トルコ通貨危機、ジンバブエ・ベネズエラのハイパーインフレに関する考察

通俗的な経済分析や経済記事の粗雑なまとめを越えて。 ※そもそも何故途上国・新興国は外貨建て対外債務を積み上げるのかについての分析も追加しました。
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

今久々に書いているnoteの関係でトルコの2001年危機を調べているのだが、面白いのは、2001年での変動相場制以降→通貨暴落以降、むしろ経常収支赤字がものすごく増えているという。 ところが、それでトルコリラ安が進んだわけでもなく、当然高インフレになったりもしてない。 そのからくりは、

2018-12-02 16:30:30
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

トルコの急速な輸出成長。 構図としては、トルコリラが大きく切り下げられたことによって、対トルコ投資と、トルコからの輸出がパラレルに増加。 海外からの投資増加の分は、輸入超過してもトルコリラ安圧にはならない。なぜ輸入超過でも海外から投資されていたかというと、

2018-12-02 16:32:56
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

トルコの生産&輸出がさらに伸びると目されていたからだと思う。 しかし、世界同時金融危機以降、世界全体の貿易成長が停滞する中で、トルコもその煽りを受けているというのが現状。 以上、通貨安で経常収支赤字がむしろ増えた(しかも増えたことが問題にならなかった)パターンの紹介。

2018-12-02 16:34:45
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

以前トルコの通貨危機について書いたが、並行してジンバブエとベネズエラのハイパーインフレについても調査している。 おそらく、この二国のハイパーインフレで重要なのは、価格統制政策なのではないかと考えている。 twitter.com/motidukinoyoru…

2018-12-04 13:32:32
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ジンバブエも、ベネズエラも、インフレ亢進に対して価格統制政策を行い、それによって企業の採算が破綻して、生産体制が破壊されてしまうという経路を辿っている。 実はこれはMMT、というよりCTで凄く良く理解できる。 詳しくはtogetter.com/li/1274736やhttps://t.co/cvDjNIuQh0を読んでほしい。

2018-12-04 13:35:01
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

togetter.com/li/1274736やhttps://t.co/cvDjNIuQh0で解説した通り、生産ショックを通じたコストプッシュインフレに対して、機械的にインフレ抑制すると、生産企業の貨幣制生産サイクル(信用サイクル)が破綻して、不況が発生するという構造になっている。

2018-12-04 13:40:36
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

togetter.com/li/1274736やhttps://t.co/cvDjNIdfpsで意識していたのは、新興国のインフレ目標政策のような、コストプッシュインフレに対する機械的利上げのような政策で、そうした政策はおそらく、グラデュアルに破綻が進むから、不況という形を取るんだと思う。 ところが、

2018-12-04 13:42:13
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ベネズエラやジンバブエのように、価格統制政策みたいなラディカルな抑制策を取ると、生産破綻(企業の採算破綻)が急激かつ広範に発生して、ハイパーインフレみたいな形を取るのではなかろうか。 もちろん、ベネズエラもジンバブエも政府支出をキープor拡大したという背景もあるわけだけど。

2018-12-04 13:44:01
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

だから一般経済記事の「ベネズエラの失敗は社会主義によるもの」みたいな粗雑なまとめには違和感。 きちんと"価格統制による貨幣性生産サイクルの破綻"にフォーカスしないと、ハイパーインフレの「犯人」がぼやける。 まあ、敢えてぼやかして、経済自由主義礼賛に利用しているのかも知れないが......。

2018-12-04 15:05:11
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

このツイートスレッドで「価格統制政策やインフレ目標は、貨幣性生産サイクル(信用サイクル)を破綻させるから危険」という話をしたのだが、この話を敷衍すると、利上げ政策を通じた市中投融資金利の引き上げって実は悪手なのではないか? と思い始めた。 というのは、 twitter.com/motidukinoyoru…

2018-12-04 17:14:04
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

市中金利引き上げによって、企業が採算を取れず破綻していくのが経済上問題なのは当然である上、市中金利引き上げと企業の採算を両立しようとしたら、財政赤字等を通じて一層のインフレを起こすしかない。 となると、利上げ政策は、貨幣性生産サイクル破綻か、さらなるインフレ加速かの選択になる。

