尿中の放射性セシウムによる膀胱壁の被曝線量の計算

児玉龍彦教授の参考人発言で紹介された論文http://1.usa.gov/plcSao をもとに、尿中の放射性セシウムによる膀胱壁の被曝線量を概算する計算問題を考えてつぶやいたら、@MAKIRIN1230 さんからご回答と解説をいただきましたので、いきさつをまとめました。計算結果が出た後もさらに議論が続いたので、こちらもまとめに追加しました。その後原論文を改めて見直した結果、新しい問題点が浮かび上がり、意外な展開に。平均値の2倍以上の標準偏差ってあり? 9月に入り放射線医学総合研究所からも「尿中セシウムによる膀胱がんの発生について」http://bit.ly/pFSjAP という文書が出され、@MAKIRIN1230 さんが比較検討して下さいました。計算モデルが違うため放射性セシウムと放射性カリウムによる被曝線量の差の大きさが違いますが、放射性セシウム<放射性カリウムであることに変わりはありません。
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nao @parasite2006

【計算問題。解答求む】容積500 mLの球がCs-137濃度6 Bq/Lの液体で満たされているとき、球の表面の被曝量を1日あたりで計算せよ。ただし線量変換係数には経口摂取時の成人の臓器別等価線量換算係数(http://bit.ly/pWjolb のp16)から膀胱壁の値を使用

2011-08-04 15:27:04
りせ @Lisse666

@parasite2006 いやいや。膀胱は内容量によって伸び縮みしますから、そこも加味するともう少しややこしい計算になるかと。膀胱の排尿時の最小用量から排尿直前の最大容量まで、これを、夜間と昼間で計算わけして。。。もちろん、夜間は尿生産量が少なくなりますが、

2011-08-04 16:12:18
りせ @Lisse666

@parasite2006 そこまで条件を仮定するのはちょっと難しいかなぁ。排尿した場合の膀胱の状態、これって、中身は空っぽになるんでしたっけ? ちょっと忘れてしまいました。ごめんなさい。

2011-08-04 16:13:22
りせ @Lisse666

@parasite2006 いずれにせよ、計算、楽しみにしています。

2011-08-04 16:13:53
りせ @Lisse666

@parasite2006 ごめんなさい。今、問題文見ました。たぶん、500mlはちょっと容量として大きいんじゃないでしょうか? たぶん、350ml~400mlくらい? ちょっとうろおぼえだけど。そして膀胱は伸び縮みして、通常1日1.8リットル通過。

2011-08-04 16:16:07
nao @parasite2006

@Lisse666 いや、出発点は思い切って単純化しないと物理の人たちには動いてもらいにくいものですから。体積変化の考慮とかはその次の段階の話です。ほんとは直径で指定したかったのですが、ぱっと見でわからなかったので、Wikipediaで見た成人の膀胱の平均容量を採用しました。

2011-08-04 16:48:17
りせ @Lisse666

ほほお。なるほど! 私は実務どっぷり&研究には明らかに不向きな人間なので勉強になります。 膀胱の形や容積、心当たりがあるので、ちょっと情報収集してみますね。@parasite2006

2011-08-04 18:42:37

いただいたご回答と解説(膀胱を半径5cmの球と想定)

MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

お知りになりたいことは、尿に含まれる放射性物質から受ける膀胱壁の線量がどうなるのかということだと思いますので、膀胱壁の等価線量係数を用いるのではなく(これは膀胱壁が取り込んだ放射性物質から出るβ線が主な寄与)、次のような計算でよろしいでしょうか。@parasite2006

2011-08-04 21:59:38
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

3BqのCs-137半径5cmの球面内に一様に分布する場合、その球面上のγ線による線量は1.4E-10Sv/hぐらいになるようです。実際にはこの他に球面近くのCs-137から放出されるβ線の影響がプラスされると思います。@parasite2006

2011-08-04 22:00:04
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

β線の影響は、Cs-137のβ線の平均エネルギーを0.07MeVとし3Bqから出るβ線のエネルギーを球内の液体全体が吸収するのと同程度の吸収によると仮定すると、(1.1E-14J×1.1E+4個/h)/0.5kg≒2.4E-10Sv/hとなるようです。@parasite2006

