erisogaiの輪るピングドラム考察

輪るピングドラム(アニメ)の考察です。未完成のメモですので足りない所も多々あるかと思います。誤字脱字はご容赦ください。随時編集・追加予定。
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えりそ @erisogai

9話の全体の流れは、1話のストーリーを別角度から捉えた(陽毬視点で)もの・どういうわけで陽毬がプリクリ様に成るに至ったか、というものだった。水族館であのまるいペンギンたちを見掛けた陽毬は、晶馬のもとをふらふらと離れ、3ちゃんの進むあとを追って地下深く続く怪しいエレベーターに乗る。

2011-09-09 06:18:20
えりそ @erisogai

3ちゃんが押した最地下の階数は「61」階。これは「ムイ」、つまり陽毬の「ムイシキ=無意識」に降りてゆく、ということを意味している。地下61階で開いたドアの先は、溢れる緑とその向こうには「陽毬」がいつも訪れている市立図書館。陽毬はそのなかに入ってゆく。

2011-09-09 06:21:04
えりそ @erisogai

図書館の入り口には七つの大罪について書かれたレリーフが。これはひとまず措いておくとして、陽毬は図書館で以前に本を借りていたらしく、返却口にて返却する。その際に新しく借りる本を司書に訊ねる。「『かえるくん、東京を救う』っていう本ありますか?」

2011-09-09 06:25:15
えりそ @erisogai

『かえるくん、東京を救う』」はいうまでもなく村上春樹著『かえるくん、東京を救う』。以下にわたしが引用するのは、自宅にあった『かえるくん、東京を救う』(新潮文庫『神の子どもたちはみな踊る』所収)から。

2011-09-09 06:28:20
えりそ @erisogai

この物語のあらすじをごく簡単にまとめるとこう。或る日新宿の銀行員・片桐のもとに「かえるくん」と名乗る生き物があらわれ、かえるくんは片桐に「ぼくがここにやってきたのは、東京を壊滅から救うためです」と言う。「ぼくが片桐さんと一緒に東京安全信用金庫新宿支店の地下に降りて、そこで

2011-09-09 06:34:25
えりそ @erisogai

みみずくんと戦うのです」と言う。なんだ?と訝しみながらも片桐はかえるくんにひたすら流されてゆき、最終的にはどうやらおぼえていない夢の中で(拳銃事件に巻き込まれて昏睡していた≒看護婦の話では道端で昏倒していただけ)かえるくんと一緒にみみずくんと戦ったようで、彼は東京を救う。

2011-09-09 06:36:56
えりそ @erisogai

『かえるくん、東京を救う』が所収された「神の子どもたちはみな踊る」は連作「地震のあとで」と題された連作短編で、かえるくんのも他作品と同様に95年の阪神淡路大震災をモチーフに作られたもの。

2011-09-09 06:39:19
えりそ @erisogai

簡単な構造分析のひとつとしてこの作品はつぎのように考えることが可能。この作品は地震をベースに「横のつながりの断裂」を描いた作品であると。地下に巣食うみみずくんとやらは、東京で大地震を起こして遣ろうと画策している。大地震とはつまり、「悲劇」=「断裂」=「AとBを結ぶ交通機能の崩壊」

2011-09-09 06:44:19
えりそ @erisogai

大地震が起こされることによって近代社会は横のつながり(=小さな物語=連続循環する「駅」)を分断され、何も出来なくなってしまう。ところでこの大地震というのは、イコールの存在として「恐慌」を示唆している。

2011-09-09 06:46:33
えりそ @erisogai

なぜ恐慌が大地震とイコールになるのかはつぎの文章からうかがえる。かえるくんの説明によるとみみずくんの姿というのは「なにしろ口と肛門の区別もつかないようなぬるぬるした奴だし、大きさは山手線の車両くらいあります」のだという。

2011-09-09 06:52:22
えりそ @erisogai

口と肛門の区別がつかないということはみみずくんはつまり円環形態なのであり、この円環=循環から連想されるのは経済学者ニコライ・コンドラチェフによって示された「コンドラチェフの波」である。コンドラチェフの波とは主に技術革新によって引き起こされた50周期の長期型の景気循環のこと。

2011-09-09 06:54:55
えりそ @erisogai

景気循環とはひとくちに説明すると、経済活動のあるひとつの水準・景気において循環的にみられる変動・変化のこと。コンドラチェフの波は50周期、これは年数はやや異なるものの、あるモノの臭気と酷似してはいないか、つまり地震(=50~60年周期)と。

