米軍のアフガニスタン東部ナンガルハール県アチン郡における「イスラーム国ホラーサーン州」トンネル複合施設に対する「大規模爆風爆弾(MOAB)」による攻撃の分析・評価(速報)

※これは発生の翌日4月14日に書いた、取り敢えずのコメンタリーです。事実関係が明らかになるにつれて、変更が生じる可能性がありますのでご留意ください。
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Kenta Aoki @kenta_aoki

米軍によるアフガニスタン東部ナンガルハール県アチン郡への「大規模爆風爆弾(GBU-43/B, MOAB)による「イスラーム国ホラーサーン州」への攻撃について、「事実関係」は以下。8回に分けて述べます。(「コメンタリー」は「事実関係」に続きます。)

2017-04-14 13:53:11
Kenta Aoki @kenta_aoki

2017年4月13日午後7時32分(現地)、米軍がナンガルハール県アチン郡の「イスラーム国ホラーサーン州(以下、ISK)」トンネル複合施設を「大規模爆風爆弾(GBU-43/B、Massive Ordnance Air Blast)」で攻撃。C-130大型輸送機から投下。(1/8)

2017-04-14 13:55:09
Kenta Aoki @kenta_aoki

駐留米軍の声明によれば、攻撃は「アフガン国軍と米軍へのリスクを最小限に留めるよう設計」された。また、米国は、市民の犠牲を避けるため「あらゆる予防措置」を講じたとされる。(2/8)

2017-04-14 13:59:04
Kenta Aoki @kenta_aoki

これに対して、カルザイ前大統領は「猛烈に、また最も強い言葉」で非難するとツイッターで発言。米国の行動を、非人道的であり、祖国を新しい兵器の実験場にしようとするものだとして、アフガン国民に米国の攻撃を辞めさせるよう呼びかけた。(3/8)

2017-04-14 14:02:13
Kenta Aoki @kenta_aoki

アフガン大統領府は、今回の空爆は、アフガン国家治安部隊(ANSF)と米軍の取組みを支援するために行われたもので、ANSFと米軍の被害を最小限に留めるよう配慮された、とした。また、市民の犠牲を避けるため、予防装置を取ったとしてる(つまり、米がアフ側に事前通知していた)。(4/8)

2017-04-14 14:04:30
Kenta Aoki @kenta_aoki

MOABは、米国が保有する核兵器以外の兵器としては最大(世界最大はロシアのFOAB)。2003年にイラク戦争での使用を念頭に開発、目標の上空で炸裂し、強烈な爆風を引き起こす。実戦使用は史上初。重量10.25トン、全長9.14M、直径1M。2003年にフロリダで実験。(5/8)

2017-04-14 14:10:36
Kenta Aoki @kenta_aoki

アフガン人ジャーナリストによれば、爆撃後、近くの家の全ての窓が破壊。攻撃を受けた施設のある村はとても辺鄙なところにあり、電気が通じず、電話による通話も不安定。治安が悪くアクセスも悪い。住民の安否については不明。地元警察官は、まるで「最後の審判」の日が来たのかと思ったと。(6/8)

2017-04-14 14:15:27
Kenta Aoki @kenta_aoki

これに関連する出来事として、4月6日夜、米軍はシリアの空軍基地を巡航ミサイルで攻撃。(7/8)

2017-04-14 14:18:19
Kenta Aoki @kenta_aoki

4月9日、米兵1人が、アフガニスタンにおけるISK掃討作戦の最中に死亡。2014年末のISAF撤収以降では、初めての米兵の死亡となる。(但し、本件と今回の攻撃の相関関係は低いと考えられる。)(8/8、事実関係は以上)

2017-04-14 14:21:22
Kenta Aoki @kenta_aoki

米国のアフガニスタン空爆に関する、取り敢えずの「コメンタリー」は以下。9回に分けて述べる。

2017-04-14 14:29:21
Kenta Aoki @kenta_aoki

米・アフガン双方が認めていることから、米軍とANSFの間で事前の情報共有がされ、協力諜報(COLLINT)によって今回の攻撃がなされたものと考えられる。米軍は無人機や偵察衛星など優れた機材を持つが、人や場所の特定に至る情報はアフガン側からもたらされたと見るのが妥当。(1/9)

