ぱすイカ二次創作⑪

ぱすかる❄ @pascal_syan

巨額の優勝賞金。豪華客船の旅。買い物永続割引パス。ギアパワーのかけらとスーパーサザエが各99個ももらえるのだ。しかもこれ、一人あたりの量だ。チームで山分けしなくてもいい。気前がいいってレベルじゃない豪華さだ！……しかし、気になるものがまだひとつ。 「サイキョーになれる権利」だ。

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「サイキョーになれる権利って、何なんでしょうね……？」 「俺も気になっていた。……見当もつかないな」 流石のシグルイさんでも、よくわからない様子。サイキョー。最強……なんだろう？ 「何を以て最強とするか、だが……」 「人によりけり、ですよね～……」

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ますます分からないが、でも、他の賞品がめちゃくちゃに豪華だ。きっと、サイキョーになる権利も、豪華な何かをプレゼントされたりする……のかも？ 二人で思考を巡らせていると、部屋の外から声がした。 「シグルイ様。お話し中、失礼いたします」 「構わん。用件は？」 襖が少し開く。使用人だ。

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「たった今、シグルイ様とチームの皆様宛に、お荷物が届きまして……」 チームに？一体何だろう。というか、 「誰からだ？」 「ゲンイチロウ様からです」 知らない名前だ。サキはシグルイのほうを見た。 げっ。まさに、そんな顔をしていた。こんな顔、初めて見た……。

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はあ、と、シグルイは割と大きな溜め息をついた。やれやれ、といった調子だ。 「オクトーとヨーコは？」 「お隣にいらっしゃいます」 「悪いが、呼んできてくれ。荷物もここに」 「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」 襖が閉まる。 えっ？オクトーとヨーコが、お隣にいるって？

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「サキ～！」 本当に隣にいたそうで、数分もしないうちに二人がやって来た。この家、応接室が二つもあるんだとか！ 「よ、ヨーコ！なんでここに！？」 「オクトーと、言葉のおべんきょ、してたのね。隣にいるの、気づかなかったよ～」 あれ。 おかしいなあ。 なんか、いつもと違くない？

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「……ヨーコ、喋り方変わった……？」 「変えたのね。いっぱい、教えてもらったのね！」 口調はあんまり変わらないが、発音のしかたが丸っきり違う！もはや別人レベルだ。昨日までとは大違い！ 「大変だったのね～……」 「ええ、本当に……」 オクトーはげっそりとしている。

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「短時間でここまで仕上げたのか。なかなかやるじゃないか」 「えへー、ほめほめされたね、よかったね」 ヨーコはオクトーの頭を撫でた。 「ちょ、撫でないでください……！ヨーコさん自身の才能もありますので……」 なでなでが止まらない。 「いい加減にしてくださいっ！」

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オクトーの顔が真っ赤だ。 「約束なのね。ワタシ、言葉、がんばった。オクトーも、タメ口頑張るのね！」 「あ……」 しまった、という顔。何かよくわからないけど、約束は守らなきゃだぞ！オクトーくん！ 「う、ど、努力します……いや、努力……する……」 ものすごくやりづらそうだ。

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無理もない。彼は最年少だ。それに育ちの良さが溢れ出している。そんな彼に、先輩に向かってタメ口を聞けだなんて、酷だろう。 「いやあ、でも、オクトーくんってやっぱり、敬語のイメージがあってさあ」 サキは助け船を出してやることにした。 「タメ口言うところ、想像できないなあ」

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彼の顔が、少しだけ明るくなった。やっぱり、敬語のほうがやりやすいのだろう。 「年上を敬いたいって気持ちもあるだろうし、オクトーくんが好きなように喋らせるのが一番じゃない？」 「それも、そうなのねー……」 やっぱりだめか、という顔のヨーコ。

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ヨーコは敬語を嫌う。もっとフランクに接してほしいとか。なんでも、「遠い遠い田舎」では、敬語ばかり使われる環境だったそうで、それを思い出してしまうらしい。 「とはいえ、ヨーコだってもっとこう……フランクに接してほしいんでしょ？だったらこう……堅すぎない敬語、とかどうかな？」

