不知火に落ち度はない５４（早霜）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『君の組織からこれが培養できるまでに10年かかった。やりなおしもできないから、君の皮膚は一生そのままだ』 『それなんだけどな。ドクター悪い。俺はこの火傷顔が気に入ってるんだ』 『僕の10年返してほしいなぁ。見ず知らずに与えていいものじゃないんだが』 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『それがないと救われない奴なんだ。全身総取り換えよろしく』 『理解はするが納得はしないね。君が正常に戻るチャンスを他人に与えるなんて』 『必要な相手にやったほうが俺はいい』 『わかった。じゃ、1か月後に』 『おう。じゃあ1か月後な』 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『で、君の入院はいつかな？金属片残ってるでしょ？』 『また今度でお願いします』 あいにく俺は忙しいのだし。 早霜には休む時間が必要だしな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ともかく頼むわ不知火。訓練時間は融通するつもりだしさ」 「融通できた試しもないのに、言うのはどうかと思いますが。そこまで頼みたいですか？」 「そこまで頼みたい」 睨んでくるがそこは本気で答えよう。 北上様はパスしてくだすったしな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ふう、と溜息を吐く不知火。 どうやら折れて下すったか。 「ひとまず条件付きで承ります」 「その条件とは？」 「福利厚生として、暇なときに月数回食事に連れて行くこと。その際他人を連れてこないことを要求します」 おう。そう来たか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

よく考えると相当ヤバい気もするが、前は良くそうしていたわけだし。 酒の出るところ以外なら、たぶん平気。おそらく平気。 では、よし決めた。 「承った。破棄の際は秘書艦放棄もやむなしとする」 「了解です。ではさしあたって本日、ここのご飯を要求します」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そのスマホの画面に映るは、最近できたばっかりの高級イタリアン様である。 お一人様では近づくな的お値段がびっしりとメニューに書かれとってもエレガント。 おのれ不知火。早速手痛い一撃を加えてくれる。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「わぁあった。好きなもん頼んで食え。ただし、酒は不許可で」 「それは司令の方でしょう。それでは無事時間内に向かえるよう、本日も励みましょう。まずは支援物資輸送からです」 「俺が運転するのな、トレーラー」 「何か文句でも？」 ないっす。ありません。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ちなみに当然物資の手配は終わってるんだろうな。行ったら空だったとか、あったら困るぜ」 「そんな落ち度などありません。とっくに手配済みです」 言い放つドーベルマン。すでに秘書艦モードに入ってる。 「実に優秀な副官っぷり、頼りになります不知火」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「当然です。不知火が秘書艦をやるのですから、一切の失敗はありません」 言いおる。こいつ鍛えられて図太さもずいぶんと上がったな。 「じゃ、今日からよろしく秘書艦殿」 「了解しました司令。これより不知火、秘書艦に復帰します」 車の中で俺達は敬礼を交わし。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして、俺たちは再度副官と司令官の立場へと戻ったのであった。 今日はそんな日。 いろいろあったが、とうとう秘書艦が不知火に戻った日であった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そんなこんなでおしまい。 長々おつきあいどもでした。 早霜と交代してから、結構時間が経ちましたがこのような形にもっていきました。 重たい話だけど、変ないきものというだけではなかったのでした。 今後の早霜の人生に幸あれ。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

一方、そのころの浜風。 「浜風。退屈だねー」 「そうですねー」 「交代で棒振ってるだけだもんねー。そうだ良いこと考えた」 「悪い話な気がするけど…何？」 「浜風が雨合羽を脱いで、セクシーに棒を振るとここらが大渋滞」 「ぶちますよ」 谷風と組んで棒振り。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

一方そのころの磯風。 「『緊急避難警報が発令されています。住民の方は早めに避難をお願いします』……こんな感じか、川内師匠」 「おっけーおっけー。すんごくよく通る声っていいね」 「この声が人のためとなるなら喜ばしい。続けるぞ！」 地味な英雄のお仕事。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

一方その頃の那珂ちゃん。 「浦風ちゃん、今のうちにリスト確認よろしくねっ☆」 「大変じゃねえ、那珂先輩。運び終わったら歌う気じゃろ？」 「もっちろん！ 避難中のみんなに那珂ちゃんの元気分けてあげるっ☆」 ライブやる気満々のトレイラー運転手那珂ちゃん。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

その頃の陽炎。 「ウノ！！ あたしの勝ちだからねー、黒潮今度おーごりっ」 「こゆときヒキ強いのあかんて陽炎ー。ところでスパッツどしたん？」 「干してるわよ今。今は代えのパンツだし」 「めずらし。どんなんどんなん？」 「こんなんこんなん」 ガールズトーク真っ最中。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「つーわけで龍田。お前の見事な揺さぶりに負けたけどなんかくれねえの？」 『あらー？ でも兵頭さんが勝手にやったことだものー？』 「そう言うと思った。つかあんなのよこしやがって、最悪かおまえ」 『うふふー。だって龍田の方だとどうしようもないんですもーん』 #落ちぬい #おまけ

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そっかそっか。お前じゃどうしようもないのか。ふーん？」 『あらー？ どうしたのー？ 急に自信満々ね、兵頭さーん？』 「おう。気分いいぜ？つまり俺は龍田に、少なくとも一つ返しきれないぐらいの恩を売れたってことだしな」 #落ちぬい #おまけ

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『あらー、気づかれちゃったー？ うふふ、そうなのよねー。ほんと困ったわー』 「おう、困れ困れ。どんな無茶でも聞いてもらえる権、俺握ってますし」 『どーんなえっちな要求されちゃうのかしらー？』 「さーてな。想像して楽しみに待っとけよ。そろそろ切るぞ」 #落ちぬい #おまけ

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

『兵頭さんー？』 「ん、何？」 『ありがとうねー』 「……おう。またな龍田」 『はーい、またねー』 #落ちぬい #おまけ

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

僕と同い年ぐらいなら、何をモチーフにしたかはお分かりだろうけど。 そいつは語らなくて大丈夫。おぞましさだけ理解してくれればそれでいい。 #落ちぬい