日経サイエンス2017年8月号の掲載記事「血液検査で放射線被曝を判別」をめぐって:原論文と無関係な内容を勝手に付け加えた論文紹介記事

論文紹介の記事(英語記事の和訳)を読んでおかしいと思ったので、紹介されている原論文を探し出して読み比べてみると、原論文に書いてないことを記事の筆者が付け足していることがわかりました。また元の英語記事の冒頭には論文の内容と無関係な浪江町の海岸部の津波被害地域の写真が掲載されています。 日経サイエンス2017年8月号の日本語記事(全文は雑誌の購読者でないと読めない) https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v14/n7/血液検査で放射線被曝を判別/86838 その原文になっていたScientific Americanの英文記事(無料) 続きを読む
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酋長仮免厨 @kazooooya

@parasite2006 場所はここでしょうね。 →浪江町, 福島県 - Google マップ : j.mp/2sotpaa pic.twitter.com/OLP5hVIaxZ

2017-07-05 12:54:05
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酋長仮免厨 @kazooooya

@parasite2006 因みに有料の写真をパクッてくるとは思えませんね。 (あとあと著作権で問題になるから) A lone tree sits on the tsunami scarred landscape, inside the... : j.mp/2tfMvlD

2017-07-05 17:53:18
nao @parasite2006

@kazooooya ありがとうございます。請戸漁港の近くでしたか。生徒と先生全員が西側の山に逃げて津波の被害を免れた請戸小学校(南の中浜にある)よりさらに海岸からの距離が近いのが、地図を見るとよくわかります。請戸漁港からは遠くに福島第一原発が見えることが知られていますね。

2017-07-05 22:21:50
nao @parasite2006

@kazooooya こちらのGetty Imageの写真gettyimages.co.jp/license/513973… には赤と白の煙突のようなものが2本写っていますが、Scientific Americanの写真はこのうち左側の煙突だけが写っているのが見比べるとわかります。(続く)

2017-07-05 22:27:37
nao @parasite2006

@kazooooya 撮影者Christopher Furlong氏は英国のニュース写真家でGetty Imagesで10年間働いてきたとのことinfocus.gettyimages.com/profile/chris-… Scientific AmericanはGetty Imagesにライセンス料払ったの?

2017-07-05 22:59:44
酋長仮免厨 @kazooooya

@parasite2006 Scientific American のその写真下に「Credit」が書かれてるので購入していると思いますよ。Getty Images ってグローバルに写真を提供する会社みたいですからね。 写真奥に見える煙突みないなのは、請戸漁港内に停泊しているクレーン船の昼間障害標識です。

2017-07-05 23:21:52
nao @parasite2006

@kazooooya 「写真奥に見える煙突みたいなのは、請戸漁港内に停泊しているクレーン船の昼間障害標識です。」なるほどそういうことでしたか。もっともあの木と家と漁港内のクレーン船の標識があの向きに見えるということは、撮影者は東北東を向いてカメラを構えたことになるわけか。

2017-07-05 23:40:32
酋長仮免厨 @kazooooya

@parasite2006 Scientific American の写真は2016年で、GoogleMapの最新は2015年ですから大型クレーン船が2016年の撮影時期に請戸漁港内にいたか不明ですけど、方角は北東くらいなか? 2013年のMap写真だと綺麗に剪定してたように見えますね。

2017-07-05 23:53:30

第3部

齊藤明紀 @a_saitoh

なるほど。「福島第一の作業員の被曝がこれくらい」というのは原著者ではなくScientificAmericanが追加した文なのですね。 twitter.com/parasite2006/s…

2017-07-05 09:51:41
nao @parasite2006

@a_saitoh Science Translational Medicineの原報stm.sciencemag.org/content/9/379/… には特に照射線量の選定根拠の説明はなく、要はScientific Americanの記事scientificamerican.com/article/detect… が問題

2017-07-05 01:26:31
nao @parasite2006

このScientific Americanの論文紹介記事scientificamerican.com/article/detect… の第2段落第3文は原報stm.sciencemag.org/content/9/379/… にない記述を筆者のサイエンスライターlinkedin.com/in/ann-griswol… が勝手に追加したもの

2017-07-05 23:55:36
nao @parasite2006

“The monkeys were given lethal doses of 5.8, 6.5 or 7.2 grays of whole-body radiation, similar to levels inhaled by Fukushima workers” (続く)

2017-07-05 23:59:26
nao @parasite2006

(続き)原報stm.sciencemag.org/content/9/379/… の方法の項によれば、麻酔したサルを照射用の箱の中に(座位で)入れて5.8, 6.5, または7.2Gyを(0.6 Gy/min=36 Gy/hというすごい線量率で)全身に外部照射していて、吸入被ばくには一切触れず(続く)

2017-07-06 00:52:03
nao @parasite2006

(続き)ちなみにヒトに医療目的で行われる全身の外部照射で最も線量が多く線量率が大きいのは骨髄移植の前処置(元からあった白血球を全滅させるために行う)で、2 Gy/20 min=6 Gy/hの照射を(前ツイートのサルの例の1/6の線量率)1日2回x3日間行う(続く)

2017-07-06 01:07:21
nao @parasite2006

(続き)twitter.com/parasite2006/s… 筆者が書いた「福島第一原発事故後収束作業に当たった放射線作業従事者の吸入被ばく線量(それも値がグレイ単位で1桁)」とはUNSCEARの2016年報告書unscear.org/docs/publicati… の段落番号89のつもりか?

