ぱすイカ二次創作⑪

修行編は長すぎないようにしたい そんな思いです 書いたもの https://t.co/lk71qxBACg
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ぱすかる❄ @pascal_syan

まず、正面を、ひとつ倒す。隣にいたのに照準を合わせて、ふたつ。 左右からひとつずつやってくる。まずは右から。ぐるっと背後に回り込むようにステップを踏んで、バルーンのやや後方から、……三つ! あと一つ。あと一つ!今度は稲妻ではなく、右斜め前方へ、一文字を描くようにステップを踏む。

2019-09-15 08:28:14
ぱすかる❄ @pascal_syan

バルーンがそれを追いかける。それを確認してから、来た道を一気に引き返した。バルーンもそれに気づくが、引き返すまでには時間がかかる。 一瞬だけ背後を取った。今だ! サキのスーパーチャクチが、バルーンを踏み潰した。インクの爆風が、トレーニングルーム中に吹き荒れる。

2019-09-15 08:31:45
ぱすかる❄ @pascal_syan

風が止み、周囲を見渡すと……バルーンはひとつも残っていなかった。 「や、やった……!全部たおせたー!!」 万歳して、喜びを大いに表現する。シグルイの姿を探して、部屋を見渡したが…… あれ。 いない?どこだ? チャッ、と、後ろで音がした。後頭部になにかが突きつけられた。

2019-09-15 08:35:03
ぱすかる❄ @pascal_syan

「背後には常に気を張っておけ」 トリガーが引かれる。 「ぎゃっっっ……!」 サキは破裂した。リスポーン地点へと戻される。 「あ、あれ?」 ブキがどこにもない。いつの間にか回収されてしまったようだ。 シグルイが、また何か投げて寄越した。銀色に光るボディ。これには見覚えがある。

2019-09-15 08:41:13
ぱすかる❄ @pascal_syan

銀モデだ!手に馴染んだ感触が、サキにちょっとした自信をくれる。 「次は俺だ」 ラスボスが直々においでなさった。 「なかなか厳しいだろう?」 「……倒せる気、全然しません……」 「正直でよろしい。お前のウデマエでは、俺に数発当てることすら難しいだろうな」

2019-09-15 08:44:13
ぱすかる❄ @pascal_syan

シグルイの両手に、それぞれ黒と金のボディが握られている。スプラマニューバーコラボ。略してマニュコラ。 「お前の役目は囮だが、戦闘をしてはいけない……という決まりはない。余裕があるならば、対面して仕留めるか、その一歩手前まで追い込む。そういった動きも取り入れてもらいたい」

2019-09-15 09:10:22
ぱすかる❄ @pascal_syan

「ダメージを与えておけば、助けに来てくれる人たちも楽……ですもんね」 「そうだ。だが、生存第一であることは忘れるな。言わずとも伝わるだろうがな……日頃の『勤務態度』を見ている限りだと」 サーモンランの掟。生存第一。 それがサキのスタイルであり、原動力だ。

2019-09-15 09:30:21
ぱすかる❄ @pascal_syan

「俺たちが加勢に駆けつけたとき、囮からサポートへ切り替えることもあるだろう。その時のためにも、敵にインクを当てる技術が必要だ」 シグルイはサキの銀モデを指した 「まあ、それだと……正確に狙うのは至難の業か」

2019-09-15 09:39:47
ぱすかる❄ @pascal_syan

銀モデの大きな特徴、それは左右へ幅広く拡散するショットだ。狙いが正確でなくても、とりあえずは弾が当たる。しかし、一点に集中した攻撃はできない。ギリギリまで相手に近づけばできないこともないが、一発の威力がかなり低めなので、仕留める速度は、正直遅い。

2019-09-15 09:43:39
ぱすかる❄ @pascal_syan

拡散ショットのおかげで塗りは強いが、メイン単体だとキルが非常に狙いにくい。その代わり、どこにでも張りつくキューバンボムと、爆発的な塗り力を誇るカーリングボムピッチャーを備えている。 銀モデの銀は燻し銀の銀。誰が言ったか、そんな言葉がある。まさにその通りの性能だ。

2019-09-15 09:57:53
ぱすかる❄ @pascal_syan

サキ自身にも、燻し銀の活躍が求められている。自分で仕留められずとも、他の人が仕留めやすい環境を作り出せ。シグルイの言葉をまとめると、そうなる。 逃げ回るだけでなく、ある程度立ち向かえるようにならなければ。

2019-09-15 10:05:33
ぱすかる❄ @pascal_syan

「やれるところまで……やってみます!」 ブキを持つ手に力が入る。 「良い心がけだ。それでこそ……」 シグルイも構える。 「俺のチームメイトにふさわしい!」 戦いの火蓋が切られた。 両者の射撃が、嵐のように吹き荒れる!

