貨幣外生説と現実の信用経済の齟齬、及び貨幣と負債のグラデーション

あるいは、『マクロモデルは要翻訳』
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

貨幣外生説と現実の信用経済はかなり根本的なところですれ違っているところがある。 貨幣外生説は、まず貨幣が外生的に何らかの形で与えられて、それが媒介となって売買が貸借が生じると想定される。 ところが、 twitter.com/motidukinoyoru… で紹介したMCTの議論を見ればわかるように、それはむしろ逆。

2019-08-09 16:25:39
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

【無料note】Modern Monetary Theoryの概説(note版)|note(ノート) note.mu/motidukinoyoru… #経済 #経済学 #MMT #財政 #金融 MMTについて、6つのコンセプトをベースに概説した論文の紹介・解説noteです。 増補として、「MMTによくある批判とその反論」、「MMTで防がれる様々な誤謬」も掲載。

2019-08-05 17:49:43
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

何かしらの支出需要がまずあって、そこに信用が伴えば、信用創造が生じ、信用物としての貨幣が発行され、支出される、という順序。 そして、信用が解消されれば(※負債償還)、信用物である貨幣はその分消失する。 貨幣外生説では貨幣は財の一種と誤認されてしまい、上記のプロセスが理解不能となる。

2019-08-09 16:28:14
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

つまり、貨幣は有効需要・支出の増加の『結果』として増加してくる。 貨幣外生説はこのような信用経済の実態を無視し、貨幣それ自体が単体で増減するようなモデルを組もうとしてしまうので、 ameblo.jp/nakedcds/entry… で批判したように、政策について誤った含意をもたらすような事態が生じてしまう。

2019-08-09 16:32:36
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

また、有効需要・支出の増加で伸びるのは、負債全体であり、貨幣だけではないというところも難しいポイント。(この点でMCTはやや単純化され過ぎてもいる) どういうことかというと、実際に各主体が支出を行う際、貨幣を伴わない形での売買が行われることが少なくないから。

2019-08-09 16:34:01
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

具体的に言えば買掛、手形、未払費用などの負債発行で支出が行われる。現預金(いわゆるマネーサプライ)による決済は、相殺・差し引きで必要な分だけに限局して行われる。言わずもがな、融資・出資による現預金調達にはコスト(金利や配当)が生じるからである。

2019-08-09 16:40:02
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

経済が所謂”好況”となる場合、企業等の信用力がそれに応じて拡大する場合は、トリッキーなパターンとして、企業単体の負債の拡大余地が増加する関係で、現預金の信用創造の伸び以上に総需要が拡大するということもあり得る。 この場合、貨幣・マネーサプライだけを見ていても経済状況を把握できない。

2019-08-09 16:42:13
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

次に貨幣の”貯蓄者”側から見た場合も、”好況”であればある程、保有資産として、社債や株式を好むかもしれない。 その場合は、銀行から社債や株式を購入し、その分銀行預金が”償還”されることで、むしろ貨幣・マネーサプライが相対的に減るということすら起こる。

2019-08-09 16:44:08
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

裏を返せば、”不況”に転じ、貯蓄者が社債・株式を銀行へ売却して銀行預金を求めるようであれば、相対的に貨幣・マネーサプライが増加しているにも関わらず、むしろ総需要は減退していることになる。 貨幣は(債務ピラミッド上位とは言え)あくまで負債の一種として利用されているだけなことに要注意。

2019-08-09 16:46:32
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

要するに、貨幣の増減に応じて経済・有効需要が変動するという貨幣外生説的な考えがそもそも根本的に誤りであることは勿論のこと、貨幣の増減を通じて経済、有効需要の状況を見ようとするのにも色々と陥穽があると。 経済全体の負債状況がどうなっているかということの方がよほど大事。

2019-08-09 17:04:04
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

「貨幣だけを見ていても信用経済の全貌を掴めない」 「貨幣だけでなく、経済全体の負債を把握するのが大事」 というところを乗り越えると、次は 「そもそも貨幣とは何なのか」 「貨幣と他の負債はどう違うのか」 という疑問に辿り着かざるを得ない。

2019-08-10 09:09:24
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

貨幣を単に決済性のある負債とするなら、例えば金融機関CPや政府証券、あるいは大企業の支払手形のような比較的高い流動性のある負債はどういう扱いになるのか。 仮にPM派の主張するような信用創造廃止を施行した場合に、銀行が代替的な決済商品を"開発"したら、それは貨幣なのか、そうではないのか。

2019-08-10 09:13:46
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

上記のように考えると、貨幣は明らかな線引きのある概念ではなく、負債の中のグラデーションとして論じざるを得ないことが分かる。 いかなる負債も貨幣になり得、またいかなる貨幣も"貨幣以外の負債"と堕し得る。 貨幣か否か曖昧な負債も存在し得る。

2019-08-10 11:50:32
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

主流派マクロモデルでは、どうしても貨幣(ニュメレール財としての貨幣)と財の取引に信用が引っ付いているように捉えてしまう。 しかし実際には信用と生産が直接紐付いており、信用の一種、ヒエラルキーの上位として貨幣が機能している。主流派マクロモデルではそうした経済実態を理解し辛くなる。

2019-08-10 12:21:59
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

一応留保しておくと、主流派マクロモデルの分析と含意は、その内的整合性に基づき、何らかのヒントになる可能性はある。(実際、私は長期停滞モデルの分析と含意を積極的に利用している) とはいえ、現実の経済に利用する際には、実態との乖離を理解し、適切な"翻訳"を施す労力を要するのである。

2019-08-10 17:17:31