青い翼の乙女と白い眼の少年の物語・ほか(#えるどれ)

おねショタの発作がね。 まとめは以下のWikiからどうぞ https://wikiwiki.jp/elf-dr/
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帽子男 @alkali_acid

難解な文章だが、とりあえずウィストはつっかつっかえ読み終えた。 「…ほわー…西方語やな」 「多分…連合…王国の言葉…」 「んー。ジーグサウておにーはん?から、レオノフておにーはん?に当てたもんやな。さっきのあの箱も贈り物?らしいわ」

2020-07-13 22:16:40
帽子男 @alkali_acid

「うう…」 ウィストは箱に閉じ込められた記憶がよみがえり、ぺたんと尻餅をついて、ぼろぼろになった頭巾を抑える。するとオオグイが同の長さ太さを増し、すっぽりと覆うようにとぐろを巻いた。 「ウィスト。無理させてえろう申し訳ない」 「へいき…へい…き…」

2020-07-13 22:20:59
帽子男 @alkali_acid

「んー。汽車に戻ろ。あとはおとーはん…チノホシの力借りるわ。箱から何か解るやろ」 黒海豹と黒長虫は、暗い膚に尖り耳の男児にぴったり寄り添うようにしてきた道を引き返した。

2020-07-13 22:22:29
帽子男 @alkali_acid

疲れ切ったウィストが汽車の診療室で横になり、世話焼きな黒犬アケノホシとひとなつこい黒歌鳥ホウキボシの介抱を受ける間、黒蝙蝠チノホシは助手とともに髑髏岩の洞窟にやってきた。 「キキ」 「許せないんだな!クレノニジちゃんを痛めつけるやつ!ぼこぼこにしてやるんだな!」

2020-07-13 22:25:06
帽子男 @alkali_acid

飛獣のおともとしてついてきたのは、黒の料り手に負けず劣らずの肥満漢、驚天傀儡師ペドロフスコ。 黒の乗り手たるウィストをなぜか女神と崇め、勝手に旅についてきた邪教徒。 「キキ!」 だが黒蝙蝠は腕ずくで物事を解決するつもりはないようで、鋭く鳴いて戒める。 「親方ごめんなんだな…」

2020-07-13 22:27:46
帽子男 @alkali_acid

ウィストを女神と慕う一方、なぜか蝙蝠を親方として師事しているペドは、素直に従う。 どちらも異様な風体ではあるが、実は天才肌の職人、というか技師でもありある意味では学究でもあるので、まず箱の残骸を回収し、詳しく調べる。

2020-07-13 22:29:22
帽子男 @alkali_acid

「海豹様はジーグサウと言ってたんだな」 「キ」 「聞き覚えがあるんだな。闇のからくり業界では有名な…殺人出題者ジーグサウ…」 「キ?」 「残酷きわまるからくり仕掛けで獲物を罠にかけ、死か、死よりもっと悪い運命化を選ばせる悪趣味な殺人鬼って話なんだな」

2020-07-13 22:30:50
帽子男 @alkali_acid

「キキ」 「んほほほ!ペドの方がそんな頭のおかしなじいさんより上なんだな。機械工学はそんなつまらないことのためにあるんじゃないんだな…幼女を…永遠に…」 「キキ」 「あ、ああ…そうだったんだな…それでもう一つの名前…レオノフ…生命博物館?たぶんそれは生命美術館のことなんだな」

2020-07-13 22:32:56
帽子男 @alkali_acid

「キ?」 「レオノフの生命美術館…闇のようじょ好き業界では有名な伝説なんだな…曙の大地の内陸の奥地に…幼女を集めた伝説の美術館があると…そこでは幼女は永遠に年をとらず、いつまでも幼女のままなんだな…ぶひ!ぶひひ!」 「キ…キ?」 「ペドにも本当かどうかは解らないんだな」

