帝国憲法に殉死した清水澄法学博士の遺言

最後の枢密院議長 清水博士は、帝国憲法に殉じて投身自決しました。 彼が命を賭してまで戦後日本人に伝えようとしたことを読み解くため、原文より平易な言葉になるよう、書き起こしを行いました。
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ふぐば🐽 @Fuguba

條約の大権について。 條約は、天皇が全権委員を任命し、調整を行わせ、調印をさせる。その後枢密顧問に諮詢ののち、批准または裁可せられ成立する。批准は大権に属するため、拒んだり条件を追加するのを妨げない。たとえば、昭和4年條約第一号戦争放棄に関して文中の、

2020-09-06 19:21:40
ふぐば🐽 @Fuguba

「『其の各自の人民の名に於いて』なる字句は帝国憲法の條章より観て日本国に限り適用なきものと了解することを宣言する」ことを條件として批准せられた、というようなことがある。

2020-09-06 19:23:18
ふぐば🐽 @Fuguba

ふぐば註:このことからも、「人民の名に於いて」なる字句が、我が国体に反することは痛感する。「主権の存する日本国民(The Japanese People=人民)の総意」によって天皇の地位を規定するがごとき、憲法典と称する怪文書が、憲法違反の存在であることは論を俟たない

2020-09-06 19:28:11

君主国の臣民(国民)のことは、"subject"と言います。
日本国憲法の「国民」は"people"と対応しています。

ふぐば🐽 @Fuguba

こと「は」 こと「を」の誤り

2020-09-06 19:33:38
ふぐば🐽 @Fuguba

第33條について。 三権(政府・議会・裁判所)のうち政府と裁判所は国権運用に必要な機関で、仮令専制政体でも欠くことができない構成であるが、ただ議会は立憲政体に限り重要不可欠の機関で、立憲政体の採用によって始めて創設されるものである。我国でも、明治維新以来政府は常に存在し、

2020-09-09 05:25:37
ふぐば🐽 @Fuguba

裁判所も古くから設置され国政運用して来たが、議会は立憲政体を採用した帝国憲法の施行によって設置されたのである。ここで言う所謂議会とは、国民選出の議員を以て構成員の一部と為すものを指す。憲法施行以前も議政院、上下両局、公議所、集議員、左院、元老院等の設置があったが、これ等は他日

2020-09-09 05:29:24
ふぐば🐽 @Fuguba

公選議会を開く試設であり、国民選出の議員を構成員に含むものではないため、所謂議会とは言えない。議会は立憲政体の特色であり、憲法上最重要の統治機関である。 議会は全国民を代表すると言っても、構成員全部を公選議員とすることを要するのではなく、非公選議員の混入を妨げない。また、

2020-09-09 05:33:30
ふぐば🐽 @Fuguba

普通選挙であるか、財産・教育等で資格を制限する制限選挙であるかは問わない。公選議員は国民の総意を代表することを任務とし、自身への投票者や選挙区民のみを代理するものであってはならない。我国には公選に依らない貴族院を設置するが、これは近世の議会の性質に反するものではない。

2020-09-09 05:37:43
ふぐば🐽 @Fuguba

議会の国法上の地位は各国おなじではない。国体が異なるのに従い、その地位もまた異なる。共和国に於いては国権は国民に在り、議会は国民の国家権力を代行する。従って、議会が法律案を議決したら直ちに有効に成立する。しかし我国のような真正君主国体に在っては、統治権は天皇に帰属し、

2020-09-09 05:40:13
ふぐば🐽 @Fuguba

議会は単に国民の意思を代表して天皇の国政統治に参与するのみであるため、議決は当然法律の成立とはならない。また、同一の国体に在っても、学者の見解は必ずしも一致しない。ここに3例を挙げて論評しよう。 第1【統治権主体説】曰く「議会は統治権の主体である」と。

2020-09-09 05:43:06
ふぐば🐽 @Fuguba

我国に於いて統治権の主体が天皇であることは既に縷々述べた所であり、本説の採用すべきでないことは勿論である。 第2【立法権主体説】曰く「議会は立法権の主体である」と。立法・司法・行政が互いに独立対等に分立するという所謂三権分立を前提とするものであるが、統治権が唯一不可分にして

2020-09-09 05:45:42
ふぐば🐽 @Fuguba

このような三権に分割することができないことは既に述べたところであり、立法権も統治権の一面にしてその主体は天皇であること多言を俟たない。 第3【国民代表機関説】曰く、「立憲国に於いては国民全体がひとつの国家機関たる地位を有するも、この機関は自らその権限を行使することができないので、