2011-08-04 23:41:49
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

1日あたりにすると、(2.4+1.4)E-10Sv×24h/day≒9.1E-9Sv/dayぐらいでしょうか。Cs-137のβ線の平均エネルギーは次の資料の値を用いました。http://t.co/grJtpoJ @parasite2006

2011-08-04 23:59:30
nao @parasite2006

@MAKIRIN1230 早速のご教示有難うございます。ご明察の通り尿に含まれる放射性物質から受ける膀胱壁の線量です。成人の膀胱の平均容量500 mLに対応する球の半径がとっさにわからずああした形で出題させていただきましたが、半径5 cmの球だと容積は約523 mLになるのですね

2011-08-05 15:55:32
nao @parasite2006

@MAKIRIN1230 膀胱壁の等価線量係数は組織内の細胞が取り込んだ放射性物質からの放射線の影響を表わすものだとのご指摘、感謝いたします。存じませんでした。同様の注意は血液中の放射性物質が血管表面に及ぼす影響を考えるときにもあてはまりますね。

2011-08-05 16:02:27
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

膀胱の容積変化の影響も考察されたいようなので、その場合は次の形の方が使いやすいかもしれません。単位体積あたりのベクレル数がρのCs-137が半径aの球面内に一様に分布する場合、球表面上での線量は2kρπaとなり、濃度が一定なら半径に比例するようです。 @parasite2006

2011-08-05 16:44:32
nao @parasite2006

@MAKIRIN1230 お申し越しの資料http://t.co/grJtpoJ ではCs-137のβ崩壊の際放出されるβ線のエネルギーが0.19 MeV、2通りある崩壊経路のうち主要な方(95%)の中間体Ba-137mにより放出されるβ線では0.065 MeVとありますが(続)

2011-08-05 16:55:29
nao @parasite2006

@MAKIRIN1230 (続き)Wikipediaに出ているCs-137の崩壊図http://bit.ly/plVwnz によりますとCs-137から中間体Ba137mへの変化(94.6%)で放出されるβ線のエネルギーは0.512 MeV(続く)

2011-08-05 17:05:33
nao @parasite2006

@MAKIRIN1230 (続き)よりまれなCs-137からBa157への直接変化(5.4%)で放出されるβ線のエネルギーは1.174 MeVとなっています。

2011-08-05 17:13:26
nao @parasite2006

@MAKIRIN1230 (なおWikipediaの図では、Ba137mからBa137への変化では85.1%が0.6617 MeVのγ線を出すとされていますが、この段階でβ線が放出されるとは書いてありません)

2011-08-05 17:20:16
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

β崩壊では電子とともに反電子ニュートリノ及び娘核が生成され、それらが崩壊で生るエネルギーを分け合うのですが、反電子ニュートリノの質量がかなり小さいため、電子が得るエネルギー分布は幅広くなり、Wikipediaなどではその最大値が書かれているようです。@parasite2006

2011-08-05 17:23:20
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

1.174MeVや0.512MeVは発生するβ線のエネルギーの最大値で、平均値がそれぞれ、0.19MeV、0.065MeVになるようです。実は私も4月まで、平均値が最大値に比べてこんなに小さくなるとは知りませんでした。@parasite2006

2011-08-05 17:30:30
nao @parasite2006

@MAKIRIN1230 なるほど、シャープなピークが出るγ線スペクトルと違って、β線のスペクトルはものすごく幅が広くて、エネルギーの平均値をとると最大値よりぐっと小さくなってしまうのですねhttp://bit.ly/nrVUWh よくわかりました。

2011-08-05 17:35:57
nao @parasite2006

@MAKIRIN1230 最後に恐れ入りますが、お手すきの時で結構ですので後学のためお使いになった計算式の出典をぜひ教えていただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。

2011-08-05 17:45:07
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

計算は独自にやったので出典はありません。測定点をz軸上の(0,0,z)とすると、z軸とφの角をなす方向で原点からrの距離にある点からの距離の2乗分の1は1/(z^2+r^2-2zr×cosφ)となるので、rについて半径a(≦z)内で3重積分し、(続く)@parasite2006

2011-08-05 18:02:51
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

π{2a-(z^2-a^2)/z×ln{(z+a)/(z-a)}}を得て、この式z→aの極限をとると、2πaとなります。z→∞の極限の振舞いを調べると、点線源の場合の振舞い(zの2乗に反比例)に一致したので、たぶん計算は大丈夫と思います。@parasite2006

2011-08-05 18:12:27
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