2011-09-09 06:57:53
えりそ @erisogai

大地震に恐慌をからめるヒントとしてまた重要なのは、地震から人々を救う運命を授けられた主人公の片桐が「銀行員」であるという点である。

2011-09-09 07:00:04
えりそ @erisogai

ここで、大地震=恐慌=円環=地下鉄、という図式がみえてくる。そしてこの地下鉄というのが加えて連想させるのが、阪神淡路と同年の95年に起きた「地下鉄サリン事件」。この地下鉄サリン事件は地震と同様に大きな物語と小さな物語の甘やかな関係の崩壊を国民に知らしめた大事件である。

2011-09-09 07:03:11
えりそ @erisogai

ピンドラの公式サイトの情報によると、主役の双子は現在16歳。

2011-09-09 07:07:21
えりそ @erisogai

今回の9話のテレビが映るシーンでアナログ放送終了(2011年のテロップ)表記があったので、引き算すると二人が誕生したのは1995年、荻野目苹果の年齢は示されていないけれど、おそらく同年齢と仮定したうえで彼女の誕生日は3月20日、地下鉄サリン事件の起きた日である。

2011-09-09 07:07:45
えりそ @erisogai

ピンドラの作品上、荻野目苹果の「誕生日=桃果の命日=カレーの日)はひじょうに重要な事項であり、現時点ではなんとも予想できないので考察しきれないけれども、作中の「95」のピクトグラムと合わせて考えると、これがどうやら無関係ではなさそうなことが感じられる。

2011-09-09 07:10:33
えりそ @erisogai

ちなみに9話で返却口の上に掲げてあった図書の返却期日(つまり、『かえるくん、東京を救う』の返却期日)は「3月20」まで、となっている。貸し出し日の11月15日は、都営地下鉄1号線が開通した日らしい。

2011-09-09 07:13:16
えりそ @erisogai

考察はピンドラに戻ります。あと、『かえるくん、東京を救う』の表記が、ピンドラのアニメ内では『カエル君~を救う』に変化していたのは、おそらく意図的なものと思われる。

2011-09-09 07:16:24
えりそ @erisogai

陽毬が司書に訊ねた時、司書は「そんな本はない」と答える=村上春樹『かえるくん、東京を救う』の書かれなかった世界=片桐とかえるくんが東京を円環から救わなかった世界=ピンドラの世界。ないと言われた陽毬は自分で探しますと言って、書架をみてまわる。その際現実世界にある書名がちらほらする。

2011-09-09 07:18:27
えりそ @erisogai

たとえば市川房枝の本や、あと「む」段では村上龍から村上春樹の実際の書籍の署名が並んでいた。これによりピンドラ世界が『かえるくん、東京を救う』の書かれなかった世界である、という説がより真実味を増す。

2011-09-09 07:20:15
えりそ @erisogai

3ちゃんは書架のあいだを縫って、数字パズルの不思議な扉の向こうへと陽毬を誘う。開いたその先は巨大な図書館分室「そらのあな」。『かえるくん、東京を救う』を探す陽毬は「カ」の列へと足を向ける。そこには、司書の男・眞悧が居た。「カ」は、「キオク」の列でもあったのだ。

2011-09-09 07:25:51
えりそ @erisogai

ここからのストーリーは、村上春樹の「ぼく」と「羊男」と「女の子」をめぐる『図書館奇譚』あるいは『ふしぎな図書館』を彷彿とさせる。果てしなく続く巨大な書架には、あらゆる『カエル君~を救う』の本が陳列されていた。司書の眞悧は陽毬の望む本なら何でも探してあげようと微笑む。

2011-09-09 07:28:47
えりそ @erisogai

眞悧は陽毬のある記憶の本(例『カエル君Hトリプルを救う』)をひとつひとつ取りあげ、優しい声で読みあげてゆく。そうして陽毬のなかで眠っていた記憶が無意識の世界のなかでめくられてゆく。本とはあらゆる「記憶」の集積であり「パッチワーク」であり、始まりと終わりの無いもの、円環であるもの。

2011-09-09 07:33:22
えりそ @erisogai

ここでの映像演出は、少女革命ウテナにとてもよく似た雰囲気。向かい合う二人を並列にして遠影でとらえるシーンや、ライトの当て方、本の交叉、効果音、ペンギン(≒チュチュ)の挿入のタイミング、などなど。

2011-09-09 07:35:51
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