編集部イチオシ

量子力学ネタとSF(北野勇作先生ファン必見)

SFの量子力学ネタってどんな風に発生したんだっけという話をしていたら予想外に盛り上がったのでまとめておきました。
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北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

@aciddazeareback 当時、小説関係では「わけがわからん」という感想がほとんどで、初めてわかってくれてると私が感じたのは、あれをラジオドラマ化したのときなんの予備知識もなくそれを聞いてくれた高校生とか中学生だったのです。いわゆるSFファンとかではなかった。それは小説に関してもそうでした。

2018-06-05 07:45:25
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

断言できるのは、当時あれをSF関係のところに持っていっても出版されるなんてありえなくて、もちろんSF関係じゃなくてもありえなくて、つまりあれを出版するためには賞をとるしかなかった、ということ。そのへんはたぶん、ショートノベル塾塾長だった森下一仁さんにも同意していただけると思う。

2018-06-05 07:51:03
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

で、賞をとったから出ることになったあとも、世界が不確定ではわけがわからんのでひとつの世界に統一してくれ、で、それだとこの小説の意味がないんですけど、と言うと、それじゃ売れないよ、と言われて、まあ実際売れなかったわけです。文庫にもならなかったし、あの出版社から二冊目は出なかった。

2018-06-05 07:55:22
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

考えたら私は昔からそんなことばっかりやってるわけで、(『かめくん』もどこに持って行っても出せるはずがないから賞に出した)、だから今、電子書籍で勝手にやれるようになった、というのはすごく大きくて嬉しいことで、電子書籍がなかったら、復活したあの賞にまた出してるんだろうな。

2018-06-05 08:00:10
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

わからなくてもおもしろいように書けてると思うんですけど、とか言っても、わかってはくれなかったなあ。説明できないのにおもしろい、じゃなくて、小説の形でしか書けない説明できないことだからおもしろい、ということこそが小説のいちばんの武器だと思うのだが、まあわからんかなあ。

2018-06-05 08:13:48
ロードランナー様 @shinkai35

そういえば、量子SFは70年代くらいから海外の短編でぼちぼちでてきた感じだと山岸さんも言ってましたね。そもそも一般には知られていない理論だったのかな?

2018-06-05 08:08:04
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

@shinkai35 少なくとも、「シュレーディンガーの猫」なんて言葉は、そんなに知られてはなかったですよ。熱力学第二法則とか量子論(不確定性理論という言葉も同じくらい使われてた)は、ほとんどマニアックな短編の、というか、マイナーなアイデアでした。

2018-06-05 08:19:33
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

@shinkai35 それまではそんなものをどうやって使うのか、使うにしても「マックスウェルの悪魔」とか、そのくらいの物理SF的な使い方しかできなかった。それが、量子論というのをブラックボックスに使えばなんでもありになる、ということがわかって、よくわからないままみんな使いだした、という感じでしょう。

2018-06-05 08:33:07
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

これ書いてもいいと思うけど、応募する一年前くらいに、森下一仁さんにこんなの書いたんですと見せたら(当時だから手書きの原稿用紙を送った)、すごくおもしろいと思うけどこれを理解できる編集者が思いあたらない、と言われた。あの賞をとったとき、いちばん喜んでくれたのは森下さんでした。

2018-06-05 08:45:18
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

だから当時、そういうトレンドみたいなものがあったわけじゃないです。それは間違いないですよ。

2018-06-05 08:46:42
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

森下一仁のショートノベル塾に出した『手のひらの東京タワー』は、森下さんがすごく評価してくれた(もうあなたは送ってこなくていい、と言われた)ゴジラ量子SFですが、SFアドベンチャーには掲載されなかったし、それを書き直してSFマガジンのコンテストに出した短編も二次くらいで落ちたし。

2018-06-05 08:52:18
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

あ、ちなみにその『手のひらの東京タワー』は、SFマガジンから原稿依頼がきたときに、ほとんどそのまんましれっと出して掲載されました。だから、当時の編集者が理解できなかったというのもたぶん間違いないですよ。