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「堅すぎない、ですか……？」 「ほら、敬語にもいろいろあるじゃん？やわらかいやつ……ほら、ですます口調だけで、あとは特に堅くないようなの。間とるとすると、そうなるんじゃない？」 「なるほど。その方向でやってみます」 「わかったのね～！」

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と、話がまとまったところで。 「失礼します。お荷物をお持ちいたしました」 使用人が戻ってきた。襖を大きく開いて、部屋のなかに荷物が運ばれた。少し薄くて、大きな段ボールが、四つほど。それぞれに、チームメンバーの名前が宛名として書いてあった。

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「これは……」 差出人の名前を見て、オクトーが呟く。 「ゲンイチロウ、知らないのね。どなた？」 ヨーコが首をかしげる。 「……俺の祖父だ。」 噂をすれば、なんとやら！ まさか、この人が、さっきの話に出ていた人だなんて。

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シグルイの祖父からの贈り物。 三人に、緊張が走った。シグルイだけならともかく、なぜ自分達にまで？一種のミステリーだ。 使用人が気を効かせてくれたのか、段ボールにはカッターの切れ目が入っていた。あとは開くだけになっている。 「……開けてみるか」 四人同時に開けてみる。中身は……

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「……桐箱？」 オクトーが呟く。 「このマーク、あれじゃない？アタリメイドのやつ！」 有名ギアブランドのひとつだ。桐箱の中央に、焼き印で刻印されている。 桐箱を開くと、そこには……

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「わあ～～っっっっ……！な、なにこれ？えっえっ？なに？」 「よく分からないのね！！ふ、ふく？おようふく？」 「いえ、これは……着物、でしょうか？」 「違う、違うわ、袴だ！袴ついてきてるよっっっ！」 「はか、ま……？」 「あっ……かわいい！超かわいくない！？」 「あ～！いいのね～っ！！」

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「気づいたのですが、皆さん、同じようなデザインでは？」 「ほんとなのね！こことか、こことか、同じなのね～」 「もしかしてさあ、みんなで着たら、お揃いコーデになるんじゃない？」 「着替えるのね！」 「ヨーコ！ストォォーップ！男子いる、男子ーーーーっ！！！」 「はわ！忘れてたのね！！！」

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「わ、わ、私たち、隣の部屋で着替えてきますね～っっ！」 サキはヨーコを連れて、和室を出た。 「……だ、そうです」 シグルイは溜め息をついた。 「爺さんめ。相談してから決めると言ったはずだが……」 どうやら、予定外の荷物らしい。

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「来たものは仕方ない。着てみようか」 「はい」 オクトーは袴を手に、しばし制止する。 「……どうした？」 「い、いえ……」 手がプルプルと震えている。 「お、お恥ずかしながら、このような類いの服は、……初めてでして……」

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無理もない。今時、和服を着る若者などほとんどいないだろう。 「手伝ってやろう」 「し、しかし……」 「いいから立て。お前のことだ、一度で覚えるだろうさ」 「……ありがとうございます……」

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一方、女子組。 ネットで袴の着方の動画を探して、それを参考に着替えていた。時折一時停止させて、試行錯誤を重ねる。 「ここが、こうでぇ、」 「右、左、たぶん、逆なのねー」 「あ、そっか！こう、……こうだっ！」 「はわ～！これ、ヒモ、何なのね～？？？」 「ほんとだ。なにこれ？？」

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なんとか着れたが、長い紐のようなものが一本、余ってしまった。 「なんかどっか抜かした？」 「ウウン、そんなことないのね。ひも、出てこなかったヨ？」 「だよね？だよねえ？？じゃあこれ、なに？？」 「わ、わかんないのね」 「シグルイさんあたりに聞いてみる……？」

ぱすかる❄ @pascal_syan

着替え終わったかどうか分からないので、もう少し待ってから声をかけてみることにした。 「それにしても、……すごくかわいいね、これ！ねっ！」 「ねーっ！」 袴は袴なのだが、袴をベースにした新しいスタイル、と言ったほうがいいだろう。