ア㊙️イさんのお尻と学ぶ宗教改革(全5回)
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お尻さん的には経済成長に重要なのは制度変化だと思うのだ。ヴェーバーは「倫理」という価値に関するシステム/制度を重視したけど、政治制度や教育制度も重要なんじゃないかなと思うのだ。もちろん両者は相互排他的な訳では無いから、同時に正しい可能性も十分にあるのだ。 (13/14)
2019-05-14 22:38:59論文はここから読めるのだ。 cep.lse.ac.uk/pubs/download/… あと、宗教改革とヴェーバーに関連した最近の計量経済学/経済史の研究動向のレビューもついでに貼っておくのだ〜。 sciencedirect.com/science/articl… (14/14)
2019-05-14 22:41:15競争する教会:宗教改革と世俗化
宗教改革の「意図せざる帰結」はズバリ「世俗化の進展」だったのだ。今回は、宗教改革によって生じた世俗化を、エリート間の権力バランスの観点から考察し、当時の大学生と建築物のデータによって実証した研究を紹介するのだ。 (1/14) pic.twitter.com/Wvhy35uIjR
2019-06-21 23:08:34宗教改革以前のヨーロッパでは、統治に必要な「宗教的な正統性」を付与する権限は単一のキリスト教会によって独占されていたのだ。「カノッサの屈辱」に代表されるように、世俗の支配者は時にキリスト教会に依存しなければならなかったのだ。 (2/14) pic.twitter.com/p9GkzcsSSX
2019-06-21 23:09:40キリスト教は支配者から種々の特権(税や土地)を与えられ、その代わりに独占的に「宗教的正統性」を与えるという取引が行われていたのだ。じゃあ宗教改革によってキリスト教が分裂すると、その取引はどうなってしまったか?経済学的なアナロジーで考えてみるのだ。 (3/14)
2019-06-21 23:10:17宗教的正統性が取引される「市場」にプロテスタントという新たな勢力が参入することで独占市場は崩壊し、競争が発生するのだ。特にプロテスタントとカトリックの教義の違いに起因する「宗教的正統性の価格」が重要になるのだ。 (4/14) pic.twitter.com/kxM2386SxG
2019-06-21 23:10:43プロテスタントは洗礼と聖餐以外のサクラメント(儀式)を不要と考たりと、要は色々「お手頃価格で」宗教的正統性を供給できたのだ。世俗の支配者はカトリックとプロテスタントを選ぶことが出来る一方で、カトリックは競争相手の出現により「交渉力」が低下してしまったのだ。 (5/14) pic.twitter.com/yREA1uurYP
2019-06-21 23:11:09交渉力の低下を表す例として、例えば修道院は当時のカトリックの主要な資産だったんだけど、プロテスタントは修道院を閉鎖し、その富を他の社会保障(例:貧民救済)に使うべきと考えたのだ。そこで支配者はプロテスタントの支援を背景に修道院を閉鎖・没収していったのだ。 (6/14) pic.twitter.com/n4XhH1kS2R
2019-06-21 23:11:35ただ、修道院から得た全ての資産が社会保障に使われたかというと、そうではないのだ。プロテスタントの側もカトリックと同様、競争相手がいるから世俗の支配者に対して強い交渉力を持てなかったのだ。支配者は修道院の収奪から得た富を何に使うか?当然、自分の権力のためなのだ。 (7/14)
2019-06-21 23:12:221480年から1600年までに現在のドイツにあたる地域で新規に建設された建造物のデータを使った分析によると、宗教改革以後のプロテスタント地域では教会の建設は減る一方、非宗教施設(宮殿や軍事施設)の建設は増えていたことがわかったのだ。 (8/14) pic.twitter.com/bpeN48UhhR
2019-06-21 23:13:09このように、世俗の支配者はこれまで宗教に割いていた資源を自分の権力の強化と拡大の為に使うようになったのだ。さらに、権力を増大させた支配者はこうしたハコモノだけじゃなくて「ヒト」も必要とするようになるのだ。 (9/14)