2018-06-05 08:54:11
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

あの森下一仁がおもしろいと言ってくれた、というのはすごく大きな力になったし、それがなかったら書き続けてたかどうかわからないと思う。それは、森下一仁という作家の書く小説が私は大好きだったからです。

2018-06-05 09:05:43
ロードランナー様 @shinkai35

@yuusakukitano もともと量子論と関係なく平行世界SFはあったから、記憶がおぼろになってて量子論絡んでるのかそうでないのかよくわからなくなったりするんすよね。

2018-06-05 08:46:09
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

@shinkai35 パラレルワールドという概念は、量子論より前からあって、そういういわゆる「もしもの世界」をもっともらしく補強することだけに量子論をちょこっと使ってるだけのもありますね。やっぱり観測問題とかが絡んでくるのが量子SFでしょうね。

2018-06-05 09:18:50
やなひこ @yanahiko02

@shinkai35 @yuusakukitano パラレルワールドものと、タイムパラドックスの解決法としての時間軸の枝分かれが別々にあって、さらに量子力学の多世界解釈が加わって、ややこしいですよね。『ほしのこえ』の際にウラシマ効果と混同されたのを思い出します。

2018-06-05 21:45:57
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

@yanahiko02 @shinkai35 パラレルワールドを成立させるための多世界解釈を中心にすると確率状態からの収束が必要ない世界観になるから、観測問題に絡めて存在論みたいなのを扱った作品とはまた別のものになって、まあたしかにどちらも量子SFなんだろうけど、同じテーマとしてくくるのはちょっと無理がありますね。

2018-06-05 22:02:22
kemofure @kemohure

観測問題をメインに据えた量子SFだと、ダン・シモンズの「うつろな男」が海外では代表的かなと思うのですが、こちらもちょうど、アメリカで1992年に出版されていて、北野勇作先生の「昔、火星のあった場所」と同じ年に出ているんですよね。テーマ的にも通じるものがあって凄く面白いなと感じます。 twitter.com/yuusakukitano/…

2018-06-05 09:23:55
kemofure @kemohure

「うつろな男」の邦訳が出たのは96年でして、92年にダン・シモンズも北野勇作先生も、当然であったこともなく、相手の作品のことを知らずに、量子論と観測問題を題材にしたSFを書き上げた(勿論、内容や題材の取り扱い方は違います)というのが、偶発的な同時性が凄く面白い。

2018-06-05 09:27:59
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

「宇宙消失」も出てたけど、まだ訳されてなかったですね。一人称の記述は観測問題と絡めることができる、ということに気がついたときには、ノーベル賞もらえるんちゃうか、と思ったくらい興奮したのを憶えてます。いろんな発見とか発明は同時多発的に起こるんですね。それが同時代性なんでしょう。 twitter.com/kemohure/statu…

2018-06-05 09:34:22
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

だから今と違って「シュレーディンガーの猫」みたいなことを説明なしには使えなくて、それを小説的にどう処理するか、というのはかなり苦労した。というか、そこを小説としての読ませどころにしようとした、という記憶はある。

2018-06-05 09:39:04
kemofure @kemohure

@yuusakukitano イーガンの宇宙消失も初出が92年に出版でした。92年が海外でも日本でもキーポイントの年になっているのが同時代性を感じて凄く面白いです。

2018-06-05 09:38:01
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

@kemohure 短編だとありましたけど、長編で乗り切れるかどうか、というのはかなり大きな違いですからね。客観的な確固とした世界がある、というのはどうも疑わしくて、思ったよりずっとぐらぐらしてる、という社会的な認識みたいなものも影響してるんだろうと思います。その感覚にぴったりだったんでしょう。

2018-06-05 09:44:09
kemofure @kemohure

@yuusakukitano 北野勇作先生を始めとして90年代に量子論をテーマにしたSFが来て、江戸川乱歩の「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」を科学的に表現できる時代が来たんだと、凄く面白く読んだことを覚えております。

2018-06-05 09:48:13