ア㊙️イさんのお尻と学ぶドローン攻撃(更新中)

最近出版された軍事用ドローン(UAV/無人航空機)に関する英語の実証論文の中からいくつかピックアップしてまとめたのだ。大量に出版されている研究の中のごく一部でしかないから、今後追加する可能性があるのだ。 事実、法律、軍事的な知識に関する部分での誤りがあるかもしれないのだ。お尻さんはドローン研究の専門家ではないから、あまり鵜呑みにしないことをオススメするのだ!
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

まず、不満のメカニズムが正しいとしたら、爆撃で市民の犠牲が生じた後に反撃が観察され易いはずなのだ。でももし市民の犠牲→反撃という関係が観察されなければ、不満のメカニズムが正しいのかには疑問符がつくのだ。 (12/25)

2019-11-01 06:58:47
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

また、不満のメカニズムが正しければ、威嚇行動が行われたとしてもその後に反撃が増えることはあり得ないはずなのだ。でも評判のメカニズムが正しいとすると、武装勢力は威嚇であっても対抗措置として反撃を行う(威嚇→反撃)という関係が観察されるはずなのだ。 (13/25)

2019-11-01 06:58:47
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

話をまとめると、爆撃→反撃という関係が例え観察出来たとしても評判or不満どちらのメカニズムもあり得るから ・市民の犠牲→反撃(不満のメカニズム) ・威嚇行動→反撃(評判のメカニズム) も検証して白黒つけよう!という発想なのだ。 という事で実証なのだ! (14/25)

2019-11-01 06:58:48
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この研究では、機密解除された米軍の資料を基にアフガニスタンで実施されたアメリカ空軍による計2万回以上に及ぶ有人機・無人機による爆撃および威嚇行動が実施された日付(2004-2011年が対象)と地点(村落レベル)を特定しデータ化したのだ。 (15/25) pic.twitter.com/xdP5zU7qtq

2019-11-01 06:58:51
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

更に、複数のデータソースをもとに、爆撃により生じた市民の犠牲者数の推計を行ったのだ。また、衛星写真を使って市民の私有財産(家屋や農場)が爆撃地点に存在したか否かも特定したのだ(このデータは後で述べるマッチングで利用)。想像するのも恐ろしいぐらいの作業量なのだ…。 (16/25)

2019-11-01 06:58:51
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

また、「武装勢力による攻撃」としてISAF(国際治安支援部隊)に対して行われた攻撃の日付とその地点のデータを収集し、先の米軍機による攻撃・威嚇行動のデータと統合し統計分析を行ったのだ。 (17/25)

2019-11-01 06:58:52
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

分析で使われたのはマッチングの一種で、「空爆/威嚇が行われたか否か」という点以外は色々な条件(人口や軍事的な状況)が似通った村落のペアを作ったのだ。マッチングという意味では発想は以前紹介した「ヒトラーの演説の効果」で用いられたものとやや似ているのだ twitter.com/bot99795157/st… (18/25)

2019-11-01 06:58:52
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

今でもカリスマ扱いされるナチス・ドイツのヒトラーだけど、彼を特徴づけるものの1つが「巧みな演説」なのだ。じゃあヒトラーはその演説だけで権力の座に上り詰めたのかというと…どうやらそうでもないらしいという研究が最近出版されたのだ。 (1/12) pic.twitter.com/nP7eOgJHvW

2019-05-15 05:51:32
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

分析の結果、爆撃が行われた地域は、その後90日に渡ってISAFに対して攻撃が行われる確率が上昇していたことがわかったのだ。 その一方で、ドローン攻撃は有人機による爆撃よりも効果が小さく(=あんまり反撃を増やさない)、厳密に評判するならほぼ効果は無かったことがわかったのだ。 (19/25)

2019-11-01 06:58:53
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

また追加の分析の結果、市民の犠牲が出てもその後ISAFへの攻撃が増えるという関係は観察出来なかった一方で、威嚇行動はプラスに有意、つまりISAFへの攻撃が発生する確率が上昇していたことがわかったのだ。 (20/25)

2019-11-01 06:58:53
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この結果は、「不満」よりも「評判」のメカニズムの方があり得そうということを示唆しているのだ。ただし、「不満」のメカニズムが完全に否定された訳ではないことに注意なのだ。市民が武装勢力やテロ組織に加入する事と、彼らがテロや軍事行動に加担する事は区別する必要があるのだ。 (21/25)

2019-11-01 06:58:54
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

タリバンが米軍の誤爆をリクルートのレトリックに使っていたのはよく知られているのだ。この分析で示されたのはあくまで「市民の犠牲が生じてもISAFへの攻撃は増えない」ことだけで、市民の犠牲が出ると武装勢力に参加する人が増えるという不満のメカニズムの別の側面は検証されていないのだ。 (22/25)

