編集部イチオシ

輸送機受注競争から生まれたベストセラー旅客機と、実際発注されたほうの輸送機のその後

(ライトな航空ファンがお話のサクサクしたおいしいとこを選んでいますのでご了承ください) 爆撃機ベースの旅客機の話はこちらhttps://togetter.com/li/1117810
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サキノハカ @sakino_haka

輸送機といったって軍用機ですから比較的ハードな運用も予想されますし、急上昇急旋回等をした場合、積んでいる荷物の重さよりもっと強い力が翼にかかります。そういうのを想定した強度テストで、ギャラクシーの主翼は壊れてしまいました。あちゃー。

2017-05-21 10:46:31
サキノハカ @sakino_haka

その後また改良して再度挑戦しますが、前回よりはマシだったもの、これも結局目標強度に届かず壊れてしまいました。なんかもうこの件は一旦諦めるしかなさそうですね。

2017-05-21 10:47:14
サキノハカ @sakino_haka

というわけで最初に作られた81機(これらは初期型ということでC-5Aと呼ばれています)は、目標としてた重さの80%しか積めないなんてことになってしまったのです。2割引。

2017-05-21 10:47:28
サキノハカ @sakino_haka

ギャラクシーの費用がかさんでしまった件は米国議会まで関わって調査され、また当時国防総省はコスト削減のためということでトータルパッケージ調達方式っていう新しい方法でこのギャラクシー輸送機を調達しようとしてたらしいんですが、完全に裏目に出ちゃってこの方式はもうやめることになりました。

2017-05-21 10:49:27
サキノハカ @sakino_haka

1970年にはロッキードの損失を政府も分担するよう公聴会が開かれましたが、その頃ロッキード社で同時進行していた民間旅客機のロッキードL-1011トライスターもまた開発費がかさんでいました。

2017-05-21 10:51:42
サキノハカ @sakino_haka

その上、積もうと思ってたエンジンのメーカー(ロールス・ロイス)が破産して生産されるかの見通しまで立たず、もしだめなら別なエンジン積むことも考えなきゃいけないし、そしたらまた設計変更も必要だし、もう同時進行で同社は赤字がずんずんふえるありさま。

2017-05-21 10:53:23
サキノハカ @sakino_haka

もうだめだー! ギャラクシーとトライスターめっちゃ売れてくれないとこの赤字挽回できない!! 退路がないから開発も続けるしかないー!!!(´;ω;`)

2017-05-21 10:54:32
サキノハカ @sakino_haka

この二重苦にいよいよどうしようもなくて、1971年にはロッキード社の生産がほぼストップしてしまいました。輸送機が納品されなかったらすごい困るので米国政府は融資することに。なかなかうまくいかないものですね。

2017-05-21 10:55:28
サキノハカ @sakino_haka

【また脱線】 ところでこの財政難と開発の遅れがのちのち例の各国巻き込んだ賄賂工作、通称ロッキード事件にも大きく関わったのでした。

2017-05-21 10:57:32
サキノハカ @sakino_haka

トライスターのデビューは他社ライバル機種に遅れを取ってしまい、また、しばらく旅客機の開発自体してなかったために、売り込みの販売網もライバルのボーイングやマクドネル・ダグラスに勝てなかったのです。軍用機を主軸としてたメーカーだけあって、安全性自体は高い機体だったらしいんですが…。 pic.twitter.com/e9dHCMdIAZ

2017-05-21 10:59:00
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サキノハカ @sakino_haka

>>もう賄賂配って買ってもらうしかない<< pic.twitter.com/AB9F98QL5y

2017-05-21 11:00:10
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サキノハカ @sakino_haka

それでなんだかんだあって中略、結局ロッキードは痛手を食って民間航空機事業から撤退、軍用機の方に専念することになったのでした。

2017-05-21 11:01:20
サキノハカ @sakino_haka

話を戻してギャラクシーはというと、その後補強改修で主翼及びエンジンをまるっと取り替えるなんていう力技を経て強度を増し、なんだかんだで81機じゃやっぱ足りなかったみたいで設計を改良した第二型(C-5B)新造50機の追加もあり、A・Bあわせて131機が作られました。

