ぱすイカ二次創作④

ぱすかる❄ @pascal_syan

「え、えっと、ブキ、何がいいですかね……？」 「自由で構わん」 「……銀モデでいいですか？」 昨日のパブロ激振りの疲労が後を引いている。シューターで楽をしたいところ。 シグルイが手に取ったのは、ケルビン525ベッチュー。マニューバー種のブキだ。

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黒と白のボディが特徴的な、グルーガンを模したブキ。連射は遅いが、一発一発の火力がとても高く設定されている。スライドの飛距離が非常に長いが、前後の隙が大きい。塗りとインク効率もあまりよくないので、玄人向けの性能と言えよう。

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扱いづらいメインをより活かしやすいように、サブにはタンサンボムを、スペシャルにはインクアーマーを搭載。インクアーマーで自軍を守りタンサンボムでキルと塗りを両立させる。攻撃もサポートもこなせるようになっている。

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やっぱり、強い人ってそういうブキを選ぶもんだなあと、サキは思った。サキもこのブキを持ったことがあるが、塗りがあまりにもつらすぎてすぐに匙を投げた。タンサンボムをいっぱい投げるのは楽しかったけど。

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「やはりそれを選ぶか」 サキの銀モデを指して。 「一気にワァーッて塗れるのが楽しくて……金とか銅にはないんですよね、そういうの」 プロモデラーには二種のマイナーチェンジモデルがある。その話は後の機会に。 マッチングが完了した。運よく二人は同じチームになれたようだ。

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敵だったらどうしようかと。昨日の悪夢はもう御免だ。 並び立つ二人。 他のチームメイトは、絶句。 相手チームも、絶句。 そりゃあそうだ。レジェンドがいるんだもの、ビビる。例え味方であったとしてもだ。

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「気楽にな」 一言かけてくれたが、ますます緊張が高まるばかりだ。 「……だが、負けるなよ」 「は、はひっ……」 卒倒しそうなチームメイトに代わって、サキが返事をした。 「脅しが効きすぎたか」 「効きすぎですよッッッッ！！！」

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サキのツッコミのすぐあとに、試合開始の合図。今回のフィールドはモズク農園。室内栽培が主な、農業施設だ。フィールド自体はあまり広くない。高い壁や中央の高台で大きく分断されているが、いたるところに張り巡らされた金網の橋で、敵陣も自陣も自由に行き来することができる。

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自陣から敵陣へ乗り込んだり、敵陣から自陣へ乗り込んだり。金網の上から奇襲したり、逆に下から上へ奇襲したり。敵と対面する場面がとても多いため、普段よりもクリアリングや塗りを徹底しなければならない。対面が苦手なサキは、このフィールドも苦手だ。だが……

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今日はシグルイという、百人力……いや、千人力の味方がいるのだ。キルはたぶん、彼が担当してくれるだろう。塗って塗って塗りまくる。それが一番得意で、一番彼のためになるはず。要するに……普段通りでよさそうだ。

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「……行くぞ！」 リスポーン地点は、小高いタワーの上。フィールドに飛び降りていく構図だ。合図と共に、シグルイは床を蹴り、壁を飛び越えて中央エリアへ、……えっ？壁を？飛び越えて？ 「えっ？ちょっちょっ、ちょっちょっちょっ……！？」

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モズク農園の壁は、インクをぶつけても弾かれてしまう材質だ。イカ移動で乗り越えることはできない。従って、中央エリアへ行くには、左右へ迂回するか、金網の橋を通らなければならない。……ならないのだが、この男、蹴りの反動だけで、軽々と飛び越していってしまった！ 凄まじい脚力……！

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「マジかよ……」 チームメイトも同じ感想を抱いた模様。 「と、とりあえず、塗りながら合流で……」 「お、オッケー……」 他三人は、普通に真下へ飛び降りた。自陣を塗りあげながら、中央での合流を目指す。一番最初に着いたのは、サキだ。狭いからすぐ塗れるちゃう。

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中央は既に自陣の色、オレンジで染められていた。流石レジェンド・シグルイ。仕事が早い。だが、彼のブキは塗りが苦手な部類だ。あくまでも最低限といった形。それでも、中央の高台へすぐ登れるように、壁塗りはしっかりとしてあった。ありがたやと拝み倒しながら、床面の塗りを強化するサキ。

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次はどうしたものか。あらかた自陣は塗り終わったし、これ以上塗るとなると敵陣へ潜り込むことに…… 思案していると、右前方から射撃を音。敵が、金網を渡って中央へ攻め込んできた！相手はN-ZAP89。中射程シューターながら、高い機動力を持つ厄介な敵だ。

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赤いボディーを持つことから、愛称は「赤ザップ」。サキ的に、ザップはよく塗れる方なので好きだ。でも、相手にするのは大嫌いだ。素人から玄人まで幅広く愛されるブキなので、つまり……「普通に強いブキ」なのだ。

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相手は金網の上からインクを振り撒きながらやってくる。中央を塗り荒そうとする不届きものには罰を……与えたいが、生憎そこまでのウデマエはないので、片っ端から塗り返す。 それに、今日は頼もしすぎる天罰担当が味方にいるのだ。

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赤ザップが中央高台に乗り込むと同時、彼の足元になにかが放り込まれる。 「げっ……！」 正体を知り、すかさず高台から飛び降りた。高台の上から、破裂音が三回響く。ケルビンベッチューのサブウェポン、タンサンボムだ。

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タンサンボム。 名前の通り、炭酸ジュースのような性質を持つボムだ。振れば振るほど、投げ込んだあとの爆発の回数が増える。最大で三回。複数回爆発させる場合、爆発しながら転がるので、避ける場合は十分距離をとらなければならない。牽制にもいいし、不意を突くのにも適している。

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味方でこのタンサンボムを持っているのは、シグルイだけ。高台から降りてきた敵を、彼の射撃が狙い撃つ！ 「猪突猛進。悪いことではないが……」 迎え撃つ赤ザップ。だが、その足元をすかさずサキが塗りつぶす！ 「いささか無謀だったな！」 シグルイのスライド射撃。仕留めた！

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……かと思いきや。 「あたいの弟に、何しやがんだーーーっ！！」 金網の上から、二つ目の敵影。イカにも威勢の良さそうな女の子だ。手には、ラッパのような形をしたシューター。ラッパの縁が紫色だ。ボールドマーカー7だ！

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ボールドマーカー。抜群の連射力と精度を誇るシャープマーカーの射出口を、ラッパのような形に改造したことで、連射力はそのままに、弾を大きく飛び散らせ圧倒的な塗り力を得た。その代わり、射程も精度も全ブキワーストクラスへ転落した、非常にピーキーなブキである。

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精度が落ちてしまっているので、相手を狙い撃ちなど夢のまた夢。だが恵まれた塗り力と機動力で、あっという間に敵陣を塗り返したり、懐に潜り込んで銃口を「押しつける」こともできる。接近戦においての火力はピカイチだ。迂闊に近づかれないよう、射程差を活かして先手で撃破するのが安全。

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その恵まれた塗りパワーに、サキは何度もお世話になった。現在も、割と高い頻度であのブキを使う。しかもボールドマーカー7は、ボールドシリーズの中でも特に攻撃的なサブとスペシャルを備えている。放っておけば危険だ。

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その恵まれた塗りパワーで、窮地の赤ザップの足場を、一瞬で綺麗に塗り整えた。シグルイのスライド射撃を左へかわす。シグルイもそれに合わせて左へもう一度スライド。 ケルビンのスライドは隙が大きい。そこをボールド7が突いてしまうかもしれない。なんとかしてカバーしなければ。