2019-11-01 06:58:54
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

それから、アフガニスタンでの軍用機による威嚇行動は、市民の誤爆を減らしつつ武装勢力の軍事活動を「抑止」する為に始められたんだけど(2007年から実施)、どうやら米軍の想定とは逆の効果を持っている…のかも知れないのは何とも皮肉な結果なのだ。 (23/25)

2019-11-01 06:58:55
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

ドローン攻撃の話に戻ると、これらの結果に従うならば、武装勢力の活動をより活発にしてしまう有人機による爆撃よりもドローン攻撃は「害が少ない」程度の影響しかなく、その軍事的有効性に疑問が生じることが示唆されている、と言えるのだ。 (24/25)

2019-11-01 06:58:55
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

今回の話は papers.ssrn.com/sol3/papers.cf… からなのだ 今回までには紹介した5本の論文のうち、ドローン攻撃がテロを減らすという結論を導いているのは最初の一本だけなのだ。…でも分析の対象/期間/手法は全部バラバラだから、やっぱり一度専門家がこの辺りの議論を整理する必要があると思うのだ… (25/25)

2019-11-01 07:00:34

拡散する無人攻撃機:政治体制と国家の威信

ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

近年特に独裁国家の軍隊で無人航空機(UAV/ドローン)の導入が増加しているんだけど、その背景には何があるのか?世界160カ国以上を対象にした統計分析では、UAV輸出国としての中国の台頭・アラブの春の発生がUAVの世界的拡散のきっかけであったことが示唆されているのだ。 (1/28) pic.twitter.com/wO0CqOcIiF

2019-11-09 07:38:01
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この研究が注目したのは政治体制と軍事用UAVの導入の関係なのだ。まずあり得そうなのが、「民主主義体制はUAVを導入しやすい」という関係なのだ。有権者を常に気にしなきゃいけないから、民主主義的な政府は人命を危険に晒さないUAVを魅力的な兵器だと考えるかも知れないのだ。 (2/28) pic.twitter.com/6g3wlOAcFi

2019-11-09 07:38:02
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

でも独裁(権威主義/非民主主義)体制にとってもUAVは別の理由で魅力的だと考えられるのだ。独裁者は軍人の命なんか気にかける理由は無いんだけど、軍そのものは自分の最大の味方であり最大の敵でもある、というのがポイントなのだ。 (3/28) pic.twitter.com/ccwfUpaYrs

2019-11-09 07:38:04
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

独裁者は反政府勢力の弾圧や戦争の為に軍を使うんだけど、軍は常に独裁者を裏切る、つまりクーデタを起こす可能性があるのだ。だから軍をあまり強くし過ぎてもダメだし、弱くし過ぎてもダメ(内戦に敗北したり革命を防げない)、というジレンマに陥るのだ。 (4/28) pic.twitter.com/MIhBwuw8BX

2019-11-09 07:38:06
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

このジレンマを和らげるのがUAVなのでは、と筆者達は考えているのだ。UAVなら国の中央にいる「自分に本当に忠実な軍人達」を使って遠隔操作かつ少数の人員で(=軍に多大なリソースを割くことなく)僻地の反政府武装勢力や外国との領土紛争に対処できる可能性があるのだ。 (5/28)

2019-11-09 07:38:07
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

このように理論的に考えると、民主主義国も非民主主義国も理由は違えどUAVを導入する動機を持っているのだ。つまり、政治体制によってUAV導入の確率に差はないはずなんだけど、複数の出来事(ショック)が起こった後、非民主主義国でUAVが拡散するようになったと筆者達は考えているのだ。 (6/28)

2019-11-09 07:38:07
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

UAVの需要面での「ショック」がいわゆるアラブの春なのだ。2011年頃に中東各地で大規模な反政府デモが次々と発生したんだけど、この動乱は中東諸国だけでなく世界中の非民主主義的な政府を震え上がらせたのだ。 (7/28) pic.twitter.com/fW1fyFlGvy

2019-11-09 07:38:08
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ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

国内の反政府勢力を叩き潰すのにUAVはかなり有効なはずだから、次なるアラブの春を避ける為、独裁者達はUAVをより欲しがるようになったと考えられるのだ。でも非民主主義国の多くがあまり豊かでは無いから、需要が高まるだけではUAVは拡散しないのだ。 (8/28)

2019-11-09 07:38:09
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

なんとそうした需要に応えるかのように、供給面での「ショック」、つまりUAV輸出国としての中国の台頭が同時期に起こったのだ。中国は2011年頃からUAVの輸出を開始したのだ。これがだいぶ安いかったことに加えて、中国は軍事兵器の拡散の防止に関してかなり緩い事もポイントなのだ。 (9/28) pic.twitter.com/mZPZW1kWsC

2019-11-09 07:38:10
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