『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』の感想・紹介

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+M laboratory @freakscafe

耕作も、もともとは、自然のリズムに応じたテクノロジーのひとつに過ぎなかった。だが、何らかの恐らくは複合的な理由で、ある地域において、この耕作への依存度が高まっていく。 それは、穀物と動物が飼い馴らされ、共進化によって形質転換していく歴史でもある。

2019-12-30 16:06:16
+M laboratory @freakscafe

この穀物、動物、さらにはそれに依存した人間の共進化による形質転換を、著者は、<飼い馴らし>を意味する英語domesticationから、「ドムス化」と名づける。

2019-12-30 16:12:20
+M laboratory @freakscafe

≪ドムスはほかに類を見ないもので、耕地、種子や穀物の蓄え、人、そして家畜動物が前例のないほど密集し、すべてが共進化しながら、誰にも予想しなかったような影響を生み出した。→

2019-12-30 16:15:56
+M laboratory @freakscafe

→そして、これも同じくらい重要なことだが、進化のモジュールとしてのドムスには抗しがたい魅力があって、文字通り何千何万という招かざる居候がやってきて、この小さな生態系で繁栄した。≫

2019-12-30 16:15:56
+M laboratory @freakscafe

このドムス化された動物に共通して見られる特徴が興味深い。 他種への用心深さが少ないこと、 雌雄差が薄いこと、 幼形成熟の傾向があること、 脳の縮小、 感情的な反応能力の低下。…

2019-12-30 16:24:04
+M laboratory @freakscafe

さて、著者は萌芽的な国家を、後期新石器時代の、このドムス・モジュールを活用し、支配と収奪の基盤とすることによって生まれたとする。 ここで、国家とは≪税の査定と徴収を専門とし、単数もしくは複数の支配者に対して責任を負う役人階層を有する制度≫として定義されている。

2019-12-30 16:31:31
+M laboratory @freakscafe

そもそも、このドムス・モジュールが広範に支配的となり、そこに萌芽的な国家が発生した背景として、著者は気候変動による地球の「乾燥化」により、労働集約的な灌漑の必要が生じて、急速な人々の集中化-都市化が促進されたことによるという仮説を採用している。

2019-12-30 16:36:05
+M laboratory @freakscafe

その「原因」の妥当性はおいておくとして、ともあれ、国家が、唯一課税の基礎となる穀物を、その生態系の基盤とするドムス・モジュールにおいてのみ発生したという理路は説得的だ。

2019-12-30 16:43:45
+M laboratory @freakscafe

ドムス・モジュールが広範に実現可能な地域は、砂漠や山岳地帯を除く沖積層に限定されていた。この地政的な指摘も、とても重要であろう。国家が大多数の人類を包摂したのは、1600年以降、近代になってからなのである。それまでは「砂漠の民」「森の民」等、非国家領域が広大に広がっていた。

2019-12-30 16:47:51
+M laboratory @freakscafe

ところで、文字の発明も、話し言葉を記録するためではなく、国家の帳簿の記録の必要性から生じた。 官僚機構や、行政記録、階層的なコミュニケーションが消滅すると、読み書きも大きく縮小することを示唆する考古学的証拠も、わずかながら存在することが述べられている。

2019-12-30 16:51:20
+M laboratory @freakscafe

【+M】大雑把にまとめるなら、人々が自然の多様なリズムに対応して、ナチュラリスト=実践的自然哲学者として存在していた狩猟採集民としての在り方から、穀物、動物とともに己自身を家畜化してドムス・モジュールを形成し、その複合体に寄生するように国家が誕生した、ということになる。

2019-12-30 17:00:40
+M laboratory @freakscafe

【+M】一点、これはないものねだりになるかもしれないが、「国家」がドムス・モジュールに寄生する際、民衆が国家を求めた動機として、そこにある超越的な権威を認めたという視点も繰り込むと、どんなことが言えるだろうか。

2019-12-30 17:04:16
リンク benton雑記帳 反穀物の人類史 - benton雑記帳 狩猟・採集社会から農業社会へ移行して、それと同時に移動生活から定住生活へ移行して、国家、文明が始まる。文明の恩恵にあずかろうと雪崩をうって人々は国家に参加する。国家はこういうふうに始まったと思い込んでいた。 定住生活と国家の組み合わせって、今はあたりまえで国家が無い社会は考えられないけれど、国家が始まった当初はそんなにいいもんでなかったということがこの本に書いてあります。 そもそも、農業の始まりや定住生活の始まりと国家の始まりに直接の関係はなくて、農業が始まって数千年間は大規模な国家ができていないし、狩猟
HONZ @honz_jp

更新しました! 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス : honz.jp/articles/-/454… #HONZ

2020-01-03 07:00:46
リンク HONZ - 読みたい本が、きっと見つかる! 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ かくも行き渡っているそのストーリーに対して、本書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない。また、メソ... 516 users 389
澤畑 塁 @Sawahatter

HONZでレビューを書きました。とりあげたのは、ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史』(みすず書房)。 「農業→定住→国家」という従来のストーリーを覆さんとする挑戦的な1冊。紹介がずいぶん長くなりましたが、それほどその内容について語りたくなるような本です。 honz.jp/articles/-/454…

2020-01-03 07:26:17

「農耕の開始によって定住が始まり、文明が生まれ国家が誕生した」という従来の歴史観はかんぜんに覆された

橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方 @ZAi_Tachibana

「農耕の開始によって定住が始まり、文明が生まれ国家が誕生した」という従来の歴史観はかんぜんに覆された【橘玲の日々刻々】 | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 ift.tt/352GVoz

2020-10-16 17:38:07
橘 玲 @ak_tch

「「農耕の開始によって定住が始まり、文明が生まれ国家が誕生した」という従来の歴史観はかんぜんに覆された」農耕と国家の誕生によってヒトの「家畜化」がさらに進んだという興味深い主張。私たちは「人間動物園」に住んでいる? diamond.jp/articles/-/251…

2020-10-16 17:48:53
リンク 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン 「農耕の開始によって定住が始まり、文明が生まれ国家が誕生した」という従来の歴史観はかんぜんに覆された【橘玲の日々刻々】 いま古代史が大きく書き換えられつつある。そのきっかけとなったのはトルコ南東部の古代都市ウルファ(現在のシャンルウルファ)近郊で発見された「ギョベクリ・テペ」という巨大な神殿で、1万4000年前から1万2000年前に建造されたと考えられている。 420 users 256
橘 玲 @ak_tch

ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史 』国家が穀物の栽培へと特化したのは税を徴収しやすいから、など刺激的な議論をする「アナキスト」の書。「文明人」より「野蛮人」の方が幸福だったと主張しています。amazon.co.jp/exec/obidos/AS…

2020-10-16 17:55:00
橘 玲 @ak_tch

クリストファー・ライアン『文明が不幸をもたらす』スコットの「反穀物」をさらに先に進めると現代文明の全否定になります。ドーキンス、ピンカー、リドレーらの「楽観的な進歩主義」への批判が興味深いです。amazon.co.jp/exec/obidos/AS…

2020-10-16 17:55:00
文明が不幸をもたらす: 病んだ社会の起源

クリストファー・ライアン,鍛原多惠子