2019-06-21 23:14:011480年から1550年にドイツの大学を卒業した3000人以上の個人レベルのデータを使った分析によると、プロテスタント地域の大学では、宗教改革以後、神学の学位を取得する学生が減る一方、法学や教養(Arts)の学位を取得する学生が増えていたことがわかったのだ。 (10/14) pic.twitter.com/gxAnDzi1nz
2019-06-21 23:14:39さらに、宗教改革以後のプロテスタント地域では、教会職を最初の職にする学生が減る一方で、より世俗的な職(例:法務官などの行政職)に就く学生が増えていたことがわかったのだ。 (11/14) pic.twitter.com/4rsxWSIWRG
2019-06-21 23:15:19これらの分析結果は、宗教改革以後、世俗の支配者は宮殿や軍事施設のような(自分の権力に直結する)行政施設により多くの資源を割くようになり、当時のエリート(大卒者)達も宗教に見切りを付けて世俗的な仕事により大きな価値を見出すようになった、ということを示唆しているのだ。 (12/14)
2019-06-21 23:16:16まとめると、キリスト教勢力は宗教改革という内部分裂に伴い交渉力が低下し、世俗の支配者が「統治の宗教的正統性」を安く買い叩けるようになった結果、支配者のみならずエリート社会も世俗的になっていった、というのがこの論文の主張なのだ。 (13/14)
2019-06-21 23:16:34今回の話は、 doi.org/10.1093/qje/qj… からなのだ。 そこまでバリバリに統計的に有意ではないように見えるけど、theme, arguments, dataが面白かったら良いジャーナルにちゃんと載るのかぁ…と思ったのだ。大学生のデータとか建築物のデータとか、ホントよく集めたのだ…。 (14/14)
2019-06-21 23:18:53宗教改革のダークサイド:プロテスタントとユダヤ人の迫害
金融(貸金)業を主な生業としてきたユダヤ人にとって、宗教改革はライバル(金融業を行うプロテスタント)の誕生を意味していたのだ。そのライバル関係がユダヤ人の迫害に影響を与えたことを数百年間のデータとテキスト解析によって明らかにした研究があるのだ。 (1/18) pic.twitter.com/Su56lyRejG
2019-06-22 20:31:48キリスト教が公的に聖職者の高利貸を禁じたのは325年のニカイア公会議で、カール大帝はそれを全ての臣民に拡張し、ラテラン公会議(第2,3回)で高利の徴収の禁止が再確認されたのだ。この高利の禁止を理論的に正当化したのがトマス・アクィナスのあの『神学大全』なのだ。 (2/18) pic.twitter.com/7DSTJGpDGU
2019-06-22 20:32:09とは言え、これは原則的にキリスト教徒だけが対象で、ユダヤ人による金融業は認められていたのだ。ユダヤ人は金融業を独占する一方で、それを必要とするキリスト教徒とは分業関係が成り立っていたのだ。ユダヤ人とキリスト教はお互いが事業のパートナーである補完的な関係だったと言えるのだ。 (3/18) pic.twitter.com/WD2KQvE2mW
2019-06-22 20:32:54この補完関係に変化を生じさせたのが宗教改革、つまりプロテスタントの誕生なのだ。利子をとることについてプロテスタントはカトリックほど厳格に禁じていたわけではないから、金融業を始めるプロテスタントが出現し始めるのだ。 (4/18) pic.twitter.com/vIgC3feSxm
2019-06-22 20:33:31金融業を始めたプロテスタントからすると、ユダヤ人は仕事の取り合いをする相手なのだ。自分の事業にとって邪魔者(しかもマイノリティ)がいたらどうすればいいのか?そう、排除しちゃった方が得なのだ! (5/18) pic.twitter.com/qQPfRhAfj8
2019-06-22 20:33:561300年から1700年までの現在のドイツにあたる地域にあった1300近い町村を対象にした統計分析の結果、宗教改革以後、カトリック地域と比較してプロテスタント地域ではポグロム(ユダヤ人迫害)がより多く発生していたことが明らかになったのだ。 (6/18)
2019-06-22 20:34:22さらに、プロテスタント地域の中でも、宗教改革以前に (1)貿易を主な生業としていた地域 (2)ユダヤ人が貸金業を行なっていた地域 で、宗教改革以後によりユダヤ人の迫害が起こっていたことがわかったのだ。 (7/18)
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