2019-09-15 10:10:45
ぱすかる❄ @pascal_syan

一方、別のところでも、火蓋が切られていた。 「おはようございます」 「オハヨ、ゴザイマス」 「おはよ、のあとはちゃんと伸ばしてください」 「オ、オハヨー、ゴザイマス?」 「今度は区切らずに、流れるように発音してみましょう」 「オハヨーゴザイマス」 「それが基本です。そこから……」

2019-09-15 10:15:45
ぱすかる❄ @pascal_syan

シグルイ邸の一角、来客用の応接室で、オクトーとヨーコは対面していた。 「イントネーションを整えていきましょう。おはようございます」 「お、おはよ、ござます」 「いろいろ抜けてしまってます」 「オハヨウございます」 「前半のイントネーションが」 「おはようゴザイマス」 「後半が……」

2019-09-15 10:18:44
ぱすかる❄ @pascal_syan

「おはようござい、ます?」 「いい感じです。その調子」 「おはようございます」 「そう、それです。では、そちらの文章を読んでみてください」 「おはよう、ございます。今日モ、とても、オヒガラが、ヨクテ……ヨロシクテ……て……?」 「……なんでそうなるんだ……」 「ンンンン……」

2019-09-15 10:21:16
ぱすかる❄ @pascal_syan

ヨーコはヨーコで苦戦していた。イカ語って、簡単なようでいて、かなり難しい。サキたちは軽く聞き流してくれているが……やはり、ヨーコの言葉遣いはかなり特殊だ。良くも悪くも目立つ。少しでも矯正しなければ。オクトーも、ヨーコ自身も思っていた。そのための『特別講習』だ。

2019-09-15 10:30:47
ぱすかる❄ @pascal_syan

時々、主にサキに言われる。「標準語になってるよ」と。つまり、潜在的には、きちんとイカ語を理解してるはずなのだ。やればできる。やればできるんだ。そう信じて…… 「おはようございます。今日モお日柄が、よろし……イヨウ、デ?」 オクトーが、惜しい、という顔をした。あと一歩……!

2019-09-15 10:34:30
ぱすかる❄ @pascal_syan

そう、あと一歩。サキもまた、苦戦していた。正直なことを言うと、シグルイの攻撃をかわすので精一杯。なんとか隙を見つけて、射撃をお見舞いするが……銀モデの優秀な拡散ショットをしても、シグルイを捉えることができない。

2019-09-15 10:40:57
ぱすかる❄ @pascal_syan

相手がマニューバーだからだろうか。いや、違う。相手がシグルイだからだ。 「気づいているだろうが……」 サキの射撃を軽々と避けながら、彼は語りかける。余裕たっぷりだ。 「俺は一度もスライドを使っていない」 なんだって?じゃあ、さっきから転がるように避けているのは一体何?

2019-09-15 10:44:36
ぱすかる❄ @pascal_syan

「もはや回避するのにスライドはいらん。トドメを刺すときのためのものだな」 何言ってるんだこの人。スライドで相手の射撃をかわして、返り討ちにする。それが正しいマニューバーの使い方じゃないのか? 「常識に囚われることなかれ。ブキには様々な使い方がある。そこに正誤などありはしない」

2019-09-15 10:52:11
ぱすかる❄ @pascal_syan

よく見れば、シグルイはヒト形態とイカ形態をうまく織り交ぜながら、サキの攻撃をかわしている。スライドをしているように「見せかけて」いるのだ。 「スライドは、インクの消費が激しい。乱発すれば息切れが速い。すこしでも節約するために、誤魔化すことを覚えたわけだ」 普通そんな発想しません。

2019-09-15 10:54:43
ぱすかる❄ @pascal_syan

届かない。届きそうだけど、全然届かない。歯がゆい感覚が、サキを苦しめる。もっと早く動きたい。さっきのボールドだったら、あるいは。瞬間的な塗り能力は、あっちのほうが上だし…… スペシャルが貯まる。だが、今持っているのはカーリングボムピッチャー。対人戦には不向きだ。だが……

2019-09-15 10:58:59
ぱすかる❄ @pascal_syan

爆発的な塗りと、カーリングの反射をうまく使えば、自陣を取り返しつつ、シグルイを翻弄できるかも。 後ろへ下がり、距離をとる。ボムピッチャーを起動させ、投げる、投げる、投げる! 角度を不規則に変えることで、四方八方からカーリングが襲いかかる構図。いけるか!?

2019-09-15 11:03:40
ぱすかる❄ @pascal_syan

その程度で倒せるほど、シグルイは甘くない。当然だ。 カーリングを軽やかなステップでかわし、飛び越えて、カーリングの軌跡を塗り返す。そして、サキへ銃口を向ける。まずい!やられる! サキはカーリングのひとつを手にとって、構えた。小さな盾が、敵インクを弾いた。起爆する寸前に、ポイ捨て。

2019-09-15 11:09:46
ぱすかる❄ @pascal_syan

早速実践してやったのだ。常識に囚われない発想というやつ。ボムピッチャー中の無防備な身体は、ボムで防いでしまえばいい、と。 「いいぞ」 シグルイはにやりと笑う。 「その調子だ」 激しい撃ち合いが再開する。 ナワバリバトルなら、この時点で試合終了のホイッスルが鳴っていただろう。

2019-09-15 11:12:49
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