産業革命とフランス革命とか
17世紀フランスの対外貿易は振るわない。販路をなかなか見つけられない上、製品の供給体制も時代遅れになりつつあった。 昔ながらの都市ギルドによる手工業を、都市近郊の農村の労働力を当てにした問屋制家内工業が補うスタイルである。 コルベールが整えた強固なヒエラルキーがいまだに残存していた。
2021-11-03 12:00:3918世紀後半にギルド規制が緩和されると、ようやくフランスでもマニュファクチュアが勃興し始める。生産物は毛織物やリンネルである。 一方で、出来上がった工業製品の販路開拓は芳しくなかった。国内市場は未成熟、欧州市場では後発、植民地は七年戦争中イギリスに大いに切り取られてしまった。
2021-11-03 12:01:15工業製品などよりもっと儲かったのは残りの植民地から輸入された砂糖やコーヒーの北欧・イタリア向け再輸出である。これが全輸出の3分の1を占めた。 こういった再輸出は儲かることは儲かったが、繊維工業のように裾野が広くなく、国内産業への貢献はあまり大きくなかった。
2021-11-03 12:01:48フランスでの出世の王道は、やはり大工場の親方から地主に転身し、最終的には貴族のポストを金で買って箔をつけることであった。 ところが規制緩和でにわかにブルジョワが増えると、今度は売るべきポストが足りなくなる事態となってきた。
2021-11-03 12:02:27こうして成り上がる道を閉ざされたブルジョワは、明日食べるパンにも事欠く貧民と同じように都市内の不満分子となった。 新興ブルジョワは貴族の位を持たないため、免税特権を持たず、第三身分として重い税負担の矢面に立たされたのだから無理もない。
2021-11-03 12:02:49しかもブルジョワは経営に必要な読み書き計算能力を持ち、中にはルソーやヴォルテールに触れたインテリも多かった。 都市貧民はその数が危険であり、都市ブルジョワはその知識が危険だった。 審判の日が近づいている。
2021-11-03 12:03:55フランスのいちばん長い日
何度となく煮え湯を飲まされてきたイギリスにアメリカ独立という特大の意趣返しができたまでは結構だったが、アメリカの貿易相手はそれまでと同じイギリスが主であり、フランスには経済的な恩恵はさしてもたらされなかった。 時の財務長官ネッケルの手腕により増税を免れたことだけが救いだった。
2021-11-04 21:49:34利益の出ない対外戦争、膨れ上がった名目ばかりの貴族への俸給、ピンハネの悪質さがいよいよもって看過しがたくなった徴税請負人、積もりに積もった国債の利息支払い。マリー・アントワネットの放蕩などこれらの問題の前には小銭のようなものだった。
2021-11-04 21:50:04赤字国債の発行も限界であった。これだけの額の国債を引き受けうる金融業者はほとんどなかったし、あったとしても金利は法外なものとなったであろう。フランス国家の信用はもはや地に墜ちていた。
2021-11-04 21:51:26抵抗勢力を排除するため、王には味方が必要だった。まずは名士会議が招集されたが、名士会議は「新税を科すなら三部会に諮れ」とにべもない。
2021-11-05 18:58:04ところがこの年、フランスはまたも天候不順に見舞われた。不作によって政府が支払い能力を失うことを恐れた金融業者が軒並み貸し渋りに出る。 王は国民に人気の高いネッケルを再登板させ、彼の手腕で当座の資金繰りには目途が立った。
2021-11-05 18:58:52しかし、構造改革が必要なことは誰の目にも明らかだった。全国三部会がついに開催された。 新たに開催されるべき全国三部会ではまず議決の方法から紛糾する。またも名士会議が催されたが、案の定具体的な結論は出ない。
2021-11-05 18:59:41ネッケルは第三身分の議員を倍増し、その協力を基に改革を進めるプランを披露し、王は逡巡しながらもゴーサインを出した。 しかしゴーサインを出しておきながら、王はあくまで身分ごとの議決にこだわった。これでは第三身分の議員をいくら増やそうと2対1の戦いにしかならない。
2021-11-05 19:00:05次にやってくるのが軍隊であることは歴然としていた。恐怖にかられた民衆は、自衛のために廃兵院を襲って武器を奪取した。 続いて、さらなる武器を求めてバスチーユ要塞に押し掛けた。1789年7月14日、バスチーユ陥落。フランス革命が始まった。
2021-11-05 19:00:45フランス革命の影響はあまりに多岐にわたるため、ここでそのすべてに触れることはできない。とりあえず、産業面における変動についてまとめることにしよう。
2021-11-06 02:01:07・英仏通商条約の破棄:イギリスとの自由貿易を破棄し、国内産業の保護に舵を切る。工業を担うブルジョワジーや都市民の要求に沿った政策。 ・封建制の無償廃止:これまで領主に年貢を払って耕してきた土地は無償で農民のものとなる。農奴の悲願がついに果たされた。
2021-11-06 02:01:28・大徴用令:国家総動員法。革命の果実を守り抜くために防衛力を強化した。その軍事力はナポレオン戦争で発揮され、赫赫たる武勲と勝利をフランスにもたらし、最後は働き盛りの男が極端に少ないいびつな人口バランスだけが残った。
2021-11-06 02:01:54・私的所有権絶対の原則:ナポレオン法典によって確立。資本主義の理論的礎となる。 ・フランス銀行の創設:イングランド銀行に遅れること100年、中央銀行の設立によって財政の透明性が確保された。
2021-11-06 02:02:21フランスはこの後も革命と反革命の間を行き来しながら、その痛みに身悶えしつつ近代化の最前線を進み続けた。しかし打ち続いた戦争による人口の減少が暗い影を落とし、軍事的にはナポレオン時代の栄光を取り戻すことはついになかったのである。
2021-11-06 02:07:20