【#バッテリー杉尾】よりぬきエピソードまとめ
- nukomura_c
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もちろん、野球に対する真摯な態度には当初から尊敬の念を抱いていた 甲子園のマウンドに立つ姿を見た瞬間から連なるその想いは今でも心の真ん中にある しかし、尾形への感情がそれだけではない事を、杉元ははっきりと自覚していた 布団に包まったままごろりと寝返りを打つ ぎしりとベッドが軋んだ
2018-11-03 17:57:41(いや、まあ、普通に考えれば、ただ単に不便だから鍵を渡しただけなんだろうけどさあ 尾形には恋の駆け引きなんて出来ないだろうし……) それは恐らく間違いのない事だった そもそも自分の事をべらべらと話す様な男でもなかったが、色恋沙汰に関して語っている姿を見た記憶は全くなかった
2018-11-03 18:26:15杉元は唇を噛んだ (きっと何の意味もないんだろうけどさーっ ちょっとは希望を持ちたいんだーっ) どすんばたんと音を立てながら左右に転がる ひとしきりそうした後、天井を見つめて溜息を吐いた 「……寝よ」 ぎゅっと目を瞑る しかし、眠りにつけたのはもう少し先の事だった ─────────
2018-11-03 18:50:36『予定が狂った 時間には間に合わねえから先に家に入ってろ』 そんなメールが尾形から杉元へと届いたのは、合鍵を貰ってから数度目の勉強会の日の事だった 珍しい事だと思いつつ出立し、尾形の住むマンションへと向かう 最早顔馴染みとなったコンシェルジュに会釈をして、エレベーターに乗り込んだ
2018-11-03 19:14:35鍵を解錠し、玄関に踏み入る 靴を脱いで廊下に上がり、何時もそうしている様にリビングに入った ぼすっと音を立ててソファに身を沈める テレビでも見ようとリモコンを取ろうとして、手を止めた 背凭れに背を預け、ぐるりと部屋を見回す 初めて部屋に通された時、殺風景だと驚いた事を思い出した
2018-11-03 19:35:13定期的に杉元が訪れる様になった関係で、その頃に比べれば多少は物が増えている だが、印象としては未だに殺風景のままだった けれども、生活感も何もなかったこの空間に、杉元は匂いを感じる様になっていた まるでそこに尾形がいるかの様なそれを感じ取る度に、杉元の心に深い安堵が湧いた
2018-11-03 20:26:21(あー……) 杉元は天井を仰いだ 目を閉じる 込み上げてくる感情にぎゅうと胸が締め付けられるのを感じて、胸元に手を当てた 「……やっぱ好きだなあ、尾形の事」 呟いた声が、尾形の匂いに満ちた空気に溶けて消える 杉元はがしがしと頭を掻いた すうと目を開く その時、玄関の扉が開く音がした
2018-11-03 20:49:22「悪い、遅くなった」 足早に廊下を渡ってきた尾形がリビングの扉から顔を出した 辺りを見回して、ん、と眉を寄せる 「なんだ、テレビも点けてねえのか」 「あ、いや、ちょっと考え事しちゃってさ」 杉元は誤魔化す様に笑ってみせた 身につけていた上着を脱ぎながら、尾形はふんと鼻を鳴らした
2018-11-03 21:14:21「どうせ碌でもねえ事を考えてたんだろう 戻ったらすぐに始めるからな、頭を起こしておけよ」 そう言い残して扉の向こうに消える その足音が寝室へと向かうのを聞きながら、杉元は深く溜息を吐いた ずるずるとソファに倒れこみ、両手で顔を覆う (前途多難だなあ……分かってる事だけど……)
2018-11-03 21:32:43勝ち目は、今は欠片すら見えない それでも、今更この感情を消し去る事など出来る筈がなかった それもまた分かっている事だ ならば── 杉元は身体を起こし、ソファに座り直した (頑張らないと、ね) ぱん、と両頬を叩く そして顔を上げ、寝室から足音が戻ってくるのを静かに待った おしまい
2018-11-03 22:13:12付き合い始め編
#バッテリー杉尾 付き合い始めネタ 何時もの様に尾形の家でリードの勉強会した後TV見ながらダラダラしてたら居眠りした尾形 その姿を見ながら何となく投げ出されてる手を握る杉元 気付いたらちゅーしてて至近距離で宇宙猫顔してる尾形の顔があった 固まってる隙にあれこれ言い訳しながら去る杉元
2018-08-06 09:26:44ひとり残された部屋であまりに想定外の出来事に言葉を失う尾形 しかし胸に湧いていたのはよく分からない、少なくとも不快さはない感情だった それが何なのか把握出来ないまま3日くらい頭上に?マークを浮かべたまま過ごす ふと部屋に杉元が持ち帰り忘れた物を見つけた LINEで取りに来いと連絡する