2018-12-04 17:18:37
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

話がネオフィッシャー派じみてきたが、案外、低金利になるような政策の方が、中長期的なインフレーションは抑制される、ということになるのだろうか? 実際、戦後日本は、決して低いとは言えないインフレ率の中で、低金利政策を行っていたわけだけど、あれがむしろ生産を安定化かつ成長させたかも。

2018-12-04 17:35:09
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

とはいえ、単に利下げすればするほどインフレが収まるかというと、そんなに単純な話ではないような気もするし、これはもう少しよく考えてみる。

2018-12-04 17:49:07
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

まあ金利の影響とは、かくも分かりにくいものなので、MMTerがecon101.jp/%e3%83%93%e3%8…や、あるいはecon101.jp/%e3%83%93%e3%8…などで、「政策金利は0に固定して、財政政策で経済調整をしろ」と言いたくなる気持ちも(別経路だが)分かる心地がするのである。

2018-12-04 20:17:42
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

昨今の財政破綻や通貨危機は、大体外貨建て債務、しかも多くは(政府ではなく)民間の外貨建て対外債務を発端に生じているのだが、そもそも何故途上国・新興国において外貨建て債務が選好されるのか、というメカニズムが興味深い。

2018-12-09 16:12:22
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

このページ crowdcredit.jp/blog/entry/301/ が要点を得ていて分かりやすいと思うのだが、要約すると以下の通り。 ・一般に途上国・新興国では、インフレ抑制のための利上げ政策が取られている。 ・しかし、民間の収益率はある程度一定なので、そうした利上げ政策は国内資金調達による収益率を下げる。

2018-12-09 16:14:44
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

・そこで、現地企業、特に現地金融機関は、金利の低い国(主に先進国)から資金調達して、収益率を引き上げようとする。おまけにこの取引自体は外貨売却-自国通貨購入なので、自国通貨価値(為替レート)をキープするように働き、外貨による資金調達に歯止めがかからない。 crowdcredit.jp/blog/entry/301/

2018-12-09 16:17:28
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

・いわゆるキャリートレードの場合は、ヘッジファンドなどが為替リスクを背負うわけだが、現地企業・現地金融機関が、いわば”セルフ”でキャリートレードを行う場合は、当然ながら為替リスクは現地企業が負うことになる。海外投資家としても、為替リスクは現地企業に押し付けたがる。

2018-12-09 16:19:35
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

こうして、インフレ退治のための利上げ政策が、現地企業による海外資金調達・外貨建て対外債務の積み上げを促して、国際決済上の不安定性と通貨危機リスクを増幅させるという、いささか以上に皮肉な結果を生んでいるわけである。

2018-12-09 16:22:13
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

こうした事態について、「いや、先進国の低金利政策が悪い!」と、ある種の責任転嫁のような話をする人々も後を絶たないのだが、先進国にしたって、インフレも何も起きていないのに、金利を引き上げる理由は無いだろう。 途上国・新興国の側から、外貨調達に歯止めをかけなくてはならない。

2018-12-09 16:26:16
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

中国のように外貨調達に厳しい規制を敷くというのは、外貨債務の過剰膨張を防ぐにあたって妥当な方策の一つかもしれない。 あるいは、戦後日本における金利規制のように(インフレ下でさえ)貸出金利を「抑制」するような政策は、国内での資金調達を促し、長期的には通貨安定に資したのかもしれない。

2018-12-09 16:31:52
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

この話を敷衍すると、「途上国の問題は貯蓄率の低さだ。貯蓄率が低いため、先進国の貯蓄を利用せざるを得ず、国際金融上の不安定性が生まれる」という議論も見直す必要があるかも? 外貨調達規制や金利"抑制"政策が、国内投資→貯蓄のサイクルを促すのであって、(続く) twitter.com/motidukinoyoru…

2018-12-10 19:58:39
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

(続き) 東アジア等の一部地域が(韓国などの例外もあるが)「高い貯蓄率」を結果として実現出来たのは、そしてそれ以外の新興国が外貨調達をやめられないのは、こうした国際資金調達規制や金利政策の違いによるものなのかも? 「金利抑制政策が却って国内貯蓄投資を促す」というのは反直観的で興味深い。

2018-12-10 19:59:05