エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~7世代目・その4~

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ
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帽子男 @alkali_acid

だが千の河と万の湖の国にはもう、在りし日の歓びを歌い継ぐ吟遊詩人すらいないのだ。 あとに残るのは悲しき神話の獣と、異邦より訪れ戦のため肉の器に宿った霊のみ。

2019-12-19 23:33:33
帽子男 @alkali_acid

ただならぬ気配を察し、キージャは瞬時にお仕着せを脱ぎ捨てると、そこかしこにふくよかさを帯びた肢体を這う銀の蜘蛛に銘じて全身にぴったり貼りつく衣をまとう。 「ワイアル!大天使とやらは、こなたが拉(ひし)いでくれよう!」

2019-12-19 23:35:26
帽子男 @alkali_acid

「手を出すな!僕が…僕の泥竜がかたをつける…それより!股引だ!!!泥竜の鰭を一枚つかわす!君の針と糸と鋏の奥義をもって!天使に穿かせる股引を!」 「採寸せねば!」 「しばらく動きを止める!」

2019-12-19 23:36:54
帽子男 @alkali_acid

ユルアリエは、光輪から炎と雷の矢を次々に打ち出しながら吠え猛る。 「海狸めが!悪魔を滅ぼしたとてお前の罪は消えぬ!我が女戦士をことごとく辱め!淫らがましい行いを強いた所業!一なる神の正義の裁きからは逃れられぬぞ!」 「天使!地に堕とし!ぶざまに這いつくばらせてみせる!」

2019-12-19 23:38:42
帽子男 @alkali_acid

泥竜はワイアルの意思に従い、無数に枝分かれし、上空を舞う鷲の如き乙女を取り囲む。琥珀の銛が白い光芒を引いて風車の如く旋回し、合繊の触手を次々と断ち切るが、しかしすぐにまた再生する。

2019-12-19 23:41:12
帽子男 @alkali_acid

「キー!キキキー!キー!」 奇声を発しながら、獣は、攻撃呪文をかわしつつ湖に飛び込み、いきなり、堤の間に消えると、やがてまたあらわれる。口には一本の枝を咥えて。たちまち大量の水を堰き止めていた倒木の連なりは決壊し、怒濤が逆巻く。 泥竜は波しぶきの中で躍り、やがて勢いよく宙に舞った。

2019-12-19 23:43:33
帽子男 @alkali_acid

数え切れないほどの泥竜の糸が巨躯から飛び出し、虚を突かれたユルアリエを絡めとる。 「いまだ!測れ!!」 師匠の合図に弟子は糸を飛ばして泥竜に巻き付け、振り子の要領で空を横切って、くるりと巨躯のまわりを一周し、大天使のそばを掠めざま寸法をとる。

2019-12-19 23:45:42
帽子男 @alkali_acid

「愚弄するか!!」 金髪の女戦士は双眸を白く灼きつかせて、二筋の熱線を放ち、拘束を焼き切る。 「どうだ!」 ワイアルの問いに、キージャは応じる。 「まだじゃ!あと二度は採寸せねば!」 「また"機"を作る!必ず泥竜の股引を仕上げよ!」

2019-12-19 23:47:21
帽子男 @alkali_acid

死闘には終わりがないかに思えた。 精霊を宿した妖精の体は無尽の魔法をあふれさせ、あたりを焦土と変えながら、一人と一匹を追い詰めていく。しかしなお、さらに二度の採寸に黒の繰り手は成功した。海狸の王子は毛むくじゃらの背を灼熱の光箭に抉られたが、止まらずに駆け、泥竜を操り続けた。

2019-12-19 23:50:08
帽子男 @alkali_acid

「…股上…膝下…足幅…すべて捉えた!」 「頼んだぞ!」 裁縫にかかるキージャを庇いつつ、ワイアルはすでに満身創痍の己と合繊の大蛇を鞭打って、神威の代行者と向かい合う。 「ワイアルフリート!!なぜ翼と輪を得て天使に加わらなかった!」 「キー!キキー!僕は海狸!誇り高き長歯の一族!」

2019-12-19 23:52:50
帽子男 @alkali_acid

「お前さえ!お前さえ私の側にいれば!だが邪悪は滅ぼす!我が宿せし霊が命じるのだ!一なる神に背く一切を駆逐せよと!死ね!!」 「絶対に淫らに鳴かせてみせる!!!お前を!天使の威厳を剥ぎ取り!もう一度地に下ろしてみせる!」

2019-12-19 23:54:46
帽子男 @alkali_acid

光の尾を引く琥珀の銛の切先が、合繊の竜の胴に風穴を開け、後ろに潜む小さな獣の脇腹をえぐる。 「かはっ…」 「さらばだ…ワイア…」 「できたぞ!」

2019-12-19 23:56:08
帽子男 @alkali_acid

キージャが超々特急で仕上げた泥竜(ナイロン)の股引(パンスト)が折り畳んだまま蜘蛛糸を掛けられ、礫(つぶて)のように飛んでくる。しなやかな妖精の貴公子の手がはしとそれを掴んだ。 「天使!!堕とすべし!!!キキー!!!」

