エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~5世代目・後編2~

シリーズ全体の目次はこちら https://togetter.com/li/1479531 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。
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前回の話

まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~5世代目・後編1~ シリーズ全体の目次はこちら https://togetter.com/li/1479531 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。 19644 pv 13 1 user

以下本編

帽子男 @alkali_acid

女人が島 女だけが暮らす男にとっては夢の島。 なにせこの物語はうはうはエロエロご都合ファンタジーなのでそういうものもある。 場所は秘密。誰でも行ける訳じゃない。 女人が島の住民に認められたものだけが女船で連れて行ってもらえるのだ。 「ほんは男は目隠しするのでありんすが」

2019-10-19 16:18:06
帽子男 @alkali_acid

女船の長、鳶は煙管(パイプ)をふかして笑う。 「主(ぬし)には意味のない話でありんす」 「そらそうや」 盲目の船長オズロウが、側で煙草のにおいをかぎつつにこやかに応じる。 二人は快船、旭あけ丸の甲板で風に髪をなぶらせながらのんびり会話する。船は外海の荒浪にも揺れない。妖精の魔法。

2019-10-19 16:23:13
帽子男 @alkali_acid

赤銅の肌の女海賊は煙の輪をさらに二つ三つ作ってから、暗い膚の船乗りに問う。 「それより、あのダボハゼの旦那を乗せていくつもりなんざんす?」 「ダボハゼはんが一緒に行く言うとるし」

2019-10-19 16:24:35
帽子男 @alkali_acid

旭あけ丸に便乗する男海賊ダボハゼは、かつて鳶一味のひとりの尻を触り、腕を切り落とされた遺恨がある。まさか仇の根城についていくとは思わなかったが。 「俺も行く」 と主張するのだ。なぜと聞いても、 「女どもに舐められてたまるか」 などとよく解らない主張をするばかり。

2019-10-19 16:26:08
帽子男 @alkali_acid

「潮目を選んででいかだに乗せてやってもよござんすのに」 さらりと鳶が言うのに、オズロウはけらけら笑う。 「ワテの船はいっぺん乗せたら、向こうが降りる言うまでは乗せるで」 「変わった船長さんでありんす」 「鳶のおねーはんこそ、なしてダボハゼはんの首落とさなかったん?」

2019-10-19 16:34:15
帽子男 @alkali_acid

今度は若者が問うと、年嵩の女は目を細める。 「どうしてでありんしょうね。あちきにも解りんせん。ただあの旦那さんを島に上がらせると、災いの種になりそうでありんす」 「ほならワテも連れてかんほうがええで。災いを呼ぶ吟遊詩人の孫や」 「オズロウは別でありんす」

2019-10-19 16:38:11
帽子男 @alkali_acid

女人が島は海流が迷路のように錯綜する一帯にある。 いくつかの群島から成るが、一番大きいのは島のぐるりを屏風岩が取り巻き、中に平らな土地がある。頑丈な岩の二か所に裂け目があり、そこから船が出入りする。 絶海の孤島だが樹木は豊かで、船材には事欠かない。

2019-10-19 16:41:43
帽子男 @alkali_acid

風の唸る音を聞き、乗員の一人である半妖精のロンドーから詳しいようすを聞いたオズロウはにまっとする。 「ちっこい影の国みたいや。真ん中に火の山あるんかな」 「あるとしても今は眠りについているようです」

2019-10-19 16:44:17
帽子男 @alkali_acid

島はまじで女ばかり。 ピチピチ若い船乗りや船大工ばかりではなく 年寄りから子供までいる。 「大人の中には島の外でつらい思いをして、男を怖がるものもありんす。あまり近づかないでおくんなし」 「ええで」

2019-10-19 16:47:05
帽子男 @alkali_acid

驚くべきは南寇の大湊や、妖精の船作りの港に並ぶ船渠が構えてあるところだ。そこをいっぱいに占拠するようにして黄金艦が入渠している。 間近で見るとでかいのでドワーフの船大工鉄船建てが歓声を上げる。ロンドーもつい人間が作った偉大な戦艦(いくさぶね)を仰ぎ見る。

2019-10-19 16:49:59
帽子男 @alkali_acid

海エルフのイテルナミはというと。 「海豚のにおいがする。無理だ。僕は海豚のなるたけいない島にいる。お前の船が島を出たらちゃんと合流する。だが海豚は無理だ。奴等がぐっすり寝ていた海豹に何をしたか知っているか?」 またどっか行ってしまった。

