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同人誌違法アップロードサイト訴訟 控訴審判決(R2.10.6.知財高裁判決)を読む

著作権侵害に関連する当事者の主張と司法の判断箇所を一審・控訴審判決から引用した上で、控訴審判決についての法律・知財関係者のツイートを中心に収録。
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海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

裁判所はなんといったか? まず、大前提として、Xさんの漫画はXさんが創作したもので著作物であり、Xさんが著作権者であることを認めました。 Y社はこの点を争ったようですが、Xさんが独自に漫画を描いていることはたしかなので、Xさんの著作権が認められることにはさほど争いはないと考えられます。

2020-10-09 12:49:06
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

で、Y社の反論にはこう返しました。 「Xさんが元ネタのキャラクターをパクってるっていうけどさ、そもそもキャラクターは、具体的なアニメの絵そのものじゃなくて、具体的な絵を超えた、みんなが持ってる抽象的なイメージなわけ。つまりキャラクターは創作的な表現じゃないから、著作物じゃないよね」

2020-10-09 12:49:06
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

ここ、むちゃくちゃわかりにくいですよね。 実は、裁判所がここでいってる「キャラクター」は、みなさんがおそらくイメージされてる「キャラクター」とは違うのではないかと思います。 裁判所がいう「キャラクター」は、その登場人物の絵そのものではなく、背後の設定みたいなものですね。

2020-10-09 14:42:24
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

たとえば、ドラえもんを例にとってみましょう。 ドラえもんの設定は、未来からきた猫型ロボット、耳がない、青い…など。 この設定こそが裁判所のいう「キャラクター」です。 この設定をオリジナルに描いても著作権侵害にならないということですね。 ここは混乱しやすいので、ぜひご注意ください。

2020-10-09 14:42:25
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

さて、裁判所の判断に戻りましょう。 裁判所はXさんの漫画の元ネタがシリーズものである点にも触れています。 シリーズものの漫画の場合、前の漫画と後の漫画はテーマや設定、主要な登場人物は見た目や性格は同一で、後の漫画には新しい展開(ストーリー)が付けられるじゃないですか。

2020-10-09 14:42:25
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

そうすると、後の漫画は前の漫画をもとにこれをアレンジしたもの、難しい言葉でいうと二次的著作物なんです。 二次的著作物は、原作に新たな創作性を加えて創られたものをいいます。 たとえば、ある原曲に新たな伴奏をつけて編曲した場合、その編曲は、原曲をもとかなした二次的著作物です。

2020-10-09 14:42:25
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

この場合、編曲て新たに創作したのは伴奏部分になるので、編曲の独自の著作権はこの伴奏部分に発生します。 原曲の著作権はそのまま行き続けるわけですね。 だかは、編曲の著作権を侵害した場合、侵害されてるのは原曲の著作権か、編曲独自の著作権かを分けて考える必要があります。

2020-10-09 14:42:26
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

裁判所もこの点をとらえ、Y社に対し 「Xさんの漫画が元ネタの著作権を侵害してるっていうなら、元ネタのどのシーンか特定してよ。後のアニメなら、後のアニメ独自の創作的な部分を特定する必要があるよね。これを特定してないY社の主張は不十分でしょ」 このあたりはちょっと傍論感があるかもですね。

2020-10-09 14:42:26
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

裁判所の判断は続きます。 「Xさんの漫画と元ネタを比較したけど、主人公の見た目や服など基本的な設定部分以外は似てないよね。結局、Y社の著作権侵害の主張立証は不十分だよね」 裁判所の判断はいよいよまとめへ突入します。

2020-10-09 14:42:27
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

「Xさんの漫画は元ネタの著作権を侵害してないし、仮に侵害してたとしても基本的な設定部分に限られてて、それ以外の部分はXさん独自の著作権が成立してるよね。どっちにしろ、Xさんが、著作権侵害で損害賠償を請求するのはOK」 このほか、わいせつに関しても判断してますが割愛します。

2020-10-09 14:42:27
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

さてさてここからいえるのはこのあたりかと。 ・元ネタの設定(裁判所はこれを「キャラクター」といってます。混乱しやすいのでご注意を!)をパクっても著作権侵害にあたらない。 設定なのか表現なのか非常に微妙な判断なことも多く、表現が似ていれば著作権侵害にあたる可能性もあるのでご注意を。

2020-10-09 14:52:44
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

・元ネタの著作権を侵害している場合でも、自己の著作権侵害を理由に損害賠償を請求することは可能。 面白い判決なのでぜひご一読を。 courts.go.jp/app/files/hanr… リーディングケースであるポパイ・ネクタイ事件はこちら。 courts.go.jp/app/files/hanr… 先生方、間違いなどご指摘お願いいたします🙇

2020-10-09 14:52:44
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

たくさんの方に読んでいただきありがとうございます。 誤字が多くてすみません🙇 キャラクターについて、やはり勘違いしてる方がいらっしゃるようなので補足を。 裁判所がいっているのは、あくまで、設定(アイデア)は著作物ではないからこれをパクっても著作権侵害にはならない、ということですね。

