甲野善紀先生による剣道日本休刊関連ツイートについて

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甲野善紀 @shouseikan

現代剣道では竹刀の柄を左右の両手を離して持つ方法が「唯一無二の正しい持ち方」とされているようだが、幕末に長竹刀を使って遠くから相手を突く際に有利だということから一般化したような気配がある(元々両手を離して柄を持っていた流派もあるが少数だ)。

2018-01-20 17:37:31
甲野善紀 @shouseikan

例えば葛飾北斎の『北斎漫画』に描かれている剣術の稽古風景では描かれている全員が、鍔寄りに両手を寄せて竹刀を持っているし、江戸期に描かれた剣術の伝書、絵草子の類でも両手を寄せて刀柄を握っている絵が圧倒的に多い。

2018-01-20 17:37:58
甲野善紀 @shouseikan

幕末に近い頃、勝海舟も立ち合って驚嘆したという剣の名人として高名であった白井亨の「天真兵法」の伝書に出てくる絵などでは、両手を寄せるというより合わせるほど左右の手がくっついている。

2018-01-20 17:38:18
甲野善紀 @shouseikan

もちろん左右の手を離して使う場合もあったろうし、実際昔の絵でも左右の手を離して刀を持っている絵がないわけではないが、その数は少ない。手を離して刀を持つ時は、それに即した身体の使い方が必要である。

2018-01-20 17:38:40
甲野善紀 @shouseikan

そして、実際に私自身、2008年の5月31日に韓氏意拳の総帥である韓競辰老師から親しく剣術についてお話を伺ったことをキッカケに、それまで左右の手を離して刀柄を持っていた状態から寄せて持つようになった。

2018-01-20 17:38:58
甲野善紀 @shouseikan

そのお陰で2年後には、真剣(日本刀)を使って剣術の抜き技等を行なうと、竹刀を使うよりも迅速に変化させることが出来るようになった。こうなって初めて日本刀は、ただ丈夫でよく斬れるというだけではなく、変化して使う際、迅速に刀身が奔るように考えて造られていることがハッキリとわかった。

2018-01-20 17:39:16
甲野善紀 @shouseikan

また、現代剣道の足使いについても、私は甚だ疑問がある。現在、剣道の指導では前足後ろ足ともに踵を上げて立つ事が「正しい剣道」となっている。しかし、これでは一気に前に進む時、床を蹴って行くしかない。

2018-01-20 17:39:37
甲野善紀 @shouseikan

武術を多少なりとも稽古した者なら「床を蹴って進む」という事が禁忌であることは当然知っている。床を蹴る動きは蹴るための準備動作で、「居着き」が生じるし、蹴っている間も時間がかかる。

2018-01-20 17:40:03
甲野善紀 @shouseikan

したがって床を蹴って移動する習慣のある者は(まあほとんどすべての人達がそうだが)真っ向から刀を打ち込まれる時、これを躱すことが出来ない。頭や肩は避けられても、蹴っているため脚部は斬られる。

2018-01-20 17:40:22
甲野善紀 @shouseikan

このような身体の捌きは剣術、体術を問わず、かつての日本の武術では「あってはならない」動きの筈である。宮本武蔵もその著書で「足の踏みようは爪先を少し浮かして踵を強く踏め」と書いている。

2018-01-20 17:40:41
甲野善紀 @shouseikan

剣道は日本の伝統文化を受け継いでいるというが、現実には日本の武術の伝統である体捌きを無視していると言える。

2018-01-20 17:40:54
甲野善紀 @shouseikan

もちろん競技武道として勝負を競うものである以上、有効なものを取り入れることは全く構わない。ならば「正しい剣道」などというルール以外の枠をはめて、修行者を縛ることはおかしい。

2018-01-20 17:41:07
甲野善紀 @shouseikan

いま「横綱が『張り手』をするのは横綱の品格にふさわしくない」等といった意見に対して賛否両論いろいろと賑やかだが、これは確かに賛否両論出るだけの根拠がある。「横綱という最高位の者がそうした勝ちにこだわる手を使うな」というのは、それはそれで説得力もある。

2018-01-20 17:41:30
甲野善紀 @shouseikan

しかし、剣道の場合の竹刀の持ち方や立ち方は、そうした品格とは別のことだ(敢えて言えば、踵を浮かして隙あらば飛び込もうとする姿勢は、踵を落としている姿勢よりも品が上だとは言い難いだろう)

2018-01-20 17:41:51
甲野善紀 @shouseikan

ただ、まあそういうスタイルがやりやすい、動きやすいという人は、それでやればいいと思う。ただ無用な「正しい剣道」という言葉で、もっと古くから行なわれていたと思われる方法を否定してもらいたくない。

2018-01-20 17:42:11
甲野善紀 @shouseikan

なぜこんなことになってしまったかと言えば、それは現在の剣道の連盟を取り仕切っている人達が、自分の権威を守りたいからだろう。

2018-01-20 17:42:28
甲野善紀 @shouseikan

「一将功なりて万骨枯る」という言葉があるが、自分の権威を守ろうとして剣道界全体を沈滞させてしまっていることを認めようとしない当事者こそが剣道界の一番の問題である。

2018-01-20 17:42:43
甲野善紀 @shouseikan

もっと自由に先人の工夫を取り入れることや、個人の研究を認めていれば、剣道は本当にさまざまな人としての活動の基盤を作る武道として活きるのに、本当にもったいない事だと思う。

2018-01-20 17:43:01
甲野善紀 @shouseikan

私は以前から剣道関係者の方と公の場でこうした事について公開討論を行ないたいと『剣道日本』誌の編集者に何度も言ってきたのだが、それが実現しないまま『剣道日本』誌は出せない状態(いちおう休刊)になってしまったのである。

2018-01-20 17:43:15
みんみんぜみ @inuchochin

甲野先生の①「柄を持つ両手の手幅が広いのはおかしい」と②「足構えと後ろの踵を浮かせるのは日本の武術の伝統である体捌きを無視している」という二点がという件についてはいくつか疑問がある。 まず、①だけど、日本刀の柄は基本が八寸、木刀も八寸やそれ以下のものも多く、竹刀よりかなり短い。

2018-01-21 22:56:13
みんみんぜみ @inuchochin

真剣も木刀も柄の長さが竹刀より短いのでそもそもあまり両手の幅を広く持てないと思う。また、北斎漫画のような両手をぴったり付けている持ち方。各流派の絵伝書を見るとぴったりつけているものはそんなにないのでは?

2018-01-21 22:56:13
みんみんぜみ @inuchochin

②の足構えの件、これは以前も話題にしたけど、江戸後期から幕末にかけて活躍した、田宮流の窪田清音の構えが剣道的に後ろ脚の踵をうかせている。とすつと、窪田清音の田宮流は「日本武術の伝統である体捌き」を無視しているのだろうか。dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… pic.twitter.com/P5frGvEyF1

2018-01-21 22:56:14
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みんみんぜみ @inuchochin

剣道も柔道も日本古来の武術・武道の直系の子孫だと思いますし、それらの体捌きは技法はすくなくとも江戸時代に原型が出来ているものじゃないか、と思います。そもそも流派によって様々なのですから、「剣道のやり方が正しい剣の理」も「剣道は日本の武術の伝統を逸脱している」も間違いだと思う。

2018-01-21 23:02:24
卍蹴り @manjigeri

@inuchochin 甲野先生は実践者ではなく研究家ですから、その様に仰るのではないでしょうか。

2018-01-21 23:31:46
みんみんぜみ @inuchochin

@manjigeri 研究者ならもうちょっと慎重な発言をですね…w

2018-01-21 23:33:33