人参があるなら馬参や狼参そして竜参、神参もあるはず3(#えるどれ)

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帽子男 @alkali_acid

「もとよりクレノニジがおわさねば、月と日と星が一度になくなったように感じるものだが」 「それにしても随分のことだ」 二人はいつもよりゆっくり歩きながら、豪華客船のような船内をあらためてまわった。

2020-08-07 22:25:19
帽子男 @alkali_acid

「たたたたた大変なんだなあ!!親方があ!親方が!!んほぉおお!?」 やがて大騒ぎしている肥満漢に出くわす。 「いかがしたペドロフスコ殿」 「チノホシ殿が何か?」

2020-08-07 22:26:28
帽子男 @alkali_acid

驚天傀儡師ペドロフスコは、手にした縫いぐるみをおっかなびっくり二人に差し出す。 左右非対称の翼を持つ黒蝙蝠。たった今縫いあがったばかりのように真新しく美しい。だが生きた獣ではない。 「…これは…チノホシ殿?」 「そっくりの縫いぐるみでは?」 「さっきまでは親方だったんだなあ!」

2020-08-07 22:28:21
帽子男 @alkali_acid

船内のあちこちに、同じような縫いぐるみが転がっていた。黒犬、黒歌鳥、黒海豹、寸法の縮んだ黒竜、黒蜘蛛。 黒猫。 「何が…何があったんだな?」 「ふむ…我等の不調とどうやら原因は同じ」 「クレノニジに容易ならざる事態が起きたと見える」

2020-08-07 22:30:47
帽子男 @alkali_acid

さらにまた別の場所、というよりは別の世界にも影響は及んでいた。 現世ならざるまどろみの帳の向こう。夢の国でも。

2020-08-07 22:32:36
帽子男 @alkali_acid

ちょうど花冠をかぶった丈高く暗い膚の青年が、明るい肌をした尖り耳の少女を膝にのせ、とがった顎を上向かせゆっくりおおいかぶさっているところだった。 「クロヒナタ…おまじないってまだ?何かね。ちょっとくすぐったい」 「ああ…」 「私。じっとしてるの、苦手かも…」

2020-08-07 22:36:15
帽子男 @alkali_acid

くすくす笑って娘が身をもぞつかせると、だしぬけに周囲を包んでいた逞しい男の筋骨の感触と温もりが消える。 「クロヒナタ?クロヒナタ?」 恐る恐る瞼をあけると、さっきまでそばにいたはずの連れは掻き消えていた。

2020-08-07 22:38:32
帽子男 @alkali_acid

「クロヒナタ…」 ヒカリノカゼは心細げに名を呼んだが、答えはなかった。

2020-08-07 22:39:21
帽子男 @alkali_acid

さて「ウィストの狭の大地あっちこっち」シリーズ、 次回は「その姿になったものは…伝説の食材、人参(ニンジン)…人参の中でも究極の存在、神参(シンジン)を食さなければもとに戻ることはない」 乞うご期待

2020-08-07 22:42:23

次回の話

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