源氏物語には、失われた読み切りの短編があった。幻のパイロット版「かがやく日の宮」から浮かび上がる「光源氏」の本当の姿とは?

長編の源氏物語とは「別枠」で伝わっていた、「かがやく日の宮」(作者は紫式部)は、惜しくも鎌倉時代には散逸してしまいましたが、光源氏と四人の女性との恋愛によって展開する「完結性の高い物語」だったとされます。「光源氏」は何故、光るのか?その光はどの女性が受け止めるのか?日本神話との比較を交え、読み解きました。
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巫俊(ふしゅん) @fushunia

「「かかやく」とは、「光る君」光源氏の栄光を一瞬のものではなく、永続的な、完璧なものにする人物に限られた語であると考えられるのである」「そしてその光がオリジナルよりも増幅・多様化されていること、持続的であることを意味することば」

2022-05-16 02:42:39
巫俊(ふしゅん) @fushunia

ただし、これはこの論文が當麻良子氏の論文から引用してるもので、當麻良子「『源氏物語』の「かかやく」・「「かかやく日の宮」考」(2001年)という論文があるそうです。當麻良子氏は「光る君」(源氏)の光を増幅して反射する「かかやく」女性の存在を想定してました。

2022-05-16 03:14:58
巫俊(ふしゅん) @fushunia

それに対し、園明美氏は「光る」にも反射する表現が多いこと、「かかやく日(妃)の宮」と呼ばれた藤壺は桐壺帝の寵妃にあたり、藤壺と並んで「光る君」と人々から呼ばれた源氏は桐壺帝の皇子だと指摘してました。つまり、桐壺帝(の帝徳)が「太陽」のように光を出してるのだと指摘されてます。

2022-05-16 03:22:49
雨音村雲@藤浪永理嘉(´ 。•ω•。) @amane_murakumo

@fushunia 思えば「桐壺帝」って言う名前が一種「おかしい」んですよね ある意味「不名誉な名前」 「桐壺」は帝に愛され光源氏を産む女御の名前でもあるんですけど桐壺こと淑景舎は清涼殿からは一番遠くて、 しかも東北鬼門で他の壺を通らないと出入りできない pic.twitter.com/XNNwXiWFqd

2022-05-16 03:38:34
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雨音村雲@藤浪永理嘉(´ 。•ω•。) @amane_murakumo

@fushunia 史実でもほぼほぼ有力女官の置かれなかった所です。 そこの更衣(嬪や女御より「格下」)言わばシンデレラ的な立場の女性を偏愛して「光る君」が生まれ、 光る君が亡くした母(桐壺更衣)の代わりの義母、兼永遠の理想の女性として「藤壺」こと「輝く日の宮」がいる訳ですが、 「藤壺」は逆に一番近い。 pic.twitter.com/XIQBtLZitN

2022-05-16 03:44:32
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雨音村雲@藤浪永理嘉(´ 。•ω•。) @amane_murakumo

@fushunia (*´ω`*)んで藤壺との間の子供は「後の帝」と。

2022-05-16 03:51:26
巫俊(ふしゅん) @fushunia

「違和感」を感じた原因が分かりました。『源氏物語』には「幻のパイロット版」が存在し、現在の長編『源氏物語』の冒頭「桐壺」の巻は成立が一番新しいので、「桐壺帝」などの追加された名前には不自然さが残り、本来の光源氏の恋人は入内して「藤壺」になってしまう幼な友達だったとのことです。 twitter.com/amane_murakumo…

2022-05-16 04:46:41

【訂正】

「桐壺帝」は寛文十四年(1637年)の『源氏物語系図』に出てくるものですが、『源氏物語』の本文には「帝」などとあるだけでした。

室町時代初期とされる、源氏の物語のあらましを短くまとめた作品『源氏小鏡』に、あたかも『源氏物語』に書かれてる言葉かのように「桐壺の御門(みかど)」とありまして、

それに続く『栄鑑抄』(伊達政宗の命で編纂)になると、桐壺の更衣をとくに寵愛したことから、「きりつぼの天皇」と申せりと記述されています。

そのため、不自然だと見られる点は、内裏の部屋の間取りの配置からしても、「藤壺」が「桐壺」より先に構想されてたと見られるのに、『源氏物語』の長編化に伴い、「桐壺」の巻が巻首に追加されたことにあります。

その結果、天皇の名前も中世には「きりつぼの天皇」だとされ、光源氏の物語のプロトタイプにあたる、「藤壺」がヒロインの短編「かがやく日の宮」は、散逸してしまったとのことでした。

巫俊(ふしゅん) @fushunia

こちらの論文「『輝く日の宮』の巻考—『源氏物語』欠巻復元の可能性—」(上田博明、2013年)によると、藤原定家がその存在を示唆しながらも、存在が確認され無かった「輝く日の宮」の巻は、紫式部が最初に書いた短編の『源氏物語』にあたり、幻のパイロット版だったとのこと trijapan.com/data/upload/(1…

2022-05-16 04:54:11
巫俊(ふしゅん) @fushunia

光源氏と四人の女性との恋愛により展開する完結性の高い「読み切り」作品だったとのことで、その内容が長編化した『源氏物語』に引き継がれながらも、『輝く日の宮』の巻は短編作品として「別枠」で流布してたので、鎌倉時代の藤原定家の頃には散逸していたとあります。

