なぜ生産性ショックによるインフレ(所謂スタグフレーション)は「許容」すべきなのか

↑ざっくり言えば、そうしないと債務不履行がマクロ的に続発して信用破綻→信用不況が発生してしまうからです。
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

現代貨幣には主に二種類あって、銀行融資によって創造され返済によって消滅する銀行貨幣と、政府支出によって創造され徴税によって消滅する政府・中央銀行貨幣(通貨)です。 まず、いつもの論点から。銀行融資による貨幣創造(信用創造)は、民間部門において金融純資産を形成しません。というのは、

2018-10-08 23:45:06
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

銀行貨幣の創造が、借主の借入債務と並行して生じるからです。MMT的にはこうした貨幣創造を「水平取引」というのですが、この水平取引では民間部門の金融純資産が創造されず、したがって、

2018-10-08 23:45:28
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

民間部門が全体で金融(純)貯蓄を形成したい場合は、垂直取引(民間と政府の取引)、要するに政府支出(財政赤字)によって民間金融純資産(政府金融純負債)を形成するしかないわけです。 ここまではいつもの話ですが、今回さらにフォーカスしたいのは水平取引の部分です。

2018-10-08 23:45:58
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

例えば、経済学では、貨幣はニュメレール財であって、貨幣が減少したとしても、物価がその分減少するだけで問題ない(仮に問題があるとしても、それは物価変動の遅れによって生じる問題であり、中長期的には完全に調整される)ということになっています。しかし、水平取引を鑑みるとそうとも言えない。

2018-10-08 23:47:52
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

民間の水平取引については、twitter.com/criticalmind_E…で解説したCT(貨幣循環理論)を参照してもらうと良いのですが、水平取引のサイクルが完結するには、借入によって創造した貨幣と、返済によって消滅させる貨幣が、最低でも一致していなければなりません(厳密には利子も必要です)。

2018-10-08 23:50:03
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

そこで例えば貯蓄性向の強化や、過剰な徴税による貨幣過剰回収が発生して、物価下落圧力がかかったとき、上記の信用-生産サイクル(水平取引)が完全に破たんすることになります。もちろん、個別個別のミクロのサイクルを見れば、借金して作った製品が売れないせいで破綻することもあるのですが、

2018-10-08 23:53:46
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ミクロレベルで破綻する話と、マクロレベルで全体的に水平取引の帳尻が合わない主体が続出するのはわけが違います。 この意味で、デフレやディスインフレが、生産に対してニュートラルなわけがないということは良く分かると思います。というのは、

2018-10-08 23:54:21
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

物価(及びインフレ率)の低下は、確実に信用-生産サイクル(水平取引)の履行に(悪)影響を及ぼすからです。 こうした考察は、例えば短期的生産ショックによるインフレの場合も役に立ちます。いわゆるスタグフレーションについてです。

2018-10-08 23:55:47
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

短期的生産ショックにおいては、実物生産量の低下から、当初の信用-生産サイクルで想定されていた価格では、サイクルの破綻を来してしまいます。ここで、マクロレベルでの広範な信用サイクル破綻を防ぐためには、生産性ショックの生じた財の応分の価格上昇を認めるのが最善ということになります。

2018-10-08 23:56:58
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

経済学者等には、インフレーションに対して機械的に利上げなどの総需要圧縮を推奨する向きも多いですが、上述したような生産ショック型インフレーションの場合は、応分のインフレを許容することによって信用サイクル破綻を防止しなければ、信用不況が発生してしまうことになるのです。

2018-10-09 00:05:21
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

経済学者の中でも、例えばジョセフ・スティグリッツは、「インフレーションターゲッティングの失敗」blog.goo.ne.jp/kkt_2008/e/d92…において、「海外要因のインフレに対して機会的に利上げすると却って不況になって困るので、海外要因のインフレは許容しろ」と提言しているわけですが、

2018-10-09 00:08:43
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

なぜそうすべきなのかという理由をMMT的側面から(=現代金融の構造を踏まえつつ)解説したのが上記の一連のツイートということになります。上記の場合は、海外要因のインフレだけでなく、もっと一般的な生産ショックも包摂した解説になっています。

2018-10-09 00:08:57
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

また、上記の話は短期的な生産性ショックによって顕示的にインフレが発生したときの話なのですが、長期停滞によって潜在的にインフレが「必要」になるケースでも応用することが出来ます。

2018-10-09 00:19:13
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

長期停滞、つまり長期的に成長低下が予想されると、不況回避のためにインフレが必要になるという話は、例えばtwitter.com/criticalmind_E…などで詳しく(かつ易しく)解説したのでそちらを読んでほしいのですが、その上で、そうしたインフレを許容することで、将来的な信用サイクル破綻を防げるわけです。

2018-10-09 00:20:11
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

最初に論じた「短期的生産性ショックにおけるインフレの『許容』」は、現行の信用サイクルの広範な破綻を防止しよう、という話だったのですが、「長期停滞における将来的なインフレの『許容』」は、将来の信用サイクルの広範な破綻を恐れて信用サイクル自体が始動しない状況を脱出しようという話です。

2018-10-09 00:21:40
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

尤も、twitter.com/criticalmind_E…で述べた通り、「信用創造の罠」によって、中央銀行が単独でインフレを作り出すことは出来ない(※インフレを『許容』することは出来るが)ため、結局財政政策によるジャンプスタートが必要です。 そもそも金融政策による総需要調節の不安定性の問題もあります。

2018-10-09 00:26:29