仏教の法然も日蓮も、仏教には血穢、死穢のような物忌みの観念はないと言っている。物忌みは神社神道や陰陽道が導入したものらしい。しかし日蓮も世の流れとして神社信仰の物忌みに妥協をする。

2016-10-23 21:56:28
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

著者が日本での女性不浄視を決定的にした契機として、『血盆経』を挙げている。これは中国の僧が10世紀以降に作ったもので、インド由来の経典でなく、いわゆる偽経である。これが14世紀頃に日本に持ち込まれ、日本式『女人血盆経』と改作され、さらに増えていった。

2016-10-23 21:59:10
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

これらの血盆経では、「女性は出血で大地を汚し、汚れた衣服を川で洗えば川を汚し、下流の人がこの水でお茶を煎じて深部に備えれば神仏を汚す。女はこのように罪深い存在であり、死してのちは血の池地獄に落ちる。しかし血盆経を信仰し日夜独唱するならば救われる」と説いた。

2016-10-23 22:01:18

×:深部に備えれば
〇:神仏に供えれば

「鬼灯の冷徹」で「女性は不浄として出産してもしなくても血の池地獄に堕ちる事になっていました」というようなセリフがあったそうです(現物は未確認です)。

⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

これを比丘尼などが「女人救済」の名目で説いて回ったので、女性を不浄視する思想が庶民の間に広く普及することになった、としている。

2016-10-23 22:02:09
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

なんというかこの ・怪しい海外情報に、 ・尾ひれをつけて、 ・不安をあおり、 ・言うことを聞けば助かると自説を吹聴して回る。 という近年よく見るアレのテンプレートが14世紀にすでに始まっていたのが驚きというか、妙に納得というか。

2016-10-23 22:03:54
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

このあたりの女性差別の根底に、「母の腹は借り物に過ぎない。子は父の種から生まれる」というヒンドゥー教の田地種子論、中国伝統の生命観があると著者は見ている。これを日本の統治者、特に徳川幕府が封建体制護持のために取り入れ、いよいよ女性差別、女性蔑視は強化される。

2016-10-23 22:09:05
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

とりあえず公的機関による女性差別、特に女性蔑視に関する記述としてはおおむね以上の通りです。本書は歴史的な部分を中心にしているので、現代の男女差別の構造はまた別というか、もっと複雑になっていると思われます。

2016-10-23 22:13:48
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

かつての女性崇拝時代のように女性の地位を向上させるというのは、自然科学が生殖の構造を明らかにしてしまった以上、なかなか難しい。生殖は女性一人の仕事ではないのだから、男女は同等である。それでも現状は女性が妊娠し出産をするから、その点で何らかの優位性はあるかもしれない。

2016-10-23 22:22:08
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

しかしさらに生殖技術が発達し、女性が妊娠、出産をせず、機械で胎児を育てられるようになったら、はたして生殖観はどうなるであろうか、というのが、生殖学者としての著者が鳴らす警鐘である。 過去も未来も「今の常識」で測るのは難しいし危険であるなあ、というのが私個人の素人感想でした。

2016-10-23 22:25:29

⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

さすらい姫考 日本古典からたどる女の漂泊 honto.jp/netstore/pd-bo… いま読んでる。先日読んだ本と照らし合わせるといろいろつながる。14世紀頃に女性の「価値」が下落していったこととか。こういう「知識の連鎖」が始まると勉強は面白くなるんだよなあ。

2016-10-24 21:10:11
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

物語において、いつから「お嫁入り」「男子を産む」が女性にとってのハッピーエンドになったのか。 たとえば「鉢かづき」は14世紀ころに成立した物語で、ちょうど母系社会から男系社会に移行するところだった。

2016-10-25 05:40:15
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

母系社会からはみ出して、新たに作り出した「イエ」に落ち着く。それをよしとした意識が、卵が先か鶏が先かという議論はあるにせよ、とにかく醸造されつつあった。

2016-10-25 05:43:43
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

.@Kz_K 藤原氏は一族の女を天皇の妻や母にすることで権威を維持したわけですから、実権は男性にあったとしても、摂関政治そのものは女系の文化だという解釈もあるそうです。武家の時代になっても、公家は「母の生まれ」を重んじていたわけで、なるほどなあと感じた次第です。

2016-10-25 08:41:03
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

.@shakeeach @Kz_K おっしゃるとおりに女系文化の摂関政治が男系文化の院政に変化していく過渡期が平安末期から鎌倉時代なのだそうです。

2016-10-25 08:54:16
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

@Kz_K 「鉢かづき」の両親は一人娘の誕生を喜び、また「しんとく丸」や「小栗判官」でも子供ができなかった両親が世継ぎとして「男子でも女子でも」と願掛けをしていて、つまり女子でも家を継げた時代があるのです。それがどこで男系社会になったのかなというのが気になるところです。

2016-10-25 09:09:51
⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

@Kz_K 面白いのは、「鉢かづき」において、鉢かづきの両親は女子の誕生を喜んでいるのですが、鉢かづき自信は宰相に嫁入りし、男子を生んだことでハッピーエンドになってるわけで、価値観の変化が現れているのでは、という研究者もいるそうです。

2016-10-25 09:12:10

⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

「レイプされた女性がレイプ犯に恋をする話です」 「エロマンガか! 男の妄想!」 「その世界では超有名で、根強い人気を誇ります」 「そんなのだから性犯罪が増える! 規制すべき!」 「源氏物語です」 「……」 「作者は女性です」 「……」 とかいういつもの展開。

2016-10-26 22:45:51

※後日注
このツイートにかなりの反響があって、自分でも驚いているところです。
多少は受け狙いの気持ちはありましたが、ここで表現したかったのは、現代の感覚と当時の感覚に共通するところはあるが違うところもあり、現在の感覚をそのまま当時の人々に当てはめるのは、正しい理解とは言えないのでは、という感覚でした。
結果的にバズッてくれたおかげでこの一連のツイートに目を留めて頂けたわけで、リツイートなどしてくれた皆様に御礼申し上げる次第です。

ちなみにここでは浮舟を想定しており、その相手は匂宮であります。玉鬘に対する黒髭も該当するかもしれません。
ともあれ源氏物語はそれだけでかなりの愛好者、研究者がいらっしゃいますので、詳細はそちらにお任せするとして、ここではあくまで当時の女性の地位に関する資料として参照しております。

⚡波島想太🐈 @ele_cat_namy

『さすらい姫考―日本古典からたどる女の漂泊』 booklog.jp/users/electric… この本で紹介されてる源氏物語の二人の女性(玉鬘と浮舟)、どちらもある意味NTR展開なのですよね。 だから何だってことでもないですけど。

2016-10-26 22:48:13