平川秀幸(hirakawah)さんの「原発・放射線問題に関するリスクコミュニケーションについて」
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原発・放射線問題に関するリスクコミュニケーション(リスコミ)――またはクライシスコミュニケーション(危機コミ)――について、以前にも一部書いたことがあるのだけど、改めて論点をまとめます。前提となる現状認識のポイントは次の3点です。
2011-07-11 16:42:38(続)1)円滑なコミュニケーションにとって最大の障害は「不信」の蔓延である。たとえ正しいことを言っても、正しいことを言ってると信用してもらえなければ通じない。そして一度崩れた信頼を取り戻すためには相当に長い時間がかかり、コミュニケーション含めて即効薬など存在しない。
2011-07-11 16:43:01(続)2)今回の災害では3.11直後から最初の数週間で、政府や原子力・放射線関係の専門家は、見事に不信を広げる言動を再三繰り返してしまい、コミュニケーションのちょっとした改善では事態は好転できない状況になってしまった。
2011-07-11 16:43:26(続)不信を深刻化する言動はその後もずっと繰り返されている。リスク比較はその一つで、比較を持ち出すことの問題点は、次の危機コミ/リスコミのガイドラインでも明記されている。その意味で政府等がやってきたのは実に「教科書的な錯誤」。
2011-07-11 16:43:44(続)ガイドラインの例1:農水省「健康に関するリスクコミュニケーションの原理と実践の入門書」 http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/r_risk_comm/index.html
2011-07-11 16:44:05(続)ガイドラインの例2:米国CDC. Crisis and Emergency Risk Communication http://www.bt.cdc.gov/CERC/
2011-07-11 16:44:18(続)3)今回に限らずリスコミの問題は、リスク管理全体の問題の一部であり、コミュニケーションに関して発生している問題をコミュニケーションだけで解決できる範囲は常に非常に限られている。
2011-07-11 16:44:48(続)というのは、そもそもコミュケーションの内容に管理措置の内容が関わってることもあるからであり、不信/信頼の対象はコミュニケーションの担い手よりはむしろ管理主体に対して向けられているという面もあるから。
2011-07-11 16:45:07(続)このため、もしも効果的なリスコミをするとすれば、その担当者は、政府の危機管理・リスク管理に関する意思決定過程に加わり、リスクに関する正確な情報(政府が何を把握できていないかも含め)が入手でき、管理措置に関する政府の方針や見通しも分かる立場にいなければならない。
2011-07-11 16:45:25(続)たとえば放射線汚染に関して人々が不安には、放射線リスクそのものの大きさ以外に、除染の見通し、将来万が一健康被害があった場合の補償や医療補助の可能性、今現在避難することに対して「自己責任」で片付けられることなく補償されるかどうかなどの不安もある。
2011-07-11 16:45:41(続)リスコミ担当者には、単に物理的・医学的な解説だけでなく、そのような政府の管理措置に関する説明も求められるのであり、これについて責任をもって発言するには、やはり政府の意思決定の中に加わっていないといけない。
2011-07-11 16:45:57(続)その意味で、最も重要な「リスコミ担当者」とは政府のスポークスパーソン。枝野氏や細野氏など。「責任」や正統性という意味でも政治家の役割が重要なはず。リスコミ関係者(専門家)はむしろ黒子として、政府の意思決定全体のなかでの助言者として振舞うのが妥当。
2011-07-11 16:48:29(続)では、このような現状に対してリスコミ関係者はどうしてるのか。一つ言えるのは、まさに裏方的な仕事で表からは見えないが、3.11直後から官邸含め色んなところに対する助言は黒子的に行われているということ。
2011-07-11 16:49:00(続)ただし、そのような助言が行われていても、あれほど酷いコミュニケーションが続けられているのはなぜか。リスコミ関係者の「力不足」といえばそれまでだが、他方で、政府のオペレーション全体の中で助言が機能する余地は実は少ないし、助言に抵抗するような障害も存在しているという。
2011-07-11 16:49:17(続)実際、補償や除染、モニタリングなど管理措置に関する政府方針がちゃんと定まっていないこともあり(あるいは補償問題は出来る限り逃げたいという目論見もある?)、リスコミの内容が限定されてしまうという問題がある。
2011-07-11 16:49:29(続)また政府の中(官僚や政治家等)にはリスコミや危機コミについて理解している人はいないため、助言の意味がなかなか理解されないという問題もある。政府により近いところで関わってる放射線等の専門家が「頑固」で、話が通じないという指摘を聞いたこともある。
2011-07-11 16:49:44(続)そういう意味では、リスコミ関係者の最大の失策は、現在効果的な働きかけができていないということよりは、むしろ311以前から政府の中の人(及びその候補)に対するリスコミ教育・訓練をできていなかったことだし・・・
2011-07-11 16:49:56(続)・・・リスコミ関係者を政府のオペレーションチームに必ず入れるという体制を用意しておくよう説得できてなかったことだといえる。いずれにせよ「危機への備えは平時から」であり、リスコミに限らずそれを怠ってきたツケが311以降噴き出している。
2011-07-11 16:50:08(続)以上の通り、今の危機においてリスコミがそれ単独で(政府のオペレーションの外で)何か効果的なことができる余地は非常に少ないのが現状。
2011-07-11 16:50:20(続)ただそれでも、利用可能な公表データに基づいてリスクに対する適切な警戒水準について、放射線関係に詳しいリスコミ関係者がメディア等で働きかける余地は十分にあるし、それが現状で足りないという批判はその通りだとは思う。
2011-07-11 16:50:32(続)ただし、本来そういうリスコミは、放射線関係の専門家がリスコミの知識を身につけてやるのが一番効果的で、そういう人材育成とキャリアを保健物理や放射線防護、医療などの分野で用意しておくべきだったという問題は指摘しておきたい。他分野の専門家が有志で肩代わりしてる現状は本来異常。
2011-07-11 16:50:47@hirakawah 電力中研などでリスクコミュニケーションの研究・実践・調査などをやっていた事例がciniiなどで見えるけれど、どうも、住民をいいくるめるためのものとしか見えない。そういうこれまでの実績にそもそも問題があったのではないかなあ。目的が本来のアクシデント処理ではない
2011-07-11 16:54:53.@Historyoflife そうではない研究もあるんですが、支配的傾向は仰るとおりですね。想定してるフェイズも平時のリスコミであり、有事の危機コミではないですし。とにかく、こういう時に必要なものが殆ど準備されてこなかったというのは、自分含め最大の反省点です。
2011-07-11 16:59:47そういう「ダメな例」を明らかにするのは重要ですが、それを踏まえて大学でリスコミをやっている研究者は一般の人に「今」何を語るかを問いたい。将来ではなく、今 RT @hirakawah 電力中研などでリスクコミュニケーション… (cont) http://deck.ly/~dPh4D
2011-07-11 17:01:34