2018-08-06 09:39:551日経っても既読がつかないので要らないのかと送信する すると少しだけ間を置いて○日○時に行きますと返ってきた 何時もスタンプと緩い文体で送ってくる杉元が敬語?と首を捻る 例の感情については幾ら考えても答えが出ないのでまるっと全部棚上げしていた なので杉元の心境に思い至れなかった
2018-08-06 20:28:00当日、躊躇いから連絡した時間より遅れて現れた杉元 出迎えた尾形はそれを不機嫌そうな顔で指摘しリビングに引っ込んだ LINEの文章含め余りにも普段と変わりない物腰 もしかしてキスしたのは夢の中の事だったんじゃ……と思い始める杉元 顔を出した尾形がとっとと上がれと言うので慌てて靴を脱いだ
2018-08-06 21:43:54リビングに踏み入る 尾形はメタルラックから例の忘れ物を手に取ると杉元に投げ渡した それを受け取って有難うなと頭を掻くとお前は只でさえ抜けてんのにあんだけ慌てて帰ったらそうなるだろうよと返された 頭上に?マークが浮かぶ杉元 あのキスをした日の帰りの事を指している様にしか思えなかった
2018-08-06 23:13:59勉強会をしてダラダラした後一緒に外出し夕飯を食べてから解散して帰る これが何時もの流れだった だから尾形を置いて慌てて帰ったなんてあの日以外にないし──そうなった理由とすれば、キスした事以外にないのだ 息を呑んで尾形の顔を見つめる けれどやっぱりそこには動揺の色も何も見られない
2018-08-07 00:26:38もしかしてキスされたのを無かった事にしたのか 尾形の性格を思えば有り得る話だと思った 杉元は思案した もしそうなら尾形はあれを拒否したという事になる ならもうこのまま触れず今まで通りの付き合い方をするのが良いのだろう そう納得しようとした が、そうしようとすると心の中がざわついた
2018-08-07 07:37:01こんな形で想いを終えたくない そう言っているかの様な胸のざわつきだった このまま何事もなかった様に振る舞う事にしたとしても、きっとこのざわつきは胸の奥に燻り続けるだろう そんなの絶対に辛い それならまだはっきりと尾形の口から引導を渡された方がマシだ──そう思って杉元は口を開いた
2018-08-07 13:39:07黙って自分を見つめてくる杉元 尾形が何だと問おうとした瞬間杉元が口を開いた あのキスは──ついうっかりしちゃったけど、決して悪ふざけとかではないんだ その言葉に胸中で棚上げしていたものを思い出す ああ、あれか そう呟いて顎を擦る 視線の先で杉元は頬を赤らめながら此方を見据えている
2018-08-07 19:20:30尾形の事が好きなんだ、俺 躊躇を振り切るかの様に強めの語気で言う杉元 そっちはあれを無かった事にしたいんだろうけど、俺もそうしようかと思ったけど、無理だった だから、尾形には申し訳ないけど、ちゃんと告白させてくれ そして断ってくれ それでもう……諦めるから そう言って唇を噛んだ
2018-08-07 19:50:15視線を床に落とし黙り込んだ杉元 尾形は前髪を掻いて溜息を吐いた 別に無かった事にしたつもりはねえよ 杉元が顔を上げた その顔を見つめながら続ける ただ判断に迷ったから保留にしただけだ 保留ゥ!? 食い気味に杉元が叫んだ 保留にして良いもんじゃないでしょ…… 頭を抱えてしゃがみ込む
2018-08-07 21:49:54杉元を見下ろす 少し躊躇ってから口を開いた 幾ら考えても分かんねえんだ、お前がした事に対して俺がどう感じたのか あれからそれをずっと考えてて、あまりにも考え過ぎて、……頭がそればっかりになっちまいそうで、だから一旦保留にするしかなかったんだよ 言い終えると再び杉元が顔を上げた
2018-08-08 16:56:29自分がどう感じたのか分からないとかそんなのあるのぉ……? その言い草と信じられないと言いたげな顔に内心イラッとしながら尾形が返す 俺だってそんなの初めてだ だからどうするべきか悩んだんじゃねえか それを聞いて、しゃがみ込んだまま杉元は首を捻った んーと声を漏らして何やら考えている
2018-08-08 17:52:51とりあえずさ、嫌だったって思ってる訳じゃないんだよね? 杉元にそう聞かれてひとつ頷いた もし不快に思っていたらこうして家に入れてねえだろ 杉元はそうだよなあと笑った それは唯一はっきりとしている事で、そして一番の疑問点だった じゃあさ、……これは? そう言うと杉元は立ち上がった
2018-08-08 19:49:21