ストレイトロード:ルート140(40周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビが毎日お届けしている、掌編という名の習作。今回は1951~2000。 終盤のリクエスト回を除き、共通のテーマとして「金属・鉱物」を設定していました。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1975。延べ棒。 重さの差は大きい。

2019-02-16 18:44:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

見よう見まねで樹皮を削る藍の手つきが何とも危なっかしい。刃物の扱いについて本人は慣れていると言ったが、恐らく料理に限った話、しかも今のような持ち方は絶対にしない。「見て。それっぽくなってきたと思わない?」先程彼女が採ってきた枝が、その手の中で細く尖っていく。魔法の杖か箸のように。

2019-02-17 19:15:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1976。刃物。

2019-02-17 19:15:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

研究所に巨大な造形物が現れた。先日捕獲された怪物を等身大で再現した鋼鉄の模型だ。「全部ここで作ったって本当?」「専門の機材と職人を借りてな」強風に晒されたときの乱気流を再現する為、表面に微細な加工が必要だったらしい。「特別な細工ってどこ?」表面に触れようとした藍は即座に叱られた。

2019-02-18 19:43:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1977。微細。

2019-02-18 19:43:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「長年の相棒が壊れたのは惜しいが、まさか最後に大手柄とはな」これまで板をプレスし続けてきた装置が未知の怪物の首を挟んで止まったことを、工場の所有者はそう表現した。客観的に言えば事故だが、その瞬間は確かに戦いの幕切れだった。「痛そう」藍が呟く。加工前後の材料の見本を前に顔色が悪い。

2019-02-19 18:39:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1978。プレス。

2019-02-19 18:39:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

薬剤の色に染まったポスターを剥がし、壁に残っている接着剤をヘラで削ぎ落とす。かつて仕事として覚えた作業が今頃役に立つとは思わなかった。「破片の一つも残さないでよ」ヘラを早々に投げ出した藍が監視の目だけ厳しくしている。完全撤去にこだわるのは、あの深紅の女が出した広告だからだろうか。

2019-02-20 18:55:51
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1979。篦(へら)。

2019-02-20 18:55:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

墜落した怪物の体内から包丁が見つかったという。その個体の最期を見ていた藍は、情報提供のメールを読み上げてから端末を強く握りしめた。「直接の死因ではないんだって」「どこかで誤って呑み込んだのでしょうか」「食べ物ごと、ってこと?」飛ぶ前の行動を彼女は記憶から、私は記録映像から探した。

2019-02-21 18:40:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1980。包丁。

2019-02-21 18:40:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

仮眠から覚め、シートにかけてあった上着に袖を通したら、腕に待ち針が刺さった。見ると布の切れ端が貼り付いている。藍が肘辺りの擦りきれに気づき、私に内緒で繕おうとして途中で放置したらしい。助手席で眠っている彼女の膝に上着をかけ、工具箱を探した。接着剤で補修したら機嫌を損ねるだろうか。

2019-02-22 18:46:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1981。待ち針。 藍は視点が低いので、並んで歩くとゼファールの顔より服を多く見ることになる。

2019-02-22 18:46:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「淑女たるもの美的感覚には常に磨きをかけないと」磨き込まれた貴金属も作業台を照らすライトも眩しい。研磨された宝石に目を輝かせる藍を見ていると、何の為にここまで急ぎ足の旅をしてきたか忘れそうになる。「あなたも言ったでしょ、知識は武器だって」それは宿題を面倒がる藍を説得した時の話だ。

2019-02-23 19:03:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1982。磨き。

2019-02-23 19:03:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍のバッグを持ち去った少年を追って、閉鎖されたアーケードに行き着いた。入口に近づくと銀の雨が降り注いだ。「これ、ゲームのメダルね」数歩後ろにいて難を逃れた藍が足下に落ちた一枚を拾った。電力が途絶えた地域では役に立たないコインを、悪党たちはほとんど無尽蔵の弾として使っているようだ。

2019-02-24 19:03:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1983。無尽蔵。

2019-02-24 19:03:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

瓦礫の下から大量のトロフィーやメダルが見つかった。多くは原形を損ない鍍金も剥がれかけているが、複数の大会名を読み取れた。優秀なアスリートの家だったらしい。「金と銀!運がいい、高く売れる」「これの価値がわからない人には渡したくない」一緒に壁を撤去してきた作業員が藍の一言に激昂した。

2019-02-25 18:48:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1984。鍍金(めっき)。 人の心を覆う輝きは、メダルのそれより簡単に崩れる。

2019-02-25 18:48:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

昔に墜落した人工衛星が海岸に打ち上げられたと聞いた藍は予想通り興味を示した。だが駆けつけた頃には大部分が回収済で、地元の漁師が浜辺を漁っていた。「なかなかいい素材だったんだが」彼らは鋭利な部品を銛に加工していた。既に幾つかは魚と共に海中へ消えたらしい。「取らないから、それ見せて」

2019-02-26 18:46:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1985。銛(もり)。

2019-02-26 18:46:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ある谷底の村は採掘と冶金で細々と生き延びていた。地形を怪物が素通りした為か、世界の激変を最近ようやく知ったらしい。「確かに客は減ったが、ただの不景気だとばかり」地上の鉱石は掘り尽くされたと言われる時代、天然と掲げるだけで高く売れるのだろう。「せっかくだから買って」「予算ないです」

2019-02-27 18:52:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1986。冶金(やきん)。 鉱石から金属を取り出す技術のこと。

2019-02-27 18:52:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

そこは滅びた街の残骸が行き着く、ありふれた処分場だった。いつから屑鉄の下に怪物が潜んでいたかを知る者はきっといない。人々が積み上げた廃材と融合し、翼の代わりに得た無数の棘が、事故を装い人々を呑み込んでいた。藍がわずかな呼吸音を聞き逃していたら私達も不意討ちの一撃に屠られただろう。

2019-02-28 19:22:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1987。融合。

2019-02-28 19:22:10
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