2020-10-09 18:42:19
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

ここは当たり前で、たとえばキティちゃんの設定(アイデア)は「赤いリボンを付けて洋服を着た猫の女の子」なわけですが、この設定に著作権が発生するとすれば、誰も赤いリボンを付けて洋服を着た猫の女の子を描くことはできなくなるわけです。 それじゃあ文化の発展は阻害されてしまう。

2020-10-09 18:42:20
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

この設定をもとに、皆さんが思い描く「キティちゃん」とは全く別の絵を描けば何の問題もないわけです。 他方「キティちゃん」に似た絵を描けば、それは著作権侵害になり得ます。 著作権侵害かどうかは、あくまで「表現」が似ているかどうかの問題です。

2020-10-09 18:42:20
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

調べていただくとわかりますが、今回問題となった同人漫画の表現(絵)は元ネタの表現(絵)と似ているとはいいがたいかと。 仮に同人漫画が元ネタの絵そのものをパクってれば、当然著作権侵害になり得ます。また、服などちょっと変えたとしても、似ていれば依然著作権侵害になり得ますのでご注意を。

2020-10-09 18:42:20

上岡弘明 弁護士のねとらぼインタビュー記事

ねとらぼ @itm_nlab

弁護士にポイントを聞きました 【二次創作】漫画の「キャラクター」は著作物ではない? 「同人誌の法的位置づけ」を巡り画期的判決nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/20… @itm_nlab pic.twitter.com/tq1YjHUbFO

2020-10-09 19:16:43
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リンク ねとらぼ 漫画の「キャラクター」は著作物ではない? 「同人誌の法的位置づけ」を巡り画期的判決、弁護士にポイントを聞いた 同人作家が無断転載サイトを訴えていた裁判の控訴審が決着、判決文に意外な形で注目が集まりました。 50 users 68

―― キャラクター自体は著作物にあたらず、原作の「特定のシーン」に対して類似していなければ著作権侵害にはならないということですね。
上岡弁護士:そうですね。これだけで判決としては十分なのですが、裁判所はさらに踏み込んだ判断をしました。仮に原著作物のシーンが特定されたとしても、著作権侵害が問題となり得るのは、キャラクターの「容姿や服装など基本的設定に関わる部分」のみ、しかも複製権侵害に限られるとし、「その他の部分については、二次的著作権が成立し得る」と述べたのです。複製権侵害の危険性は残る文章ですが、本判決では原作と同人誌で主人公などの容姿や服装に共通ないし類似する部分があると認めつつも、侵害の立証としては不十分としています。限界は示されていませんが、一般的な同人誌で(少なくとも主人公などの容姿や服装が共通しているだけでは)複製権侵害と認定されるケースはまれではないかと思われます。
―― 二次創作同人誌であっても「二次的著作権が成立し得る」と明言されたのは大きいですね。
上岡弁護士:そういうことになります。ただし、今回のケースはあくまで「同人作家と第三者の裁判」です。二次創作同人誌が“二次的著作物”だとすると、原著作物の著作権も及ぶという判例がありますので(※)、今後もし「原作者と同人作家の裁判」となった場合には、さまざまな点で異なる判断となる可能性はあります。
※キャンディ・キャンディ事件判決(最高裁第一小法廷平成13年10月25日判決)

c.f. 平成13年10月25日 最高裁第一小法廷判決《キャンディ・キャンディ事件》

 原審の適法に確定したところによれば,本件連載漫画は,被上告人が各回ごとの具体的なストーリーを創作し,これを400字詰め原稿用紙30枚から50枚程度の小説形式の原稿にし,上告人において,漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き,おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。
【要旨1】この事実関係によれば,本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする二次的著作物であるということができるから,被上告人は,本件連載漫画について原著作者の権利を有するものというべきである。そして,二次的著作物である本件連載漫画の利用に関し,原著作物の著作者である被上告人は本件連載漫画の著作者である上告人が有するものと同一の種類の権利を専有し,上告人の権利と被上告人の権利とが併存することになるのであるから,上告人の権利は上告人と被上告人の合意によらなければ行使することができないと解される。

《追補》判決に言及した各位の補足コメント

スドー氏をはじめ前項までに取り上げたアカウントを中心に収録しています。

スドー🍞 @stdaux

判決に対する反応でいくつか気になった点として 「元ネタと同人誌間の権利には関係ない」→わりと関係ある。海老澤先生の要約のとおり。 「転載サイト側が立証に手抜きをした」→控訴審でサイト側が出した趣意書は50頁以上、書証も数百頁ある。立証不十分というのはそれだけ要求水準が高いということ

2020-10-09 17:13:45
スドー🍞 @stdaux

法律用語としての「二次的著作物」と、出版業界などで雑に使われている「二次創作」の定義にかなりズレがあることが諸悪の根源のような気がしてきた

2020-10-14 10:27:03
スドー🍞 @stdaux

著作権に詳しい先生というのは基本的に出版社などの顧問をしていることが多いわけで、同人誌みたいな問題についてはコメントしづらいだろうなという先入観がある

2020-10-19 15:43:13

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