人参があるなら馬参や狼参そして竜参、神参もあるはず2(#えるどれ)

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前回の話

まとめ 人参があるなら馬参や狼参そして竜参、神参もあるはず1(#えるどれ) 雲突く巨参(きょじん)。 天に舞う翼参(よくじん)。 なんかトゲトゲしてる鬼参(きじん)。 そして悪の化身、魔参(まじん)。 シリーズ全体のまとめWiki https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 4252 pv

以下本編

帽子男 @alkali_acid

こんな深夜に何ですが、今日も今日とて大河ファンタジー小話 #えるどれ が始まります。 以下あらすじ。 人参(にんじん)が平和に暮らす地、参界。 ある時、邪悪なる変種「魔参」が誕生し、偉大な支配者「神参(しんじん)」に戦いを挑んだ。

2020-08-01 21:56:50
帽子男 @alkali_acid

魔参は、「鬼参」や「狼参」など次々に邪悪な変種を生み出し、ほかの人参を襲って養分を吸い尽くす同族殺しに手を染めた。 さらに配下の数を増やすため、人間の暮らす人界に攻め込み、次々と拉致を行っては、地下の人参畑に生きた苗床として並べて植えるのだった。

2020-08-01 21:59:19
帽子男 @alkali_acid

魔参がなぜそんなことをするのか。誰にも解らない。 ただ魔参の腹心である「黒き人参の乗り手」は、馬参(まじん)にまたがって参界と人界をゆききし、不気味な暗躍を続けている。 いまだ人間達は備えができていない。 地方の役所なども「人参が人間をさらう?ばかばかしい。田舎者は頭おかしい」と

2020-08-01 22:01:18
帽子男 @alkali_acid

一笑に伏すばかりである。 何という愚かな官僚主義であろうか。人参が人間を襲っているとの話を聞いたら即座に対策を立てるのが能吏というものではないか。 だがそうはならなかった。ならなかったんだよ。 だからこの話はここでおしまいだ。

2020-08-01 22:02:39
帽子男 @alkali_acid

役所がだめなら、自衛しかない。 参界にほど近い村々では自警団なども作っていたが、黒き人参の乗り手にはとうてい叶わない。 何せ人参の細い髭根(ひげね)に張りつかれ血を吸われると、たちどころに弱ってしまうのだ。

2020-08-01 22:04:05
帽子男 @alkali_acid

対人参剣術とかそういった気の利いたものはないため、 屈強な男衆も運が悪ければ苗床堕ちである。 ではやはり専門家。専門家を頼るべき。 そう。人界には超常現象を扱うスペシャリスト「財団」が存在する。 財団はすでに参界に調査チームを送り込んでいた。

2020-08-01 22:05:47
帽子男 @alkali_acid

魔参が経営する地下の人参畑の七番目の区画はまるまるこの財団の調査員です。 はーつっかえ。はーつっかえ。 もは最後の手段。人類の叡智の焔で焼くしかない。そうお考えだろうか。残念。人界にはまだ無敵のUSAは存在しないのだ。

2020-08-01 22:07:44
帽子男 @alkali_acid

神参は沈黙を続けている。 魔参の野望を阻むものはないかのようだ。 このまま全人参とあとついでに人間も、邪悪なる変種の支配下に置かれてしまうのだろうか。 否。 まだ希望はある。

2020-08-01 22:09:36
帽子男 @alkali_acid

今まさに人界から参界へと、旅の仲間が使命を帯びて潜入を試みようとしていた。 先頭をゆくのは兎の着ぐるみをまとった中年の男性。黄色い肌に糸のように細い目。ついでに鯰髭。いかめしい表情をしている。

2020-08-01 22:11:35
帽子男 @alkali_acid

背後には、それぞれ西方風と東方風のいでたちの少年が二人とことことついていく。一方は暗い膚に頭巾、もう一方は黄色い肌に糸目。 「繰り返すが今の参界は危険だ。魔参の手下に捕まれば、人間はたちどころに人参を育てる苗床にされてしまう」 着ぐるみ男は、幼い連れにそう注意を呼び掛けた。

2020-08-01 22:14:04
帽子男 @alkali_acid

「強大な人参の戦士に比べれば、人間などどれほど力自慢でも、畑に生えた野菜も同然だ」 兎男は、食通のために珍しい素材を探す珍味猟師を自称し、肩書に恥じぬうんちくを披露していた。 「まかり間違っても未熟なお前達が正面から対決しようとするな」 「ではいかにすべきか」 黄の男児が問う。

