asadori_Qly（@AsadoriQ）さんによる、『原発と放射線被ばくの科学と論理』（島園進 著）の紹介

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島薗進『原発と放射線被ばくの科学と倫理』（専修大学出版局）。第I部では科学者が信頼を失うべくして失った状況の整理から話を進め、目的先取りのリスコミと論点先取りの「放射線健康影響による」「不安」対策の問題を明快に指摘する。

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いささかの逸脱も含めて構造を示しておこう。第一に、東電福島第一原発事故には責任を負うべき人たちがいる。第二に、被害者は何重にもわたり権利の侵害を被った。(a) 被曝。(b) 避難や移住の決断を強いられたこと。(c-1) 避難生活の困難。(c-2) 居住し続けたときの困難。

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「リスコミ」は問いを「放射線健康影響への不安」に絞った。ここで「不安」を引き起こす要因から幾重にも重なる不当な権利侵害は問いから除外された。また、放射線健康影響を身体的影響に矮小化された。

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さらに身体的影響について「わからない」と「ない」を混同し、最新の知見を無視して、放射線健康影響をないものと非科学的に決めつけた。リスコミを定義するレベルでは以上の点は主題化さえされず、前提とされた。

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問題は放射線の影響だけででもそれがないことは「科学」が示しているのだから、不安は不安を持つ側の問題だというわけで（少し粗いけど）問題は自己責任とされる。リスコミが扱うのはそれだ、と。

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加害者を見えなくし多重の権利侵害を矮小化した上でそんなものはないのだから心配するお前が処置の対象だという非科学と非認識を背景にしたハラスメントへの加担を何とかそうでなく見せつつそれを前提に被害者を説得しようというのがいわゆる「リスコミ」の正体だった。

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過去の話ではない。避難者への支援打ち切りや汚染地域への帰還推進は現在進行中でこれからも続けられる。

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島薗氏の『原発と放射線被ばくの科学と倫理』はその意味で東電福島第一原発事故下のこれまでを整理し科学と倫理を理論と実践の間で考える参考になるだけでなく、私たち一人一人が何かするための手がかりとなる。