2022-05-16 04:59:39
巫俊(ふしゅん) @fushunia

光源氏の「永遠の恋人」の藤壺の光源氏との最初の逢瀬の場面は、何故か『源氏物語』では飛ばされており、欠巻したと想定する割りには一つの巻に重要なエピソードが詰め込まれ過ぎてて、しかも何故散逸してしまったのかは謎でした。

2022-05-16 05:01:59
巫俊(ふしゅん) @fushunia

それに光源氏が「光る君」と呼ばれ、藤壺が「輝く日の宮」と人々により並んで称される「桐壺」巻終わり近くの場面は、光源氏の父親の桐壺帝が「太陽」として放った帝徳の光を息子の源氏と寵妃の藤壺が受け取って反射したものとされてましたが(園明美氏の論文より)、やはり不自然でした。

2022-05-16 05:12:27
巫俊(ふしゅん) @fushunia

園明美「「かかやくひの宮」という呼称」(『日本文学誌要』、2010年)はグーグル検索してPDFをダウンロードできる論文ですが、文献史料を正確に読み解いてるのに何故か不自然だと感じる結論が示されてて、

2022-05-16 05:17:02
巫俊(ふしゅん) @fushunia

當麻良子「『源氏物語』の「かかやく」・「「かかやく日の宮」考」(2001年)で説明されてる、「光る君源氏の「ひかり」を藤壺が受け止めて、より美しく持続的な輝きとして増幅して反射させる」の方が神話学的に正しい解釈のように感じました。考古学的に明らかにされてる古代の鏡の使用法とも一致します

2022-05-16 05:22:39
巫俊(ふしゅん) @fushunia

「かがやくとは、「光る君」光源氏の栄光を一瞬のものではなく、永続的な、完璧なものにする人物に限られた語」との説明が興味深くて、それ故に藤壺は「輝く日(妃)の宮」と呼ばれた訳です。藤壺は源氏に生き写しの男子(冷泉帝)を産んでますが、それは弥生時代から引き継がれた鏡による出産の神話でした

2022-05-16 05:33:01
ベニッコ @Benicco_09

連載する前に読み切りがあるとか、まるでジャンプじゃないですか…! twitter.com/fushunia/statu…

2022-05-16 07:40:13
アシッド @Acid_66

@fushunia 現代語訳もありますし、マンガもありますし 私は常々、どうして藤壺が「輝く日の宮」とされていたのか、不思議で仕方が無かったのです。光源氏が「光る君」とされているのに。

2022-09-11 16:20:44
巫俊(ふしゅん) @fushunia

世界各地の神話の「分岐」を明らかにする比較神話学の方法で、青銅器時代に最初に「銅鏡」が生まれた頃の草原地帯の神話をずっと追いかけてきましたが、まさか平安時代の『源氏物語』に探してたものが見つかるとは思ってもいませんでした。驚きです✨ twitter.com/fushunia/statu…

2022-05-16 05:41:46
巫俊(ふしゅん) @fushunia

紫式部が最初に書いた『源氏物語』の短編が『輝く日の宮』だとすると、「光る」とか「輝く」という言葉にどれくらいの意味を込めてたのかが気になります。

2022-05-17 13:37:32
巫俊(ふしゅん) @fushunia

論文を調べたところ、『源氏物語』成立以前から、都の女性たちが何かを書いて、それを書き写す暮らしを続けてて、その中で特別完成度が高くなったものだけが現在に伝わってるとのことです。だから『源氏物語』は紫式部の完全オリジナルという訳では無くて、既に伝わってたものに刺激されて生まれたと

2022-09-13 12:48:27
巫俊(ふしゅん) @fushunia

それは現代でも同じというか、何かに刺激されてその人オリジナルの作品が生まれてくる訳だから、創作についてはどちらの考え方も正しいんだけど、天照大神やスサノオが鏡に写った父親の光の反射で生まれてきたとする『日本書紀』の記述と、光を放ったり受けとめる光源氏の話は明らかに通じ合ってました

2022-09-13 12:54:20
巫俊(ふしゅん) @fushunia

この視点が、『源氏物語』の研究の中で解釈できるかどうか調べたところ、確かにそうした「光」の受け渡しについての論文がありまして、光源氏や女性たちの「光」をめぐる物語が『源氏物語』の出発点というか、初期プロットだったようです。twitter.com/fushunia/statu…

2022-09-13 13:14:29
巫俊(ふしゅん) @fushunia

『春秋左氏伝』の研究だけでは、光の神話の話はさっぱり分からないはずだけど、印欧語族の神話と日本神話の関係の論文を読み続けてて、歴史学的にも青銅器などの伝播を通じてユーラシア草原地帯の文化が直接日本列島に伝わったと確認したので、人間が光から生まれてきたとする神話の存在に気付きました

2022-09-13 13:11:00
巫俊(ふしゅん) @fushunia

論文「『輝く日の宮』の巻考—『源氏物語』欠巻復元の可能性—」(上田博明、2013年)、「「かかやくひの宮」という呼称」(園明美、2010年)などを参照したのですが、この議論から『源氏物語』が、日本神話に出てくる、生命=光だとする発想から生まれてることに気付きました。twitter.com/fushunia/statu…

2022-09-13 13:22:23
巫俊(ふしゅん) @fushunia

論文読んでて思うのは、『源氏物語』の研究も『春秋左氏伝』の研究に似てて、どうやって成り立ったかの研究がされてるので、「こういうこと書いてる論文無いかな?」と思って調べたら、それらしいのが見つかりました。

2022-09-13 13:02:31