2020-08-01 22:18:34
帽子男 @alkali_acid

「古…生薬の半島の厨師…つまり料理人は、包丁を振るって野生の人参の皮を剥き、短冊切りや輪切りにすることさえできたというが…しかし今やその技は失われた…半島の厨師も今では畑で育てたろくに動きもしない貧弱な人参を料理して事足れりとしている…」

2020-08-01 22:22:18
帽子男 @alkali_acid

着ぐるみの中年は、足を止めず少年達に諭す。 「だが…人参にはほかにも天敵がいる」 「もしや…」 糸目の仔が言いさすと、珍味猟師は薄く笑った。 「察しが良いな。さすがは人参の脅威を見張って来たワン氏の御曹司…ダングと言ったか…お前の一族に伝わるあの獣…」 「………兎…」

2020-08-01 22:24:08
帽子男 @alkali_acid

兎男は勢いよく頷いた。 「そう…俺と相棒は、長期にわたる綿密な調べの結果…まちがいなく…人参の天敵は…兎…耳が長く跳ねるのが得意なあの獣だと突き止めた」 「やはり…兎が…人参の…天敵!」 「間違いない!」

2020-08-01 22:25:38
帽子男 @alkali_acid

一行はやがて、小さな地の裂け目に幕布を張り、上に落ち葉をかぶせた隠れ家に辿り着く。珍味猟師は急いで連れを招き入れると、匂いが漏れないようにぴたりと布を閉じた。 「さて…ダングよ…ワン氏の伝承では兎はどこから来たと言われている」 「申し訳なし。門外不出なり」

2020-08-01 22:29:30
帽子男 @alkali_acid

「そうか…だが俺はある程度まで知っているぞ…兎は…人参の脅威におびえる人間のために、仙人が遣わせた…そうだな?」 「…!」 「ワン氏ほどではないが、このあたりの村々には言い伝えが残っている。注意深く蒐集すればおぼろに原型に達せるという訳だ」

2020-08-01 22:31:25
帽子男 @alkali_acid

兎男は赤く染めた長耳を撫でてから、相変わらず真剣な表情で二人に話しかける。 「その仙人の正体が誰か解るか?」 「…話せぬなり」 「…人参だよ」 「!!?なんと!?」 「そう…仙人もまた…人間ではなく…人参だったのだ」

2020-08-01 22:32:36
帽子男 @alkali_acid

ダングは一族の秘密を守らねばならぬ身ながら、我慢しきれずつい尋ね返してしまった。 「しかし…人参がなぜ人参を食べる兎を…」 「…人間もまた人間を殺す道具を生み出す…とすれば…人参が人参を食べる兎を遣わせてもおかしくはない」 「道理なり…」

2020-08-01 22:36:33
帽子男 @alkali_acid

兎男は丸太の椅子に腰を下ろそうとし、丸っこい尻尾が邪魔でしばらく苦戦してから、やっと尻を落ち着け場所を見つけた。 「仙人の人参…つまり仙参(せんじん)が実在しただろう証拠はいくつかある。これは数年前に**村郊外で発掘された壁画だが…」 丸太の隠し戸を開き、写真を数葉取り出す。

2020-08-01 22:39:00
帽子男 @alkali_acid

「見てくれ…仙参とおぼしき人物が描かれているのを…ひょろりとしてしわしわの姿…顔から何本も生えた灰色の髭…すべてが古くなった人参の特徴と一致する」 「…言われてみれば人参らしくもあるなり!」 「ほぼ確定だ…」

2020-08-01 22:40:34
帽子男 @alkali_acid

ダングが感じ入ったようすなのに対し、もう一人の浅黒い少年、ウィストはやや微妙な面持ちで、ひそひそと話し込む大小の男達の顔を交互に何度も見比べて、何か言いたそうにしたが、しかし結局黙ったままだった。

2020-08-01 22:42:55
帽子男 @alkali_acid

「仙人が人参だとすれば…すべて辻褄が合う…恐らく仙参は…参界と人界が争えば双方に多大な害が及ぶと考え、境を守るものとして兎を育てたのだ」 「人参を守るために兎を…?」 「そうだ。それでこれまではうまくいっていた…だが…ワン氏もその後備えである…ヒ氏?とやらも断絶し…兎も行方不明」

2020-08-01 22:45:10
帽子男 @alkali_acid

珍味猟師は、なぜか肉球まで再現してある着ぐるみの手を打ち合わせて呟く。 「となれば…兎による相互不可侵の仕組みは崩れた…機を逃さず魔参は人界に攻め込んでいる…こうなれば…古にワン氏がそうしたように、再び誰かが…仙参から兎を授かるしかない!」 「再び!兎を!」 「そうだ」

2020-08-01 22:47:41
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