2020-09-09 05:48:07
ふぐば🐽 @Fuguba

議会が代わりに国民の名に於いてその権限を行使するものである」と。しかし君主国に於いては原則として国権の淵源は君主であり国権の総攬者もまた君主である。故にその権限を行使する者もまた君主自身であり、特別の法律上の理由のない限り、君主以外の第三者がこの行使に当たることはなく、且つ、

2020-09-09 05:50:57
ふぐば🐽 @Fuguba

我が国体の下に於いては、国民全体をひとつの国家機関としてこれに君主の国権行使を委任するようなことはありえない。 以上の諸説いずれも帝国議会の地位に適用すべきではない。

2020-09-09 05:53:32
ふぐば🐽 @Fuguba

私(清水)は、「帝国議会は全国民の意思を代表して合議制に依り立法及び予算の制定等重要なる国務に参与することを権限とする憲法上の機関である」と定義するのを最も相当であると信ずる。 議会は全国民の意思を代表するもので、その構成組織を定めるには特別の注意を要する。

2020-09-09 05:55:13
ふぐば🐽 @Fuguba

何を以て全国民の意思を定めるべきか。最大多数国民の意思を補足しようとするなら国民投票でこと足りる。しかしこうして得られた多数者の意思なるものが、必ずしも正義に合せず全国民の利益に背馳(はいち)することがあるのは容易に想像し得るところである。このような意思を以て国民の意思と

2020-09-09 05:58:14
ふぐば🐽 @Fuguba

なすべきものではない。ここに於いて著者は、このような多数者の意思と別個独立に、真に正義の要求を満たし国民の幸福を保持し国家の繁栄に資するべき抽象的なる全国民の意思なるものを捕捉すべきと考える。そして議会の構成組織は恰もこの抽象的なる国民の意思を代表するのに

2020-09-09 06:02:07
ふぐば🐽 @Fuguba

最適当なるものでなくてはならない。故に、議会は必ず公選された議員を構成員の一部としなくてはならないとは言え、前記の目的を達するために非公選議員を加えるのを妨げるものではない。また、財産または教育上一定の資格ある者に限る制限選挙か普通選挙かを問わないことも既に述べた。

2020-09-09 06:05:31

「全国民の意思」というのはアンケート調査とは違うのです。
単純に多数決を都度都度繰り返したとしても、
なんの整合性もない全国民の利益に反する政治になってしまいます。
本当に国民の幸福、国家の繁栄を図るための方策が必要です。

ふぐば🐽 @Fuguba

そして、このようにして構成された議会の議員は一団となり全国民の意思を表明し国政運用に反映させるべきものであり、決して一部の選挙人を代理しまたは一地方民の意思のみを代表するものではない。

2020-09-09 06:09:17
ふぐば🐽 @Fuguba

第34條 貴族院の組織大綱の規定 二院制を採用する諸国にあっては、上下両院の組織を異にするのを通例とする。蓋し二院制の目的は両院の組織を異にするのでなければ充分に達することができないからである。その一院たる上院の組織も、諸国軌を同じくしない。合衆国に於いては各邦または各州の代表者を

2020-09-09 13:07:58
ふぐば🐽 @Fuguba

以て組織することが通例である。単一国では貴族を以て上院を組織するものと、公選議員との二種がある。公選議員といっても、下院議員と全く選挙の條件を異にするを例とする。貴族で組織するのは君主国に多く英・伊等。公選は主として民主国で仏・蘭等。我国は貴族のみではないが、貴族を主たる

2020-09-09 13:11:46
ふぐば🐽 @Fuguba

要素とし公選議員を含まないため、どちらかと言えば前者に属する。 貴族院令によればその資格は①皇族②公侯爵③伯子男爵各その中から選挙された者④国家に勤労ありまたは学識ある者より特に勅任された者である。

2020-09-09 13:24:35
ふぐば🐽 @Fuguba

公侯爵は世襲議員である。世襲としたのは、祖先以来の忠君愛国の血統を承けるのみでなく、公侯爵が他に比べ少数であることにより。しかし、必ずしも公侯爵の者が議員たるに適することを保障できないのだから、寧ろこの制度を廃して伯子男爵同様、同爵位者の選挙に依って

2020-09-09 13:29:07