源氏物語には、失われた読み切りの短編があった。幻のパイロット版「かがやく日の宮」から浮かび上がる「光源氏」の本当の姿とは?

長編の源氏物語とは「別枠」で伝わっていた、「かがやく日の宮」(作者は紫式部)は、惜しくも鎌倉時代には散逸してしまいましたが、光源氏と四人の女性との恋愛によって展開する「完結性の高い物語」だったとされます。「光源氏」は何故、光るのか?その光はどの女性が受け止めるのか?日本神話との比較を交え、読み解きました。
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こちらの興味深いツイートが、調べ始める最初のきっかけでした。

砂崎良【SazakiRyo】 @SazakiRyo

アフリカ某国の女性に「日本人はどうして白人の真似メイクをするの?きれいな黄色い肌を誇るべきなのに」と言われたとき、 「白人に出会う遥か以前に書かれた #源氏物語 でも色白が美とされている」と答えることができたので、 #古典は本当に必要なのか と問われたら 「私には役だった」と答えよう。

2019-02-08 09:11:14
なぎ @kakitutei

@SazakiRyo すみません。お尋ねします。 『源氏物語』のどの帖に色白について書かれているのか教えていただけますと嬉しいです。

2019-02-09 17:19:34
砂崎良【SazakiRyo】 @SazakiRyo

@kakitutei 「御法」巻の、夕霧が垣間見た紫上「御色はいと白く光るやう」ですね。やや特殊事例ですが、枕草子「上の御局の」でも定子中宮の「御額」を「いみじう白う」としているので、白さを美と捉えていると解釈しました。須磨で光源氏の手が「黒き数珠に映え」るのも、白と明記してはいませんが、近いかと。

2019-02-09 17:44:22
なぎ @kakitutei

@SazakiRyo ご返答くださいましてありがとうございます。 <若紫>巻の紫の君の祖母の描写で「四十余ばかりにて、いと白うあてに」とありますよね。 <柏木>巻の病床にある柏木の描写「いよいよ白うあてなるさま」や赤ちゃんの薫の描写「いと白ううつくしう」も思い出されます。

2019-02-09 18:24:06
なぎ @kakitutei

@SazakiRyo (続きです) 紫の君の祖母が40代であり色白く美しい 病床にあって柏木や紫の君が色白く美しい 赤ちゃんの薫が白くて美しい といった若々しさの象徴や常ならざる状態において白さが強調されているようにも思えるのです。 自分でも考えてみますね。ありがとうございました!

2019-02-09 18:26:20
砂崎良【SazakiRyo】 @SazakiRyo

@kakitutei いえいえ、いつも楽しいツイートを有難うございます(^^) 源氏物語内には二通りの美があると常々考えておりまして、一つは雲居雁や中君のような「まろまろ」感ある健康美、こちらは「匂わした」ような肌。もう一つは病や物思いで痩せた美で、「あて」と評され白さが強調される気がしております。

2019-02-09 20:32:58
なぎ @kakitutei

@SazakiRyo こちらこそいつもありがとうございます😊 グラマー体型に近い「つぶつぶ」という表現がありますよね。 痩せて気品が際立つ「あて」も素敵です。

2019-02-09 20:37:40
砂崎良【SazakiRyo】 @SazakiRyo

@kakitutei まだ深く考察してはいないのですが。飢饉で人が死ぬこともある時代だったからこそ「まろに肥えた」=「飽食できる裕福さ」→美、であったのかと。 その心情が昂進して「飽食当たり前で食にもはや執着しない」=「痩せ」→あて(超上流貴族の証)とされたのかなと。仏教的価値観も影響していそうです。

2019-02-10 07:48:35
なぎ @kakitutei

@SazakiRyo ありがとうございます。 『源氏物語』において食べ物を食べている描写は少なく、食べていてもそれは身分が低い者だったりしますものね。 私も砂崎さんのご考察を参考に当時の美に関する価値観や仏教観について考えてみようと思います。 ありがとうございました!