2019-12-19 23:57:43
帽子男 @alkali_acid

崩れ落ちる泥竜を駆けあがった河エルフの王子は、焼け焦げだらけの毛皮を脱ぎ捨てると、金髪をなびかせながら、同族の王女だった存在に覆いかぶさり、もみ合った。 「穿け!泥竜の股引を!」 「離せ痴れものがぁあ!」 「絶対に!穿かせる!」

2019-12-19 23:59:42
帽子男 @alkali_acid

いったい百戦錬磨の女戦士が抗っているさなかに、股引を履かせることなど可能であろうか。 しかし思い出していただきたい。大天使ユルアリエが悪魔狩りの達人であれば、海狸の王子ワイアルフリートもまた天使狩りの熟練。

2019-12-20 00:01:41
帽子男 @alkali_acid

合繊で「覆って」きた獲物は数知れないのだ。妖精の呪文に従い布地は滑らかに動く。 ついに金髪巨乳高慢天使の脚をすっぽりと滑らかな股引が包み込んだ。 「んぉっ♥んぉおおっ♥」

2019-12-20 00:02:37
帽子男 @alkali_acid

細やかな繊維のもたらす快楽が、異界の教えに凝り固まった心までもゆすぶり、羽搏きの力を奪い、光輪をくすませ、地に落とせしめる。 「くぉっ…♥…こんな…術などぉっ♥」 ユルアリエは猛禽に似た鉤爪で泥竜の生地を引き裂くが、まるで敏感な第二の皮膚をひっかいてしまったかのように悶絶する。

2019-12-20 00:04:40
帽子男 @alkali_acid

「んほぉおっ♥」 半ば白目を剥き、舌を突き出し、脚を大きく開いたまま腰を高くもたげて、ぶざまに痙攣する。そのあいだにも裂けた泥竜の生地はうごめき、自ら切れ目を塞いでゆく。 大天使は何度か快楽の束縛から逃れようと股引を破ったが、都度絶頂に達し、蜜と潮を噴き粗相をしながらもがく。

2019-12-20 00:06:51
帽子男 @alkali_acid

「僕の勝ちだな…天使」 全裸で腕組みをしながら、黄金の髪の美丈夫は、同じ色をした髪の女丈夫を睥睨する。 「しょんなぁ…しょんなはずはぁ…♥」 「負けを認めるまで…喜び苦しみ続けるがよい」

2019-12-20 00:08:14
帽子男 @alkali_acid

大天使堕としに一役買ったキージャはどきどきうずうずしながら二人を見守った。 「もうちょっと何かせぬのかや?こう…男女の間には…あるではないか?」 「だめだ…そういった関係は…屈服の美を穢す…天使は堕ち、快楽に悶えるが、相手の男といったものが鮮明であってはならない」

2019-12-20 00:10:15
帽子男 @alkali_acid

河エルフの公達は厳かに告げた。 「僕は千五百二十四柱の女天使を堕としてきたが…男女の間のことをなしたことはただの一度もない!この儀式は純粋なる堕落…恋情や憐憫は要らざる濁りなのだ…」 「ワイアル…そなたはどこまでも…」

2019-12-20 00:13:14
帽子男 @alkali_acid

ユルアリエはもう股引を引き裂く気力もなくただ妖精の貴婦人のかんばせを、涎と洟と涙で穢しながらうめくばかりだ。 「ワイアル…ワイアルぅ♥…いやだぁ…こんなのぉ…♥…せめてぇっ…お前の手でぇっ…とどめをぉっ……」 「負けを認めるか大天使」 「負けぇ…負けたからぁ…っ」

2019-12-20 00:15:21
帽子男 @alkali_acid

「そう、か…」 「ワイアルぅ…おねが…」 「お前など知らない…天使など…妖精はもういない…我が民…我が同胞に…かほどむごい真似ができるものか…お前は天使…何ものでもない異界の神のしもべ…だから堕とした」 「…っ…ぁっ…り…がとう…」 「さらばだ」

2019-12-20 00:17:32
帽子男 @alkali_acid

白い繭が最後の天使をすっぽりと包んだ。 狂える王子は膝をつくと、血を吐いた。暗い膚の縫匠が駆け寄る。 「ワイアル!」 「…大事ない…海狸にこの程度の傷など…すぐ癒す…」

2019-12-20 00:19:07
帽子男 @alkali_acid

ワイアルはキージャに希(こいねが)った。 「毛皮を…とってきてくれ…この…妖精の姿は…僕には耐えがたい…水鏡に映るのを目にしたくない」 「うむ…任せよ」

2019-12-20 00:20:00
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