2019-10-19 16:52:10
帽子男 @alkali_acid

ダボハゼはきょろきょろしては失った腕についた鉤を撫でる。 「ふん。おかしな島だ…まるで西と南のもんがごっちゃだぜ」 「せやな。言葉もまじっとる」 オズロウが相槌を打つ。 「鳶のおねーはんは西のひとを嫌っとる風に言ってはったけど、島には西のひともぎょーさんおる」

2019-10-19 17:10:54
帽子男 @alkali_acid

西の白い肌や南の赤い肌どころではなく、遠南の黒い肌もちらほら。 大人は遠巻きだが、女児はうじゃうじゃ集まってきて、世話係らしき年嵩の少女が何人か叱りに来るが、やはり男を見物はしたいようだ。 「男の子はおらんの?」 「よそだ。ちびどもは皆大工と船乗りと海女の見習いでわざわざ来てる」

2019-10-19 17:17:40
帽子男 @alkali_acid

案内するのはつややかな闇色の肌をした娘、手斧使いのリキだ。 「ここは鳶一味の根城だぞ。村だか町だかと一緒にするな」 「ほなら男だけの島もあるんかいな…ええな…それ」 「知るか。まったく姐さなんもどうしてお前みたいなきてれつなやつを…」 「リキはん。よろしゅうな」

2019-10-19 17:20:41
帽子男 @alkali_acid

盲目の船長が声のした方へ微笑むと、遠南出身の女海賊はたじたじとなって逃げていく。かわって、ずっと先に行っていた鳶が戻ってくる。 「鳶一味はうぶな子が多うござんす。いじめないでおくんなし」 「ワテ仲良うしたいだけや」 「余計たちの悪いことでありんす」

2019-10-19 17:24:49
帽子男 @alkali_acid

とはいえオズロウ以外には、女海賊も皆もの慣れたようすで接する。 なにせ千の帆の都で、おせじにも品が良いとは言えない男海賊の群を向こうに胸を張って生きてきた連中だ。 頭目の帰還を待っての黄金艦引き上げ成功の酒盛りは、島をひっくり返すようなどんちゃん騒ぎとなる。

2019-10-19 17:27:25
帽子男 @alkali_acid

酔った荒くれ女達は互いに抱き合い、口づけをかわし、胸やら股やらまさぐってひとめも憚らずいちゃつき、昂ぶると二人三人と連れ立って暗がりに消えてゆく。 賓客の男に絡むのもいて、小人の船大工などは数人が囲んでいた。 「ごっつい腕」 「影の国の出なの?」 「ダボハゼの船鎧はあんたが?」

2019-10-19 17:30:04
帽子男 @alkali_acid

女の船大工だ。はじめは麦酒の椀を手に勢いよく答えていた鉄船建てだが、だんだん距離が詰まってきて、腕や肩に女の指が触れ、酒気混じりの吐息がかかるとしどろもどろになる。 「おい!オズロウなんとかしろよ!オズロウ?」 残念。そばにいない。 「俺はこういうのは苦手だ…」

2019-10-19 17:32:06
帽子男 @alkali_acid

「それぐらいにしておきなさい」 妖精の船大工シオノカガヨイが見かねて注意すると、だいぶきこしめた職人達もおとなしくひきさがる。荒くれも親方格の命令には素直に従うのだ。 「助かったぜ…」 「風の司がどこにいるか知りませんか」 「アキハヤテかい?あいつ、騒がしいのは嫌いだから…」

2019-10-19 17:34:52
帽子男 @alkali_acid

「いそうなところを教えて下さい」 「魔法で探せないのか?ああ、いや…そうだな。やっぱり木のあるところだろ。静かなさ」 「ありがとう。また何か困ったら私の名前を出してください」 「そうするぜ…」

2019-10-19 17:36:58
帽子男 @alkali_acid

ダボハゼのそばにはやたらむきむきの女海賊が二人ついて抜き身の蛮刀をちらつかせながら見下ろしている。 「あたしの尻を触ってごらんよダボハゼ」 「あたしのでもいい」 「…ち、誰が…」 男海賊はうらめしげに葡萄酒を啜る。 「残念。姐さんは、次にあんたがゲスなまねしたら首を刎ねていいって」

2019-10-19 17:40:07
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