2019-02-10 13:43:45
はるぱうす @halbaus

「ヒョウタン文化史」の中で「葵と夕顔」の関係についての指摘があったのでメモ。源氏物語にも「葵の上(正妻)と夕顔(愛人)」という形で対比が出てくるが、葵は昼=陽で、夕顔(ひょうたん)は夜=陰を表すのだそうだ。

2022-05-15 11:53:46
はるぱうす @halbaus

平安時代には旧暦七夕の日に葵の力士と夕顔の力士が相撲を取る神事があったと記録されており、その年の気候によってどちらを勝たせるかは決まっていたという。日照りなら雨を降らせるために夕顔の力士を、日照不足ななら晴天を願って葵の力士を、というふうに。

2022-05-15 11:53:47
はるぱうす @halbaus

お相撲は神前格闘であって、古代には一種の儀礼(呪術)だったわけです。相撲に限らず、お祭りなどにある「ごっこ」という本質を理解せずに表面だけみていると、その危険性とかばかりクローズアップされて野蛮なものと退けられてしまう…のは昨今よくある事例。

2022-05-15 11:53:47
巫俊(ふしゅん) @fushunia

正妻の「葵の上」は病に倒れ、白き御衣を着て発熱してるその顔がとくに美しかったとされ、愛人の「夕顔」も、白い花を見て立ち寄った光源氏に粗末な家の中から「光そへたる夕顔の花」と歌を差し出してくるから、『源氏物語』では白い光を返してくる「病や物思いで痩せた」女性に特別な意味があったはず twitter.com/halbaus/status…

2022-05-15 15:24:56
巫俊(ふしゅん) @fushunia

しかも光源氏の正妻「葵の上」は妊娠中で、出産直後に死んでしまうのです。平安時代の女性たちはこうした表現の意味が分かるから楽しく読んでたようですが、『源氏物語』の病や物思いで痩せた白い美(痩せて気品が際立つ「あて」)についてはこちらのTLを参考にさせて頂きましたtwitter.com/kakitutei/stat…

2022-05-15 16:19:24
巫俊(ふしゅん) @fushunia

これ、谷川健一先生の「沖縄ではシラは産とか誕生を意味する語である。産室をシラヤー、産婦をシラビトと云う」「産室のいろりに燃える火がシラビである」に直接つながってて、比較神話学では人間は「光そのもの」だとされ、燃えさかる火=女性の中から生まれてくる存在でしたtwitter.com/fushunia/statu… pic.twitter.com/tyg8BOqZRB

2022-05-15 16:39:28
巫俊(ふしゅん) @fushunia

谷川健一『賤民の異神と芸能』(2009年出版) 八百比丘尼=白比丘尼 白は若返り、不老長寿の意味 「沖縄ではシラは産とか誕生を意味する語である。産室をシラヤー、産婦をシラビトと云う。奄美でおこなわれる成巫式は、新しく巫女になる女性が、泉の水を浴びる儀礼であるが、これを白水浴と呼んでいる」 twitter.com/fushunia/statu…

2021-11-04 13:11:11
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巫俊(ふしゅん) @fushunia

「白き御衣を着て発熱してるその顔がとくに美しかった」って尋常な表現では無いのですが、『源氏物語』は「白く光る女性たち」が次々と死んでいく話で、幼くして母を失い、祖母も失った源氏が、「空洞な器」のようになって愛した女性たちの死を受け止めていく、空虚な「光る君」が生命を吸い寄せていく

2022-05-15 18:35:32
巫俊(ふしゅん) @fushunia

『源氏物語』はこうしたギリシア神話の「光」(火)表現とも比較が可能なはずで、光源氏にも「老い」を意識する表現や、若い女性を求めて何もかも失敗し、更に女性たちを失ってく場面がありました。 twitter.com/fushunia/statu…