2017-05-21 11:03:15
サキノハカ @sakino_haka

ところでギャラクシーさん、輸送機でちからもちということでスペースシャトル輸送機としてスペースシャトルをおんぶで運ばせよう!という計画もあったそうなんですが、高翼機で翼邪魔でしょ?とかでこのお役目は747型に奪われちゃったのだとか。あーせっかくの見せ場がー。 pic.twitter.com/BIUkhNRVVt

2017-05-21 11:15:56
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サキノハカ @sakino_haka

しかしなんだかんだで、それからベトナム戦争や湾岸戦争などにおいてばんばん荷物運んでちゃんと活躍したんですよ。また当時開発中で機密だったステルス機、F-117ナイトホークのパーツ運搬であったり、その積載量を活かして自然災害に遭った地域の支援のため物資を運んだりもしたとか。 pic.twitter.com/0tK9b4qmxL

2017-05-21 11:17:08
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サキノハカ @sakino_haka

生産開始が1968年ということでだんだんふるくさくなったため、1998年からはコックピットや操縦システム、エンジンなんかをさらに総とっかえして近代化する計画が進んでおり、この改修を受けて若返った感じのギャラクシーはスーパーギャラクシーと呼ばれています。

2017-05-21 11:18:02
サキノハカ @sakino_haka

それから20年近く経ちますがいっぱいいるのでまだ予定数全部は済んでなくてまだ作業中。軍用機の寿命はけっこう長いので、スーパーになってまだまだお仕事することになりそうです。てってれー。 pic.twitter.com/Bg4qgOaToM

2017-05-21 11:19:23
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サキノハカ @sakino_haka

【蛇足1:747は輸送機顔】 747とギャラクシー、顔立ちは割とよく似ています。上の方にコックピットがついていてしもぶくれ。このかたちの意味ってなんなんでしょうか。 pic.twitter.com/sj2I4CXe40

2017-05-21 21:21:30
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サキノハカ @sakino_haka

これはアメリカじゃなくソ連の方で開発された超大型輸送機、An-124ルスラーンとAn-225ムリーヤです。やっぱり同じタイプの顔立ちですね。 pic.twitter.com/9f3IsyKk0h

2017-05-21 21:22:22
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サキノハカ @sakino_haka

ギャラクシーやルスラーンは輸送機ですから、例えば車両とかその他かなり重たい荷物を運ぶこともあるわけです。で、機体の不具合とか攻撃を受けたりとかで不時着しないといけなくなった時、ズザザーっと不時着すると慣性で荷物が前方にすっ飛ぶことも十分考えられるわけですね。 pic.twitter.com/PM0RH6gwSJ

2017-05-21 21:23:23
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サキノハカ @sakino_haka

その延長線上にコックピットがあったらパイロットさん達もろともペッシャァァンですよ。それはまずいってんで、少しでも危険を少なくするためこういう大型輸送機のコックピットは貨物スペースの一段上にあるんだとか。 pic.twitter.com/1GEjtNrtLM

2017-05-21 21:24:20
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サキノハカ @sakino_haka

で、747の顔もまた、この上部コックピットタイプ。先述の通り貨物機としても使いやすいようにコックピットは上側デッキのほうのままのこの輸送機風の配置が設計に残されたのでしょう。

2017-05-21 21:25:27
サキノハカ @sakino_haka

なお後世、最初から超大型「旅客機」として設計されたA380はというと二階建てのうち下部のほうにコックピットがあります。こちらはいかにも旅客機らしい顔といえます。 pic.twitter.com/i4lbLea8nE

2017-05-21 21:26:27
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サキノハカ @sakino_haka

【蛇足2:ジェット旅客機がだいたい低翼配置のわけ】 旅客機としての747の設計と、件のボーイング社の輸送機案の設計を比べて、一番違うのが翼の位置です。輸送機案の方はダグラス社の案や現ギャラクシーも胴体の上側に主翼がついていますが、747は下側です。

2017-05-21 21:27:27