2017-04-14 14:33:51
Kenta Aoki @kenta_aoki

次に、米国の第一の目的は、ISKの撃滅にあると考えられる。ISKは、2015年1月26日、アドナーニーIS報道担当者(当時)が音声声明でISKの忠誠を受け入れて設置され、以降、アフガン国内、並びに、中央アジアなど周辺国の脅威になっていた。(2/9)

2017-04-14 14:36:37
Kenta Aoki @kenta_aoki

米国の目的のもう一つは、シリアへのミサイル攻撃の直後というタイミングから見て、鮮明な軍事・外交姿勢を当事者(及び対外的に)示すことにあったと考えられる。結果、ISKに対しては「ムチ」しかないことを示し、シリアに対しては「レッドラインを越えたら行動に出る」と示した。(3/9)

2017-04-14 14:39:18
Kenta Aoki @kenta_aoki

分析を困難にするのは米国の一貫しない姿勢。ISKは、アサド政権を支援する「第三国」とアフガンのシーア派住民を敵視しテロを起こしている(単純化すれば「ISK」は「アサド政権」の敵)。他方、シリアではアサド政権に対してミサイル攻撃を実行。単純に「敵の敵は味方」となってない。(4/9)

2017-04-14 14:48:47
Kenta Aoki @kenta_aoki

今後の影響として、無辜の市民に犠牲が出ていることが次第に明らかになれば、アフガン国民の反米感情の高まりが懸念される。ただ、ガニーが知っていたのなら、明白な「国家主権の侵害」とも言えない。ISKは、アフガン人にとっても異物なので、ISK掃討自体には反対ではないだろう。(5/9)

2017-04-14 14:53:50
Kenta Aoki @kenta_aoki

ISKによる治安上の脅威が減るかという論点、今回の攻撃がISKに壊滅的ダメージを与えたと判断することは慎重にすべき。テロ攻撃を実行する能力が削がれたのは事実なので、その点で「能力」面で効果はあったと考えられる。しかし、「意志」面では米国への敵意を増幅させただけと言える。(6/9)

2017-04-14 14:58:27
Kenta Aoki @kenta_aoki

ターリバーンは、現時点(4/14)で反応しておらず立場は不明。2015.6.16の公開書簡により、ターリバーンは、ISKと少なくとも指導部レベルでは反目姿勢を打ち出しているが、今回の超強力爆弾による攻撃と合わせてどう考えるか。(7/9)

2017-04-14 15:03:17
Kenta Aoki @kenta_aoki

2014年末駐留外国軍戦闘部隊撤収以降、アフガンでは米国の力が弱まり、代わりにロシア、中国、インドの影響力が増していた。ほっとくのだろうと甘く考えていたこれら地域大国にとっては、対アフガニスタン戦略の見直しを迫られることになるだろう。当然、パキスタン、イランも。(8/9)

2017-04-14 15:07:01
Kenta Aoki @kenta_aoki

今回の攻撃の怖いところは、トランプ大統領とその周辺には、アフガン人一人一人の「顔」が見えていないのだろう、ということ。今、何故、ナンガルハールでこれほどの超強力爆弾を、という疑問は未だ拭えない。一人の直情的な決断が世界に影響を与える恐ろしさを持たざるをえない。(9/9、了)

2017-04-14 15:12:41
Kenta Aoki @kenta_aoki

アチン郡空爆の件、ISK拠点の掃討のため、現場の軍事作戦上の理由から行われたと見る方が実態に近そうだ。報道によれば、ISK戦闘員数十人(36人とに発言も)が死亡、現場は掃討作戦でも攻略できなかった山腹にあるISK拠点だった由。これまでのところ、市民の犠牲者も出ていないようだ。

2017-04-15 02:41:17
Kenta Aoki @kenta_aoki

わかる限り、やはり米軍とANSFの間でよく調整が図られている。攻撃目標周辺から、事前注意によりANSFは退避しており、民間人にもそう呼びかけていた。また、爆弾投下後も、ANSFが直ぐにISKの残党がいないか掃討作戦に入っている。

2017-04-15 02:45:34

※これは発生の翌日4月14日に書いた、取り敢えずのコメンタリーです。事実関係が明らかになるにつれて、変更が生じる可能性がありますのでご留意ください。