2022-05-15 19:06:29
巫俊(ふしゅん) @fushunia

四世紀のアレクサンドリアの厭世詩人パラダスのギリシア語の詩より 「女、それは火の代償として蒙ることになったゼウスの怒り。火と引き換えに与えられた、忌まわしい贈り物だ。男を心労で燃やし、弱らせて、若い男も、たちまち老いさせてしまう。」(『パラテイン詩華集』) twitter.com/fushunia/statu…

2022-03-27 09:56:48
巫俊(ふしゅん) @fushunia

新刊の『鏡の古墳時代』や『蛇神をめぐる伝承: 古代人の心を読む』によると、男性は若い頃に入手した鏡を個人的な性格のものとして自分の墓に入れてて、風土記や万葉集には、別れた男性の姿が鏡面に見えると信じられた「形見」として、女性に託される鏡が出てきます。 twitter.com/fushunia/statu…

2022-05-15 19:28:45
巫俊(ふしゅん) @fushunia

古代の「鏡」もまた、生命の再生を意味してたという視点が興味深くて、記紀を見てると、実際父親にあたる神が「鏡」で自分の顔を見ることでスサノオなどの神が生まれてきたと書かれてる訳ですから、鏡の中に「光」=生命を保存したり複写したり、光を放てる=「生命が生まれる」と考えられてました。

2022-04-16 04:32:37
巫俊(ふしゅん) @fushunia

『源氏物語』は長く日本列島で受け継がれてきた「光」=人間で、何らかの形で再生を繰り返すという思想が、紫式部という女性の生活を通じて再解釈を施されながら反映されてた訳です。だから記紀や風土記、万葉集、そしてユーラシア大陸の印欧語族の神話などと比較が可能でしたtwitter.com/fushunia/statu…

2022-05-15 19:33:39
巫俊(ふしゅん) @fushunia

さらに、さらに、なんですが、さっきから話してる『肥前国風土記』の弟日姫子(おとひひめこ)の話には、「川の中に沈んだ鏡」が出てきて、この「鏡」が性交によって「子ども=光」が生まれることを象徴してる場面になってました。これは大変な驚きです。これによって鏡の謎が w.wiki/4yD5

2022-03-21 04:59:42
巫俊(ふしゅん) @fushunia

世界は広いから、知らないだけで誰かしらしてるはずだとは思うんでけど、印欧語族の神話と『源氏物語』の比較としか、誰かしてる人はいるのでしょうか?「光る君」とか、間違いなく「水中の火」神話に出てくる女性の身体の中で再生を繰り返す太陽そのものに由来してますよね。

2022-05-15 22:17:54
巫俊(ふしゅん) @fushunia

光源氏は、天皇になるべき人相の持ち主として生まれてきたが、即位すると世が乱れるので即位することは無く、それでも後で「太上天皇になずらふ御位」に就いたとありますし。

2022-05-15 22:19:58
巫俊(ふしゅん) @fushunia

とくに、古代神話で人間そのものだと考えられた「光」という概念に興味があるので、『源氏物語』に出てくる主要な男性と女性たちが「光を放ったり、増幅させて反射してる」と示唆する研究があるのには驚きました。

2022-05-16 02:14:37
巫俊(ふしゅん) @fushunia

見たかったものが、これまで避けてた『源氏物語』の中にこんなにも存在してることに驚いてます。私が興味を持ってる「青銅器時代の神話」は、神話の分岐関係や集団の移動、文化の伝播の歴史を通じて、おぼろ気に再構築できるものだったので、記紀の直後の時代の『源氏物語』にそれがあるとは驚きです。

2022-05-16 02:19:16
巫俊(ふしゅん) @fushunia

あっあああああああ…見つけてしまった。園明美「「かかやくひの宮」という呼称」(『日本文学誌要』、2010年) 「『源氏物語』の「かかやく」人物とは「光る君」の「ひかり」を受け止め、より美しく持続的な「かかやき」として返しうる存在であることを意味しているのではないか」

2022-05-16 02:39:15
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