産業革命とフランス革命とか

16世紀から19世紀のヨーロッパについて個人的に本で読んだこととか考えたことを書いていきます。
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孫二郎 @344syuri

その理想は全ての産業をして国王に仕えさせ、国家の一存で経済を回すことにあった。保護貿易はいわばフランス版の鎖国であり、この最初の計画経済プロジェクトの重要な一環であった。

2021-10-27 19:18:07
孫二郎 @344syuri

もちろん、英蘭の熾烈な毛織物競争から自国市場を守ることも計算の内である。 コルベールは両国に対する価格競争力を維持するために関税を課し、かつ穀物が高騰し賃金が押し上げられないように意を砕いた。

2021-10-27 19:19:20
孫二郎 @344syuri

そして高価で利ざやの大きいウールンを安く生産することで、国庫に輸出益が転がり込むことを期待した。ラシャ商人の面目躍如といったところか。 しかし残念ながらウールン狙いはうまくいかなかった。いくら安上がりに織ったとしてもウーステッドの経済性には到底追いつかなかったのである。

2021-10-27 19:20:02
孫二郎 @344syuri

ウールンを必要としているのは北欧だったが、バルト海に強いコネクションを持つオランダの牙城はついに崩せなかった。 とはいえ、「君主の国」にふさわしい一元的な経済政策を構築することには成功したコルベールは1683年にこの世を去った。

2021-10-27 19:20:38
孫二郎 @344syuri

が。 残念なことに、この精緻なシステムは後任の財務総監にはうまく動かすことのできない代物だった。

2021-10-27 19:20:58
孫二郎 @344syuri

特権マニュファクチュアを守るためには莫大な補助金が必要だったが、その予算を持ってくる豪腕はコルベール以外には持ちえなかったのである。 かくしてフランスには貧富の差だけが残り、1世紀の時を隔ててフランス革命の伏線となっていく。

2021-10-27 19:21:30

石炭の有効活用

孫二郎 @344syuri

石炭は近世イギリスの人々にとってなじみ深い燃料だったに違いない。硫黄分を含み燃やすと臭いのが難点だが、ノーサンバーランドを中心にヨーロッパの最大の採掘量を誇り、庶民にその安さは魅力的だった。

2021-10-28 19:40:14
孫二郎 @344syuri

それは木材が枯渇して木炭や薪の値段が上昇したことの裏返しでもあった。イギリスは自然破壊の先駆者でもあったのである。 ともあれ、潤沢な石炭は従来の燃料をよそに安定した価格を保ち、やがて地方からロンドンへの輸送費を差し引いても余りある経済性を持つにいたった。

2021-10-28 19:40:38
孫二郎 @344syuri

石炭には硫黄臭の他に火が消えやすいという難点があり、家庭では狭い空間に封じ込めて使う必要があった。暖炉と煙突の誕生であった。

2021-10-28 19:40:56
孫二郎 @344syuri

一方、炭鉱では排水の問題が発生していた。 ガリレイらの実験により、それまで使われていたポンプはどう頑張っても大気圧以上の吸い上げができないことが判明したのだ。 これでは炭鉱の浅い部分(8.5m)までしか採掘できない。大気圧を超える圧力を生む動力源、何らかのブレークスルーが必要だった。

2021-10-28 19:41:53
孫二郎 @344syuri

ニューコメンの蒸気機関はこのような背景のもとで発明された。 それは未熟で効率の悪い機関ではあったが、ただ同然の石炭くずを動力に変えることにはともかくも成功した。 とりわけ旧来の動力である水力や馬力を利用できないような場所では貴重な動力源だった。

2021-10-28 19:42:18
孫二郎 @344syuri

そしてこの産業革命の小さな一歩は、石炭という恵みに祝福されたイギリス以外では踏み出されえなかったのである。

2021-10-28 19:42:41
孫二郎 @344syuri

「これは使いようによってはかなり便利だ」と気付いた英国人技術者は早速蒸気機関の改良に乗り出した。 そのうちある者は多大な業績で歴史に名を残し、そうでない者はささやかな改良を行った。

2021-10-30 05:40:50
孫二郎 @344syuri

蒸気機関の改良点ははっきりしていた。燃料の食い過ぎである。ここを狙えばどのような改造でもすぐに改良となった。 その結果あまりに燃費が良くなったので、石炭が高価な国でも蒸気機関を使うことが可能になった。

2021-10-30 05:41:12
孫二郎 @344syuri

こうして産業革命は普及した。イギリスは自ら努力して新技術のコモディティ化にまい進した最初の国となった。

2021-10-30 05:41:42

薄くて軽くてやわらかくて暖かい

孫二郎 @344syuri

インド産の綿布は冬暖かく夏涼しく、古くから東方貿易の対象として人気があったが、香辛料と同様イスラム勢力の中抜きが多く高級品扱いだった。しかしイギリス東インド会社がインドからの直輸入を始めるとその値段は下がり、綿織物の一大ブームが起こる。

2021-10-30 19:51:46
孫二郎 @344syuri

とはいえインドの人件費はヨーロッパ諸国に比べてもさらに低く、これを大量生産して売りさばくのは困難かに思われた。 だがイギリスには毛織物生産で培われた商業ネットワークと無限の可能性を秘めた機械力があった。ここから産業革命を代表する発明の連鎖が始まる。

2021-10-30 19:52:14
孫二郎 @344syuri

まずは飛び杼が発明され、織るほうの効率がぐんと高くなった。すると今度は織る糸が足りなくなる。

2021-10-30 19:52:34
孫二郎 @344syuri

糸には経糸用と緯糸用があり、ジェニー紡績機は緯糸を紡ぐのに優れ、水力紡績機は経糸を紡ぐのに優れていた。 両方のいいとこ取りをして生まれたミュール紡績機は、両方の糸を紡げたばかりか熟練職人の手仕事でしか紡げなかった最高級の糸まで紡げた。

2021-10-30 19:53:09
孫二郎 @344syuri

これらの機械を支える仕事、綿の洗浄、梳綿、繰糸などの工程も洗練され、機械化された。 糸の大量生産に目途が立ったところで、今度は織る方が追い付かなくなってきた。これを蒸気機関で解決したのが力織機である。

2021-10-30 19:53:53
孫二郎 @344syuri

役者は出揃った。イギリスの綿布生産量は急拡大し、かつての主力商品だった毛織物まで抜き去り、世界市場をほしいままにする存在に至らしめた。 この連鎖反応は非常に分かりやすいため、産業革命の典型として教科書にも載っている。

2021-10-30 19:58:05

プロト工業化

孫二郎 @344syuri

「マルサスの罠」という現象がある。 自然状態では人口の増加率は常に食料の生産効率を上回り、耕作可能な土地を耕しつくすと破滅的な飢饉が待っているという説である。 だが、こんにち、少なくとも先進国がマルサスの罠を現実的な危機であると考えている人はほとんどいない。なぜか。

2021-10-31 18:37:25
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