2017-07-06 02:01:33

UNSCEAR 2016年報告書の段落番号89の記述は、英文と和文でそれぞれ次のようになっています。
The Committee’s independent assessments of the doses due to internal exposure for 12 workers (out of a total of 13) who had committed effective doses due to internal exposure higher than 100 mSv had confirmed that they had received absorbed doses to the thyroid due to inhalation of 131I in the range of 2 to 12 Gy.
内部被ばくによる預託実効線量が 100mSvを上回る 12 名(計 13 名の作業者の内) (引用者中:この12名は2012年10月末までに東京電力が線量データを報告した25,000名の放射線作業従事者の中で預託実効線量の値が最も大きかった13名のうちの12名で、ヨウ素131による預託実効線量と甲状腺吸収線量を個人別に評価した値が2013年報告書のTable D11とTable D12に掲載されています)の作業者を対象として、本委員会が独自に線量を評価した結果、131I の吸入による当該作業者の甲状腺吸収線量は 2Gy~12Gy であったことが確認された。

Scientific Americanの記事の筆者は、紹介した原論文の中でサルに対し全身照射された放射線量が5.8, 6.5または7.2 Gy(グレイ)で、UNSCEAR報告書の2 to 12 Gyという甲状腺吸収線量の値の範囲に収まるからという理由で、全身に対する照射線量甲状腺組織に限定的に集積したI-131の影響による組織吸収線量の違いを無視して比較を行い、“The monkeys were given lethal doses of 5.8, 6.5 or 7.2 grays of whole-body radiation, similar to levels inhaled by Fukushima workers”=「サルは致死量の5.8, 6.5または7.2グレイを全身照射され、その量は福島の放射線作業従事者の吸入被曝量と同程度であった」と書いたのだと考えられます。

nao @parasite2006

UNSCEAR 2016報告書unscear.org/docs/publicati… の段落番号89 ”absorbed doses to the thyroid due to inhalation of I131”。吸入後甲状腺に集積したI131による吸収線量で全身の実効線量ではない

2017-07-06 02:58:39
nao @parasite2006

UNSCEAR 2016報告書unscear.org/docs/publicati… の段落番号89は元来UNSCEAR 2013報告書unscear.org/docs/publicati… p.233にあるTable D12の内容をまとめたもので(続く)

2017-07-06 03:02:21
nao @parasite2006

(続く)Table D12の表題には “Assessed committed absorbed dose to the thyroid (in grays) for workers”=放射線作業従事者の甲状腺預託吸収線量の評価結果(単位グレイ)とあり、全身の実効線量ではない

2017-07-06 03:07:31
nao @parasite2006

たぶんScientific Americanの論文紹介記事scientificamerican.com/article/detect… の筆者は原報stm.sciencemag.org/content/9/379/… の全身照射線量とUNSCEARの2013年か2016年の報告書にあった甲状腺預託吸収線量を(単位が同じなので)(続

2017-07-06 03:15:40
nao @parasite2006

(続き)安易に比較したのだろうが、甲状腺預託吸収線量は甲状腺という全身と比べればはるかに小さな臓器に集積された放射性物質の影響だから、同量の放射性物質が全身に均等に分布した、または全身に放射線を照射した場合の影響(単位質量の組織が吸収したエネルギー)と比べると数字だけは大きくなる

2017-07-06 03:30:01
nao @parasite2006

いくら単位が同じで数字が近くても、全身に対する照射線量と吸入後に甲状腺に集積したI131による甲状腺の預託吸収線量の値を意味の違いを無視して比較するのはいただけない。引用部分twitter.com/parasite2006/s… の後半を見れば(続く)

2017-07-06 03:40:45

どうしても比較したければ、甲状腺の組織荷重係数を掛けて全身の実効線量に換算してから比較するのが筋です。甲状腺の組織荷重係数の値は、長く日本の国内法令に取り入れられてきたICRPの1990年勧告
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09040202/02.gif
によれば0.05、2012年3月以降日本国内の法令に取り入れらている最新版のICRP 2007年勧告
http://www.medicalview.co.jp/download/blue_yellow/2007ICRP.pdf
に従えば0.04です。

ちなみにUNSCEAR 2013年報告書
http://www.unscear.org/docs/publications/2013/UNSCEAR_2013_Report_Vol.I.pdf
のp.232にあるTable D11=I131の吸入による内部被曝の50年間の預託実効線量と次のp.233にあるTable D12=I131の吸入による内部被曝の預託甲状腺吸収線量の値を比較すると、後者は前者の20倍になっていることから、評価当時は組織荷重係数として0.05が使われていたことがわかります。

nao @parasite2006

(続き)筆者がこれが(全身ではなく)甲状腺に集積した放射性物質によることをコロッと忘れてしまっているように見える。twitter.com/parasite2006/s…

2017-07-06 03:41:43
nao @parasite2006

困ったことに、このScientific Americanの記事scientificamerican.com/article/detect… が和訳されて、日経サイエンスの2017年8月号nikkei-science.com/page/magazine/… に「血液検査で放射線被曝を判別」というタイトルで掲載されてしまったのだ。

2017-07-06 03:49:43