2020-07-13 22:35:34
帽子男 @alkali_acid

左右非対称の翼を持つ飛獣は作業を進める傀儡師の頭上に輪を描きながら、先を促す。 「ジーグサウもレオノフも、噂で語られるだけで、実態は知られてないんだな。オイメト兄ちゃんはそういうの詳しかったけど、ペドは正直育った人間の話はそこまで興味ないんだな…ただ美術館の幼女は気になるんだな」

2020-07-13 22:38:52
帽子男 @alkali_acid

「キ!キ!」 「箱が終わったら次は像なんだな…育った男ばっかりなんだな…これはほっとけばいいんだな」 「キキ!」 「修復するんだな…育った男をなんだな?なんて嘆かわしい差作業なんだな…でもクレノニジちゃんを苦しめた犯人につながる情報が見つかるかもしれないならやるんだな!」

2020-07-13 22:41:20
帽子男 @alkali_acid

ペドが奥歯をかみしめて常人の耳には聞こえない音を立てると、蕾絲(レース)や縁飾(フリル)だらけの衣装をまとった少女の人形が続々と掃除用具や補修用品を手に手にあらわれる。 「娘達…そこの育った男の像の破片を集め、元通りにするんだな!蝙蝠親方の指示通りに狂いなく過ちなくやるんだな!」

2020-07-13 22:44:12
帽子男 @alkali_acid

黒蝙蝠チノホシは、粉々になた像の破片のどこをどうつなげば元通りになるかを、まったく迷いなく当ててみせた。 かけらのうちにはあまりに細かくなりあるいはどこかへ捨てられて取り戻せないものもあったが、補い埋める陶瓦(テラコッタ)の小剥を新たに汽車にある車内工房で焼いてつなぎ合わせた。

2020-07-13 22:47:34
帽子男 @alkali_acid

まるごと持ち去られた像は復元できなかったが、少なくとも毀たれた像はすべて往時の姿を取り戻した。 黒蝙蝠は結果を仲間に報告した。 「ほわー。像の中に年代ずれとるもんがある?ディヴァはんの後で来た誰かやろな。トラザメかいな…ほんで?」 「キキ」 「乳房…尻…くびれた胴…んー…」

2020-07-13 22:50:39
帽子男 @alkali_acid

話を聞いていた黒海豹は急にめんどくさそうにごろんと反転した。 「んー…女のひとの話?ほなワテ昼寝してくる」 「キキ!」 「ちゃう?男?どゆこと?」 「キ!」 「オオグイに見せれば解る?」

2020-07-13 22:52:11
帽子男 @alkali_acid

黒蝙蝠の案内で再び黒長虫が、髑髏岩の洞窟に潜ったが、危うく修復が済んだばかりの像も含めてすべてを塵に変えかねない竜咆(たつぼえ)を発することになった。 なぜなら、一つだけ年代の異なる像は、たわわな乳房にくびれた胴、張りのある腰を持つ丈の高い女、のようでいながら男という。

2020-07-13 22:55:02
帽子男 @alkali_acid

独特の姿態をしていたからだ。 黒長虫は、女のような美丈夫の陶瓦像にからみつき、雷と炎と風を渦巻かせながら激しくうねっていた。 「キキ…」 黒蝙蝠は考え深げなようすで、やや離れたところに羽搏き浮かんでいる。

2020-07-13 22:57:45
帽子男 @alkali_acid

修復する過程で判明したのだが、像の内部は中空だった。しかしほかの像のように香料は詰まっておらず、どうやら別の何かを隠してあったようだった。 しかしすでに一度像が砕かれた際に持ち去られてしまった。 生命美術館長レオノフ。闇の幼女好きの業界でさえ噂のみ知られる、謎めいた人物の手で。

2020-07-13 23:01:51
帽子男 @alkali_acid

さて「ウィストの狭の大地あっちこっち」シリーズ、 「私はねえ。あなたみたいな可愛らしい男の子が醜い大人になるのが許せないんです!だからこの“遺物”で永遠に可憐なままにしてあげますねえ!収容したらずっと大事に管理してあげます…隅から隅まで…楽しみでなりません…」 乞うご期待!

2020-07-13 23:08:16

次回の話

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